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エリアーヌは草むらに座りこみ、近くの草を抜いては投げた。
思わず癇癪を起こしてしまった。
でもだって、お父様が酷いことを言ったから。
だけど、もう大人なのにこんな甘えた態度をとってしまって。
ぐるぐると思考が回る。
素直に謝れそうにないし、どうしても今は戻りたくない。
また草をむしって投げると、後ろから落ち着いた声がした。
「かわいそうだろ。やめてやれ」
「……アーロン」
エリアーヌは昔から、嫌なことがあると人目を避ける習性があった。
そんな時のために、この草むらをはじめとしてたいくつかの逃げ場所がある。
アーロンはその全てを把握していて、エリアーヌが家を飛び出すとゆっくりそれらを回って探しにきてくれた。
「お父上が心配していたぞ」
「嘘つき。どうせ今頃ディランに続きを報告させているんでしょう」
「おぉ、鋭いな」
アーロンはカラカラと笑った。
昔から嘘が下手だ。何しろ本人が本気で騙すつもりがないのだから。
「だが、それが終われば心配し始めるだろうな」
「それはそうでしょうね」
「その前には帰ってやろう」
「勝手に心配すればいいんだわ。お父様なんて嫌い」
エリアーヌは、アーロンの前では特別幼くなる自分を自覚していた。
それでも今はとにかく甘えたい気分だったのだ。
「そうか。でも一度嫌いになったものでも、また好きにはなれる」
「……アーロンは茸が嫌いなままじゃない」
「まだ分からんぞ。死ぬ頃には好きで仕方なくなっているかもしれないからな」
「適当なことばっかり」
エリアーヌは小さく息を漏らすように笑った。
するとアーロンは安心したように、そんな彼女の頭をガシガシと撫でる。
「お嬢さんは真面目すぎる」
「そうかしら」
「そうだ。見ろ、今日はいい天気だ。雲が川の魚みたいでうまそうだ」
エリアーヌはつられて空を見上げた。
まもなく日が沈むのだろう、空が赤くなってきている。
雲の形が、ヴィクアタールと少し違う。
生えている道草が違う。
風の匂いが違う。水の甘さが違う。
「……ヴィクアタールに、帰りたい」
アーロンは少しだけ目を見開いた。
そして立てた自分の膝に顔を埋めるエリアーヌの頭を、そっと撫でた。




