一足早い卒業
「えー、という訳で、氷川さん、挨拶を」
雪乃の担任の先生が、教室の前に呼び出す。
「えっと、皆さん、先程山辻先生がおっしゃったように、就職先の都合で、卒業を待たずにこの学校を離れることになりました。卒業式には出席しますので、よろしくお願いします。」
雪乃がクラスメイトに、深々と頭を下げた。
昼休み。
「雪乃〜、なんで黙ってたの?」
珠希が眉間にシワをよせながら、お弁当の卵焼きをつまむ。
「ほ、本当だよ。私、友達だと思ってたのに・・・」
梨々花が悲しげな顔をする。
「ランチビュッフェも、今週でおしまいかぁ~」
亜希奈は、おかずを次々と紙皿に入れていく。
「アッキー、皿に盛りすぎ。それより、氷川さん、卒業も待てない仕事ってなに?」
架純がおにぎりを食べながら訊ねた。
「ごめんね、先週末に言われて。その・・・皆は、その私の大事な友達だよ!」
雪乃が顔を赤らめながら言った。
「うん、じゃあ、ファミレスで詳しく聞こうじゃないの。皆、どうよ?」
亜希奈が、机を軽く叩いて提案する。
「いいねぇ〜!」
珠希が親指を立てる。
「わ、私も!お小遣いもらって、参加します!」
梨々花も慌てながら、話に乗っかる。
「アッキー、ナイスアイデア!」
架純が亜希奈の皿から、おかずを持っていく。
「み、みんな・・・」
雪乃は目頭が熱くなるのを感じた。
亜希奈の提案で、週末に、初めて学校以外で5人が集まることになった。
放課後、いつもの駐車場に行くと、高橋が迎えに来ていた。
「あ、高橋さん」
「雪乃、おかえり。学校はどうだった?」
高橋が後部座席のドアを開ける。
「今日も楽しかったですよ。蘭子さんはどうしたんですか?」
「任務だ」
高橋が運転席に座る。
「え?」
雪乃は胸がもやもやして、言葉を失った。
ーーーそうだ、蘭子さんはヒーローなんだ。
「ちょっと厄介な相手でな、人手が足らず、翡翠蘭には応援に行ってもらった」
高橋が車を発進させる。
「大丈夫ですよね?蘭子さんなら・・・」
雪乃は膝の上で、ぎゅっと手を握った。
「ああ、アイツなら大丈夫だ」
「ですよね」
ーーーそうだ、蘭子さんは強いんだ!




