初任務
テナントビルの3階の部屋に、シルフィと警官隊が慎重に近づいた。
「こちらシルフィ・リリィ、配置についたわ」
シルフィがインカムで通信する。
「シャドウ・フォックス、裏口、配置完了!」
「翡翠蘭と氷雪花、準備完了」
「よし、作戦開始!シルフィ!」
高橋が無線で命令する。
「さあ、風の妖精さん、出番ですよ〜。警察の皆さん、少し離れてね〜」
シルフィが入口の扉の前で深呼吸をする。
「フゥーーー・・・」
掌を口元に添え、ふぅーと息を吹きかける。
すると、吐息が烈風へと変わり、入口の扉がひしゃげながら部屋の奥へと吹き飛んでいく。
「ぐあ!」
突然飛んできた鉄の扉を受けて、三人のヴィランが血を流して倒れる。
「クソ!ヒーローか!?」
残りの三人がハンドガンを取り出して、シルフィに狙いを定める。
「無駄なことを・・・」
シルフィは両掌を、ゆっくりと円を描くように動かす。
バン!バン!バン!
発射された銃弾が、シルフィの前で軌道がそれて、壁や床に当たる。
「あ、アイツは、まさか!シルフィ・リリィ!」
ヴィランの一人がそう叫ぶと、他のメンバーも震え上がる。
三人のうち、二人は裏口へと逃げ出し、一人はベランダへと向かった。
後から来た警官隊が、倒れたヴィランを確保する。
「こちらシルフィ・リリィ。三名を確保。キツネさん、そっちに二名行ったわ。残る一名はベランダから逃走。翡翠蘭、よろしく〜」
シルフィがインカムで連絡する。
裏口へ逃げてきた二人が、扉を開ける。
「な!?」
ヴィランの一人が驚いて声を上げた瞬間、シャドウ・フォックスの掌底が、ヴィランの顎を捉えた。
ヴィランが力なく倒れると、もう一人のヴィランは慌てて室内へと引き返す。
「ぐあ!」
その瞬間、シャドウ・フォックスの放ったクナイが、逃走するヴィランの脚に突き刺さった。
「こちらシャドウ・フォックス、二名確保」
ベランダに向かったヴィランが周囲を見回すと、ベランダのすぐ下には、大きな木が枝を広げていた。
手すりをまたぐと、意を決して真下にある木に向かって飛び降りた。
ガサ!ガサササッ!
「こちら翡翠蘭!一名がベランダから木に飛び降りた!」
「氷雪花!油断してはダメなりよ!」
そう言って、翡翠蘭は木に向かって走り出す。
「はい!」
雪乃は緊張した表情で返事をする。
「そこまでだ!そのまま動くな!」
翡翠蘭は、木から落ちてきた女性に向かって言った。
女性は肩を押さえながら、ヨロヨロと立ち上がった。
「私、ヴィランじゃありません!あの部屋をたまたま訪ねたら、捕まったんです!」
女性は普通の私服を着ていて、年齢は10代くらいに見える。
「そうなりか?でも、一緒に来てもらうなりよ」
翡翠蘭と雪乃が警戒しながら、数歩手前まで近づいた。
「はい!わかりました」
女性は両手を頭の後ろに回そうとした。
「待つなり!手は見えるようにして、上に上げるなり!」
「・・・はい」
そう言った女性の肩の動きに、雪乃は違和感を覚えた。
ーーー何か取り出そうとしてる!?
女性は背中へと手を伸ばし、素早く何かを取り出した。
「蘭、翡翠蘭!危ない!」
雪乃は瞬時に間合いを詰めると、鞘ごと刀を振り上げた。
鞘が女性の右手に当たり、ハンドガンを落とす。
「つっ!クソ!」
女性がそう言った次の瞬間、翡翠蘭が足払いで転倒させた。
「うわ!」
女性が起き上がろうとすると、雪乃は鞘に収めたままの刀を喉元に突きつけた。
「そこまでです」
「ちっ!見た目を女に変えても、女ヒーローには無駄だったな」
女性の顔が、いつの間にか中年男性の顔に変わっていた。
「お前が『エイト』なりか?」
翡翠蘭が中年男に訊ねる。
「ああ、そうだ」
「こちら翡翠蘭、『エイト』を確保」
「ふぅー」
雪乃は安堵の息を吐いた。
「氷雪花、お疲れ様なり」
翡翠蘭は満面の笑みで言った。




