約束
「岡林さん、そのミートドリアだけで足りるの?」
雪乃が梨々花に運ばれてきた料理を見て言った。
「えっと、あ、今日はね・・・」
梨々花が口ごもる。
「私のピザ、食べる?」
雪乃がピザの乗った皿を、梨々花に差し出す。
「そ、そんな、悪いよ!」
梨々花が手を左右に振って遠慮する。
「私のポテトも来るから、皆で食べよう!」
亜希奈が笑顔で言った。
「アッキーがポテトを二皿も頼んだから」
架純が皆におしぼりを配る。
「皆・・・あ、ありがとう!」
梨々花がピザを一切れ、自分の取り皿に移す。
「岡林さん、お小遣いもらえたんだね」
亜希奈がオレンジジュースを、ストローで吸い込む。
「うん、友達とご飯行くって言ったら、1000円も!」
「そっか!」
「猫型ロボットが来た」
架純が配膳ロボットを見て、小さく呟いた。
「なになに?何の話〜」
珠希がドリンクバーから飲み物を汲んできた。
「珠希、悩みすぎだよ。うわ、その色、なに入れてきたの?」
雪乃は珠希のグラスの中身の色に目を奪われた。
「フッフッフッ〜、これはね、コーラとオレンジジュース、それにメロンソーダが入っている珠希スペシャルドリンクだ!メロンソーダは外せない」
珠希がドヤ顔で言った。
「そこは烏龍茶も混ぜるべき」
架純が配膳ロボットの料理に手を伸ばす。
梨々花も架純を手伝い、料理をテーブルに移す。
「で?氷川さんのヤバそうな仕事の話、聞かせてよ」
亜希奈がポテトをつまみながら言った。
「ヤバそうな仕事って・・・酷いなぁ〜」
雪乃は運ばれてきたハンバーグを、自分の前に持ってくる。
「堅気の仕事じゃないよね〜」
珠希はそう言うと、ドリンクを一口飲んで微妙な顔をする。
「はぐらかすのは無し」
架純が次にやってきた配膳ロボットから、料理を取り出す。
「ちゃんと、ここだけの話にするよ」
梨々花がミートドリアを食べながら言った。
「だよね、皆には隠し事はできないよね」
雪乃はハンバーグを一口大に切っていく。
「あのね・・・」
雪乃は皆が見つめる中、フォークとナイフを置いて話を続けた。
「私、事故で休んでたって言ってたけど、ホントは違うの」
「そうなの?」
亜希奈が運ばれてきたオムライスにスプーンを入れる。
「ヴィランに襲われて・・・お母さんが殺されたの。その時、私もケガをして入院してたの」
「そんな・・・ひどい!」
梨々花はスプーンを落とす。
「ごめんね、なにも知らなくて」
亜希奈が神妙な表情で謝った。
「体育の時に見えたんだけど、雪乃の背中の傷は、その時の?」
珠希が真剣な顔で訊ねた。
「見られてたんだ、珠希は目ざといなぁ〜」
雪乃は照れ笑いをする。
「あのお弁当、親戚が作ったんじゃないよね?」
架純がパスタをフォークで巻きながら言った。
「そうなの・・・私ね、ヒーローになるの」
雪乃が皆の顔を真っすぐ見ながら言った。
「やっぱり・・・」
架純はパスタを口に入れた。
「ブッ!ヒーロー!?」
珠希がスペシャルドリンクを吹き出しそうになる。
「え!?そんな危ない仕事に!?」
梨々花が新しいスプーンを落としそうになる。
「アハハハ!ごめん、いやぁ~、氷川さん凄いよ!」
亜希奈は手を叩いて笑った。
「まあ、全国2位の強さだからね、雪乃なら大丈夫か」
珠希はズルズルと音をたててパスタを食べる。
「大丈夫って、飯島さん!それは楽観的過ぎない?」
梨々花の持つスプーンが震えている。
「氷川さん、剣道部辞めたのに、痣があったり、トレーニングしてるみたいだったから、ひょっとしてって思ってた。それに、目つきが日毎に鋭くなってる」
架純がカツカレーを口に入れた。
「いやぁ~!カスミンの観察力は相変わらずスゲーな!」
亜希奈が架純の肩を抱き寄せる。
「うわ!カレーが飛んだ!アッキー!!」
架純が亜希奈を睨みつける。
「アハハ!ごめんごめん!そんなに怒るなよぉ~」
「そういえば、聞いたよ、岡林さんの模試で志望してる国公立、全部A判定なんだって?」
雪乃がハンバーグを美味しそうに食べながら言った。
「いや、その、そうだけど、今は氷川さんのヒーローの話で・・・」
梨々花が照れながら言った。
「私はいいと思うよ!氷川さんなら、きっとカッコいいヒーローになれるよ!なあ、カスミン!」
亜希奈が架純の肩を揺する。
「だぁー!やめろぉ!カレーがぁ!」
「氷川さんなら大丈夫!」
架純が亜希奈に苛つきながら言った。
「雪乃、これだけは約束して欲しい。自分を大切にして。死んだら許さないから!」
珠希が雪乃にあまり見せない強張った表情をする。
「珠希・・・」
雪乃が珠希に気後れする。
ーーー私がメロンパン食べちゃった時の顔・・・
「うん、わかった!約束する。だから、定期的にこうして集まろうね!」
雪乃が大きく口を開けて、ハンバーグをほお張る。
「もちろん!そうよね、アッキー」
架純が亜希奈の肩に手を回す。
「ああ!いい土産話、聞かせてよね」
亜希奈が微笑む。
「ホントですよ!くれぐれも無茶はダメですよ!」
梨々花が軽くテーブルを叩くと、二つ目のスプーンを落とす。
「そうそう!私も報告があるんだ」
亜希奈がニヤリと笑う。
「彼氏と別れました〜」
「ええ〜!?」
全員が声を揃えて言った。




