表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴィクアタールの太陽  作者: マスターオブあんかけうどん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/30

19

エリアーヌは草むらに座りこみ、近くの草を抜いては投げた。

思わず癇癪を起こしてしまった。

でもだって、お父様が酷いことを言ったから。

だけど、もう大人なのにこんな甘えた態度をとってしまって。


ぐるぐると思考が回る。

素直に謝れそうにないし、どうしても今は戻りたくない。


また草をむしって投げると、後ろから落ち着いた声がした。


「かわいそうだろ。やめてやれ」

「……アーロン」


エリアーヌは昔から、嫌なことがあると人目を避ける習性があった。

そんな時のために、この草むらをはじめとしてたいくつかの逃げ場所がある。

アーロンはその全てを把握していて、エリアーヌが家を飛び出すとゆっくりそれらを回って探しにきてくれた。


「お父上が心配していたぞ」

「嘘つき。どうせ今頃ディランに続きを報告させているんでしょう」

「おぉ、鋭いな」


アーロンはカラカラと笑った。

昔から嘘が下手だ。何しろ本人が本気で騙すつもりがないのだから。


「だが、それが終われば心配し始めるだろうな」

「それはそうでしょうね」

「その前には帰ってやろう」

「勝手に心配すればいいんだわ。お父様なんて嫌い」


エリアーヌは、アーロンの前では特別幼くなる自分を自覚していた。

それでも今はとにかく甘えたい気分だったのだ。


「そうか。でも一度嫌いになったものでも、また好きにはなれる」

「……アーロンは茸が嫌いなままじゃない」

「まだ分からんぞ。死ぬ頃には好きで仕方なくなっているかもしれないからな」

「適当なことばっかり」


エリアーヌは小さく息を漏らすように笑った。

するとアーロンは安心したように、そんな彼女の頭をガシガシと撫でる。


「お嬢さんは真面目すぎる」

「そうかしら」

「そうだ。見ろ、今日はいい天気だ。雲が川の魚みたいでうまそうだ」


エリアーヌはつられて空を見上げた。

まもなく日が沈むのだろう、空が赤くなってきている。


雲の形が、ヴィクアタールと少し違う。

生えている道草が違う。

風の匂いが違う。水の甘さが違う。


「……ヴィクアタールに、帰りたい」


アーロンは少しだけ目を見開いた。

そして立てた自分の膝に顔を埋めるエリアーヌの頭を、そっと撫でた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ