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ヒーロー

「ちょ、ちょっとぉ!珠希、待って!」

珠希が雪乃の手を引っ張っている。


「いいから、皆に会うだけだよ」


「わかった、わかったから!」

ーーー筋肉痛なのに〜


珠希が雪乃を強引に、剣道場に連れてきた。


「あ!雪乃!」


「雪乃じゃん!」


「氷川先輩!」


練習をしている部員達が雪乃に目を向ける。


「皆、久し振り!」

雪乃は満面の笑みで返す。


「氷川先輩!部室に竹刀と道着、置いてますよ!」

後輩の瀬戸紬が、雪乃に目を輝かせて話す。


「氷川さん、ケガはもういいの?」

部長の柄本菜月がゆっくりと雪乃の側に来る。


「あ!柄本部長、この通り大丈夫です。すみません、顔も出さずに」

雪乃が菜月に頭を下げる。


「大変だったね、皆、心配してたんだよ。お見舞いに行っても、会わせてもらえなかったから」


「ちょっと、事情がありまして、ごめんなさい」


「軽く、手合わせしてくれない?」

菜月が笑顔で言った。


「え!?いや、その」

雪乃が返答に困り、うろたえる。

「きょ、今日は用事があって、その・・・失礼します!」


「あ!待って氷川さん!」


雪乃は道場から逃げ出した。

筋肉痛を忘れ、蘭子の待つ駐車場まで走った。


「ん?どうしたの?」

蘭子が怪訝な顔をする。


「いや、剣道部に拉致されてて」

雪乃が息を切らして話す。


「大変ね〜」

「あ、雪乃、そこの喫茶店でパフェ食べようか?」


「食べます!」

雪乃は目を輝かして答えた。


「巨大パフェが売りみたいよ〜」


パフェを堪能した後、二人は車に乗り込んだ。

「さあ、パフェ食べたし、帰ろうか」


駐車場から車が出発して間もなく、蘭子が急ブレーキを踏んだ。

「うわ!蘭子さん、なにが・・・」

雪乃の声にも答えず、蘭子は運転席から飛び出して行った。

「ちょ!蘭子さん!?」


ドン!ガシャーン!


雪乃が車を降りた瞬間、黒い車が電信柱に突っ込んだ。


そして、宙を舞った蘭子が着地する姿が目に入った。


ーーーなに!?なにが起こったの!?

雪乃は警戒しながら、ゆっくりと蘭子に近づこうとする。


「手を上げて、ゆっくりと降りてくるなり!」

蘭子が黒い車に向かって叫んでいる。


ーーー蘭子さん!眼鏡で、パーカーにデニムパンツですよ〜!


蘭子の言葉に、車から怪しい服装の男が3人出てくる。


「言い訳はあるなりか?」

蘭子が戦闘態勢をとって、男達に言った。


「くっ、くそぉ!」

一人の男が、懐からナイフを取り出して、蘭子に襲いかかる。


「ハイヤァ!」

蘭子の上段前蹴りが、襲いかかる男の顎を捉える。


「あが!」

男はうめき声を上げながら、一回転して地面に叩きつけられた。


「ひぃ!」

残る2人が腰を抜かして怯える。


「もう終わりなりか?そこでじっとしてるなりよ」

「雪乃!警察を!」

蘭子が雪乃に指示を出した。


「は、はい!」


雪乃が警察に連絡すると、数分後にパトカーで警官達がやって来た。


「蘭子さん!」

雪乃が蘭子に駆け寄る。


「いやぁ~、この衣装だと、なかなかヒーローだと信じてもらえなかったなりよ〜」

蘭子は照れた様子で言った。


「あれ?」

雪乃は、黒い車の中から、保護されたと見られる少女に目をやった。

「柄本部長?」


「ん?知り合い?」

蘭子が訊ねた。


「女子剣道部の部長です」


「誘拐目的だったらしいよ。親がお金持ちなんだって」


「犯罪が増えてるって、聞きました」

雪乃は眉間にシワを寄せて言った。


保護された菜月がパトカーに乗ろうとした瞬間、雪乃の視線に気づき、雪乃に目を向けた。


「・・・」

雪乃はどんな顔をしていいか、わからなかった。


雪乃を見た菜月の顔は、少し微笑んでいるように見えた。


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