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エリアーヌは借りている家に戻り、すぐにディランとアーロンに状況を説明した。
二人は即座に帰国を決め、夜のうちに手際よく支度と家の清掃まで済ませた。
そうして一行は朝日が昇る前にメルカトラへ向けて出立した。
その頃、ウィルバートは眠れぬ夜を過ごした。
いくらあの跳ねっ返りに理解させるためとはいえ、厳しい態度をとってしまった。
あえて傷つけるであろう言葉すら投げた。
そうでもしないと、あの様子ではエリアーヌが決心できないと思ったからだった。
だが傷ついたエリアーヌの瞳が、震える声が、悲しげな背中が。
一晩中ウィルバートを責め立てた。
それでもウィルバートは間違ってはいない。
今帰らなければ、確実に彼らはこちらで冬を過ごすことになる。
それは決して簡単なことではなかったし、彼女の今後にとっては望ましいことではなかったのだから。
見えている苦労をさせてやれる度量を、ウィルバートは持ち合わせていない。
翌朝、ウィルバートは執務に取り掛かる前にとエリアーヌの様子を見に来た。
あの二人が慰めているだろうが、それでも気が収まらなかったのだ。
しかし家には既に人気は無かった。
扉の鍵は開いており、中に入る。
丁寧に使っていたようで、家は貸したときよりも整っている気がした。
中央のテーブルには渡していた鍵と共に何通かの手紙が置いてあった。
ウィルバート宛のものもあるようだ。手にとって封を開く。
――ウィルバート様
ご助言の通り、急ぎメルカトラへと戻ることにいたしました。
こちらの空き家をお貸しいただいたこと、このご恩は忘れません。
明け方には発ちますが、ご挨拶もできずに帰国の途に着くご無礼をどうかお許しください。
どうぞお身体をお大事に、ご健勝にお過ごしくださいませ。
エリアーヌ
机上には他にもアデラやゼノ、その他何人かへ宛てた手紙が残されている。
アデラはまだいい。
だがゼノに宛てたものですら、厚みがある。
ウィルバートへはたった一枚の、儀礼だけの手紙なのに。
あれだけ言葉を交わしてきたのだから分かる。
エリアーヌは怒りに任せて投げやりな手紙を認めるような真似はしない。
だからこれは、あくまで代官たるウィルバートへの礼儀として、非礼にならないように一筆認めただけ。
そこには彼女自身の感情など何もない。
こうなると分かっていて突き放したはずだったのに。
ウィルバートは、ぞっとするほど整ったエリアーヌの字を指先でなぞった。




