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ヴィクアタールの太陽  作者: マスターオブあんかけうどん


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「それで? どんな女なんだ」

「もうお調べなのでしょう。その通りですよ」

「お前の口から聞きたい。特別美しい娘ではないそうだな」

「特別美しいわけではないだけで、可愛らしいお嬢さんですよ。ご報告の通り」


兄はなにやらぶちぶちと言っているが、どうせ事前に使用人にも報告をさせている。

ウィルバートと話をしたい気持ちも本物だろうが、なにしろ兄は忙しい。

無駄を嫌い、即断即決。

さらには同時に色々なことを考えているせいか話が飛びやすい。

実の弟でさえこれなのだから、部下や使用人は、仕え始めの頃は全員が苦労させられる。


「中央の方々から見れば、確かに彼女は日に焼けた不美人で、太っているでしょう。ですが私に言わせれば、それは健やかに生きてきた証です。なにより彼女の好奇心と勇気こそが代え難い美徳ですから」

「ふん。お前も男だな」

「?」

「豊満なのは良いことだ。たわわなのもな」

「……兄上。怒りますよ」

「はっはっは! 久しぶりにお前のそんな顔を見たな。お前は大人しすぎる。やかましいのが一人くらいいても良いだろうさ」


そう言って、マティアスはウィルバートの頭を撫でた。


「弟が惚れ込んだ女だ。否やなどあるまい?」

「やめてください」


子供のように扱われ、思わずその手を払う。

弟が可愛くて仕方がないといった様子だったマティアスの瞳が、一瞬で温度を失くした。


「一つだけ言っておく」


マティアスの声が一段下がる。

そしてウィルバートの顎を掴んで真っ正面から視線を合わせた。


「他国の平民を娶っても構わんが、あまりこちらには近づけさせるな。手綱を握り、うまく使え。良い子にしているなら、少しばかり稼がせてやってもいい」


自分と同じ薄い色の瞳に、強い光が反射する。

それは酷く眩しく、相対するウィルバートの瞳を灼いた。

笑った形の口から覗く鋭い犬歯が、噛み付かんばかりにその存在を主張する。


兄は、こういう人だ。人の使い方をよく分かっている。

人を従わせるやり方も。


そのうえで尚、自分を甘やかしてくれてはいるのだ。

これが彼なりの愛情表現だと、ウィルバートは重々承知していた。


「心得ました」

「欲しいなら奪ってでも手に入れろ。期待しているぞ。中央には話を通しておいてやるから、たまには美味いものでも送ってよこせ」


もう一度弟の頭を撫で、マティアスは退席した。

自分の身体から兄の香水の匂いがする。


ウィルバートの背に一筋だけ、汗が流れた。

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