日常
「雪乃、おは・・・雪乃?」
珠希が机に突っ伏した雪乃に声をかける。
「珠希〜おはよ〜」
雪乃が顔を伏せたまま答えた。
「どうしたの?」
珠希が雪乃の肩にそっと手を置いた。
「ぎゃあああ!」
雪乃が飛び起きる。
「な、なに!?」
「ち、ちょっとね、その、今日は・・・触らないで」
雪乃の手足がガクガクと震えている。
「どうしたの?大声出して」
クラスメイトの岡林梨々花が、心配して声をかける。
「さあ?」
珠希が首をかしげる。
「その、自主トレしてて、体が悲鳴を上げてるの」
「病み上がりだからじゃない?」
梨々花が言った。
「お!雪乃、そのうち剣道部に戻って来るってこと?」
珠希が目をキラキラさせながら言った。
「いや、それは〜どうかな・・・」
雪乃が困惑の表情をする。
昼休み。
「おお〜!雪乃、今日も最強弁当だね!」
珠希が、雪乃の弁当の中身を見て目を輝かせる。
「はは、今日も一緒に食べてくれる?」
雪乃が珠希に頼むように言った。
「任せなさ〜い!あら?これなに?手紙?」
弁当箱・・・いや、重箱の下に挟まっている紙に、珠希が気づく。
「何これ、献立表って書いてる」
「え!?そんなものまで?ちょっと・・・」
雪乃が驚きながら、珠希の持つ献立表を引ったくる。
「A5ランク松阪牛のすき焼き風、車海老と季節の野菜の天ぷら、キンキの煮付け、松茸ご飯のおにぎり・・・何これぇ!」
雪乃があまりの驚きに、叫び声を上げる。
ーーー高橋さん!!
「うわ!何これ?料亭のお弁当?」
梨々花が雪乃の声につられてやって来た。
「あ、岡林さんも、食べる?」
雪乃が梨々花に微笑みかける。
「いいの!?やったー!」
梨々花が持参した割り箸で、牛肉を持ち上げる。
「A5松阪牛・・・これが夢に見た、あの松阪牛!」
そう言って、梨々花は口に入れた。
「はぅ~、トロけるぅ〜、あま〜い」
梨々花が夢見心地の表情をする。
「喜んでもらえて良かったわ」
雪乃が微笑みながら言った。
「私も!」
珠希も松阪牛を口に入れる。
「んんーー!めちゃくちゃ美味い!」
「あ!」
雪乃が何かを思い出したような顔をした。
「ん?どうしたの?氷川さん、まだお肉残ってるけど?」
梨々花が雪乃に訊ねる。
「う、ううん、大丈夫!」
ーーーあんな事があったのに・・・今は、幸せかも。




