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定期的に顔を合わせ、エリアーヌとウィルバートは意見を交わし、議論を重ねた。
和やかに笑いが生まれるときもあれば、時には喧嘩のように意見がぶつかることもあった。
「――メルカトラとエヴェンディアがそんなにも違うとは思わないわ」
「そうでしょうか。今のお話だと、両国の間には大きな隔たりがあるように感じましたが?」
ウィルバートの冷たい声に少し怯むが、負けじと食らいつく。
「現に私たち、言葉が通じているわ。食事の前には祈るし、パンを食べる。山のこちら側とあちら側で、朝には目を覚まして、夜には眠るのよ。一体、何が違うの?」
その薄い色の瞳で見られると、エリアーヌの身体は足元から凍りついていく気すらした。
ウィルバートは呆れ果てたように深いため息をつく。
肘掛けを指先でコツコツと叩くのは、彼がときどき見せる癖だ。
「ただ一つ、間違いなく言えることは、私たちは違う国に生まれている。それだけはどんなことがあっても変えることはできません。同様に、考えの違いや何を重視するのかは、そう易々とは変えられぬものです」
ウィルバートはときどき、こうやって他者を突き放すことがある。
それは為政者としては正しい態度なのだろう。
でもエリアーヌにとってはそれは他人を拒絶するやり方で、力でねじ伏せているのと同じように思われた。
「そうね。でも、魚と蟹は同じ沢の深いところと浅いところに住んでいるわ。違う?」
ウィルバートは少々呆気に取られた。
「……何を言い出すかと思えば。魚は魚で、蟹は蟹でしょう」
呆れられてしまったかしら。
それでも、ウィルバートの指先は落ち着き、肘掛けにはきちんと肘が置かれた。
「ただまぁ、そうですね。確かに同じ沢には住んでいる」
「でしょう? やっぱり魚と蟹でも、同じ沢で暮らせるのよ。それなら、やはりそんなに大きな違いはないはず」
「それはさすがに乱暴な意見だと思いますが。まぁ、言いたいことは分かりました」
どんなに意見が食い違ってもエリアーヌはウィルバートとの対話を諦めなかった。
そしてウィルバートもまた、エリアーヌの情熱を疑うことはなかった。
こうしてエリアーヌはだんだん口調が砕けていったし、ウィルバートはそれに気づきながらも許した。
ウィルバートにとって年齢の近い女性と話す機会はそう多くなく、相手は隣国の平民であるし、こうした気安い関係も悪く無いと感じていたからだ。
その日は日中でも少し冷えた。
そのせいか、いつもの客間は窓が閉め切られ、薄い肩掛けが用意されていた。
そしてウィルバートはエリアーヌと意見を交わしながら、時折咳をした。
「喉が痛むの?」
「昔からたまにあるのです」
「お薬は?」
「特には。大抵は蜂蜜を湯で溶いて飲みます」
エリアーヌは聞き逃さなかった。
瞬間、目を輝かせて食いついた。
「もしかして、蜂蜜が採れるの?」
「この辺りではありませんが、少し内地に進むと養蜂が盛んな地域があります」
「ずっと不思議だったの。砂糖が手に入らない割に、どうして蜂蜜はあるのかしらって」
「また一つ、疑問が解決しましたね」
ウィルバートは軽く咳払いをしながら笑う。
そういえば、なんだか少し声も枯れている気がする。
あまり喉が強くないのかもしれない。
「喉のためなら、生姜を入れるともっといいわ」
「生姜を? この辺りではあまり見ませんね」
「そうなの? じゃあ次に来るときには持ってくるわ。身体も温まるし、冬にぜひ試してみて」
「……そうですね、機会があれば」
あまり反応が芳しくない。
興味があるのかないのか、あるいは生姜が得意ではないのか。
彼はときどき、何を考えているのか分からないときがある。
エリアーヌとしてはかなり仲良くなっているつもりなのだが、なにしろ相手はお貴族様だ。
さすがにウィルバートはそんなことをしないだろうが、機嫌を損ねて打たれたりしてはたまらない。




