表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴィクアタールの太陽  作者: マスターオブあんかけうどん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/29

16

エリアーヌは借りている家に戻り、すぐにディランとアーロンに状況を説明した。

二人は即座に帰国を決め、夜のうちに手際よく支度と家の清掃まで済ませた。

そうして一行は朝日が昇る前にメルカトラへ向けて出立した。


その頃、ウィルバートは眠れぬ夜を過ごした。

いくらあの跳ねっ返りに理解させるためとはいえ、厳しい態度をとってしまった。

あえて傷つけるであろう言葉すら投げた。

そうでもしないと、あの様子ではエリアーヌが決心できないと思ったからだった。


だが傷ついたエリアーヌの瞳が、震える声が、悲しげな背中が。

一晩中ウィルバートを責め立てた。


それでもウィルバートは間違ってはいない。

今帰らなければ、確実に彼らはこちらで冬を過ごすことになる。

それは決して簡単なことではなかったし、彼女の今後にとっては望ましいことではなかったのだから。

見えている苦労をさせてやれる度量を、ウィルバートは持ち合わせていない。


翌朝、ウィルバートは執務に取り掛かる前にとエリアーヌの様子を見に来た。

あの二人が慰めているだろうが、それでも気が収まらなかったのだ。


しかし家には既に人気は無かった。

扉の鍵は開いており、中に入る。

丁寧に使っていたようで、家は貸したときよりも整っている気がした。


中央のテーブルには渡していた鍵と共に何通かの手紙が置いてあった。

ウィルバート宛のものもあるようだ。手にとって封を開く。



――ウィルバート様


ご助言の通り、急ぎメルカトラへと戻ることにいたしました。

こちらの空き家をお貸しいただいたこと、このご恩は忘れません。


明け方には発ちますが、ご挨拶もできずに帰国の途に着くご無礼をどうかお許しください。

どうぞお身体をお大事に、ご健勝にお過ごしくださいませ。


エリアーヌ



机上には他にもアデラやゼノ、その他何人かへ宛てた手紙が残されている。

アデラはまだいい。

だがゼノに宛てたものですら、厚みがある。


ウィルバートへはたった一枚の、儀礼だけの手紙なのに。


あれだけ言葉を交わしてきたのだから分かる。

エリアーヌは怒りに任せて投げやりな手紙を認めるような真似はしない。


だからこれは、あくまで代官たるウィルバートへの礼儀として、非礼にならないように一筆認めただけ。

そこには彼女自身の感情など何もない。


こうなると分かっていて突き放したはずだったのに。

ウィルバートは、ぞっとするほど整ったエリアーヌの字を指先でなぞった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ