現場にて
仮設本部には数人のヒーローと高橋が集まっている。
その中には、硬い表情で周囲を見回す雪乃の姿もあった。
「雪乃、そんなに緊張することないなりよ。今日は現場の雰囲気を感じるだけでいいなり」
翡翠蘭が雪乃の肩に手を置く。
「はい!わかってるんだけど、緊張はします」
雪乃は強張った表情で言った。
「雪乃、お前は翡翠蘭から離れるなよ」
高橋が雪乃の気持ちを察して声をかける。
「はい!足を引っ張らないよう、頑張ります!」
「その刀、似合ってるなり」
翡翠蘭が雪乃の腰にある日本刀を見て言った。
「丸山師範がくれました。『木洩陽』と言うそうです」
「多分その刀は抜くことないなりよ」
「どうしてですか?」
「シルフィ・リリィとシャドウ・フォックスがいるなり、ヴィランに同情するなりよ」
「シルフィ・リリィってトップ5の!?」
シルフィ・リリィは魔法少女を思わせる、青いフリフリの衣装に身を包んでいる。ショートボブの可愛い女性で、年若い印象を受ける。
見た目からはとてもトップランカーとは思えない。
シャドウ・フォックスは黒装束で忍者のような格好をしていて、鼻と口をフェイスマスクで隠している。物静かだが、どことなく凄みのある雰囲気が感じ取れる。
「今から作戦を説明する」
高橋がスクリーンに映し出された、地図と図面を見せながら説明を始める。
「先に言っておくが、今回の任務は『エイト』と呼ばれるヴィランを確保することだ。ヤツは八人の顔を記憶して成り代わることができる」
「そのビルの三階に、その『エイト』ってヤツがいるの?」
シルフィは自分の髪の毛をイジりながら言った。
「そうだ、今、ヤツは『太陽の導き手』と接触している。どうやら狙いは猿渡議員のようだ」
高橋はヒーロー達の顔を見ながら言った。
「猿渡議員って?」
雪乃は小さい声で翡翠蘭に訊ねた。
「ヴィランを徹底排除しようとする、強硬派の参議院議員なりよ。我も猿渡議員の護衛でケガをしたなりよ」
「正面からシルフィ・リリィと警官隊が突入する。非常階段への裏口はシャドウ・フォックスが固めておく。そして、取り逃した場合は翡翠蘭と雪乃で対応してもらう」
高橋がスクリーンにポインターを当てながら説明した。
「ところで・・・そこの雪乃ちゃん、だっけ?仮でもいいからヒーロー名は無いの?作戦中に本名で呼ぶのも変でしょう」
シルフィはリップクリームを取り出すと、唇に塗った。
「あ、そうですよね、えっと・・・氷雪、氷雪刃・・・とか?」
雪乃は思いつくままに答えた。
「う〜ん、刃って、なんかトゲトゲしてて雪乃っぽくないなりね・・・氷雪花とか、どうなりか?花だと我ともお揃いなりよ」
翡翠蘭が笑みを浮かべながら言った。
「あ、ありがとうございます!では氷雪花(仮)でお願いいたします」
雪乃がシルフィ達に頭を下げた。
「いい名前じゃない、氷雪花、よろしく頼むわね。ところで・・・敵の数と武装は?」
シルフィはミントのタブレットを取り出すと、口に数粒放り込んだ。
「敵は6人、武装は恐らくハンドガン」
シャドウ・フォックスがすかさず説明した。
「ハンドガンで武装した6人・・・私の敵じゃないわね」
シルフィがニヤリと笑った。
「え?」
雪乃はシルフィの自信に驚いた。
ーーーピストル持った人が6人いても楽勝なの!?




