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こうしてウィルバートは、その立場と手腕でもって見事に交易に関する取り決めをまとめあげた。
それは現実的にはヴィクアタールとポルタヴィルという極めて限定的な範囲でのものではあったが、これまで公的な交流がなかったエヴェンディアとメルカトラにとっては大きな一歩となるだろう。
両国がこの先もずっと良好な関係を続けられるよう、ガルニエ商会はその責務を果たさねばならない。
そのことも、商会が更に力を増す兆しとなった。
会談を終えて戻ってきたジェラールにその様子を尋ねると、胃を押さえたまま無言で書斎に下がってしまった。
慌てたように母が胃薬を持っていく。
一体父はどうしてしまったのかと、エリアーヌは首をかしげた。
しばらくするとウィルバートが店を訪ねてきたので、共に出かけることにした。
物珍しそうにポルタヴィルの街を見回る姿は、エリアーヌが知るウィルバートだ。
生き物を扱う店の前でウィルバートの足が止まる。
その視線の先を追うと、白い鳥が売られていた。
「鳥が好きなの?」
「そういうわけでは。実は今日、お父上にもお話ししたことなのですが」
ウィルバートの薄い色の瞳がエリアーヌを見る。
メルカトラの光はウィルバートの印象を強いものに変えるらしい。
眩しすぎて、灼けてしまいそうだ。
「子どもの頃、父が世話していた番が産んだ卵をもらいました。孵化したあとも大切に世話をして」
「可愛がっていたのね」
「でもある日、私の肩に止まっていることに気づかず、窓を開けてしまった」
エリアーヌは口元に手をあてた。
よくある失敗ではある。だが子供の心にはさぞ辛いものだっただろう。
「最初はただ寂しくて泣きました。そのうち、鳥籠しか知らないあの子を外に放り出してしまったと後悔しました。人に世話をされた鳥が、自然で生きていけるとは到底思えなかった」
そこまでの悲しげな顔から一転して、ウィルバートはいたずらな顔でエリアーヌを見た。
「しかし今は、意外とたくましく生きていたかもしれないと思えています。あなたのおかげで」
「……それって、私が図太いってこと?」
エリアーヌが不服そうに言い返すと、ウィルバートはおかしそうに笑った。
「いいえ。ただ、私には眩しいほど、あなたの生命は煌めいて見えます」
「貴族の人って、そういうことを言うのは恥ずかしくないの?」
「? どのようなことでしょう」
「私、あなたの方がよっぽど神経が太いと思うわ」
「そうですか? 嬉しいな」
黙っていたらあんなに冷たい顔なのに、今のウィルバートはふにゃふにゃとだらしない顔をしている。
もしかしたら彼は彼で、ここのところずっと気を張っていたのだろうか。
エリアーヌが冬の間苦しみ続けた問題を、あっという間に解決してしまったのだ。
その大仕事は素直に尊敬に値する。
ただ、エリアーヌはヴィクアタールで公に商売できることを素直に喜べずにいた。




