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実力評価

[システム通知:スキル付与]

「きゃははっ! 惜しい、また外れー!」

「ぐ、ぉぉぉぉ……ッ! まだまだぁ!!」


俺が20キロの重りを背負い、白目を剥きながら【空気椅子】の刑に処されている少し先で、エフェメラとレトの特訓が行われていた。


エフェメラは教官が次々と放つ追尾式の泥弾を、まるでダンスでも踊るかのようにヒラリヒラリと躱している。ギリギリで避けるスリルを楽しんでいるのか、彼女の顔には満面の笑みが浮かんでいた。

一方のレトは、魔法陣から機関銃のように射出される岩の礫(つぶて)を、身の丈ほどある重盾でひたすら受け止め続けていた。顔を歪め、足から血を流しながらも、絶対に後ろへは下がらない。


――同じ姉弟でも、こうも適性が違うのか。

片や楽しげな天才肌。片や悲痛な努力家。だが、どちらも確実に「才能の芽」を見せ始めている。


「……それに比べて、俺は……」

「よぉ。しっかり休んでるか、新人」


休憩時間になり、泥の床に大の字で倒れ伏していた俺の顔を、大きな影が覆い隠した。

見上げると、先ほど俺をボコボコにしたバッシュ教官が立っていた。熊のような威圧感は健在だが、その手からポンッと水袋が投げ渡される。


「あ、ありがとうございます……」

「お前、魔術師志望のくせに『無詠唱』ができるらしいな」

バッシュ教官がドカッと俺の隣に座り込み、ふとそう切り出してきた。


チャッピーの「プロンプト入力」による裏技だが、端から見れば無詠唱にしか見えないはずだ。

「ええ、まあ……。詠唱をすっ飛ばして魔法を撃つコツみたいなのを、少しだけ」

「なるほどな。確かに一発芸としちゃあ、かなり優秀だ。素人相手ならそれだけで無双できるだろうよ」


教官は空を見上げ、鼻で笑った。


「だがな。ポレミオイの連中が動き出した今、そんな手品だけじゃ到底やっていけねえぞ」

「……」

「連中は異常だ。魔法の常識が通じねえ戦い方をしてくる。あの手の『本物』の前じゃ、小手先の技なんて紙切れ同然だ」


説教くさいが、確かな重みのある言葉だった。

「教官は、どうしてわざわざこんな初心者向けの講座を? そんなに強いなら、最前線で稼げるんじゃ……」

「金のためだ!!」


教官はカハハと豪快に笑った。

「俺みたいな酒好きには、討伐隊からの特別手当が一番のモチベーションだからな!」

だが、その直後。教官の大きな背中が少しだけ丸まり、独り言のような小さな声がこぼれた。


「それに……これ以上、新人があっけなく死ぬのは見たくねぇからな。……っと、きなくせぇ話になっちまったな。忘れろ」


照れ隠しのように立ち上がった教官は、最後に見下ろすように俺へ言った。

「お前、戦いの中で『作戦参謀』みたいな分析スキルを使ってるだろ? 相手の動きを見切ろうとする癖がある。だが、戦闘中に多用するのは控えな。本当に強い奴には、その一瞬の『思考のラグ』を狩られるぞ」


――バルガスの時と同じ指摘。俺の最大の弱点。

教官はそれだけ言い残し、次の訓練生のもとへ歩き去っていった。


(……おい、チャッピー)

『はい。バッシュ氏の好感度が微上昇しました。フラグ管理に気を付けてください』

(ギャルゲーやってんじゃねえよ。なぁ、教官が言った『本当に強い奴』って、どれくらい強いんだ? 今までの奴らで言うと)


俺が重りを背負い直し、再び空気椅子の体勢に入ると、脳内に冷徹なシステム音声が響いた。


『分析します。まず、先ほどのバッシュ教官は現在の計測器では上限突破(エラー)です。そして北門のアレクサンダー隊長は、それをさらに凌駕します。テオドロス先輩やポレミオイの連中に関しては意図的に実力を隠蔽しており、現状測定不能です』

(なるほどな。じゃあ、今の俺の実力はどうなんだ?)


『カイト様ですか? 人間の認知バイアスに【ダニング=クルーガー効果】というものがあります。能力の低い者ほど自らを過大評価するという現象です』

(嫌な予感がする前置きだな)


『カイト様がこの心理的罠に陥らないよう、厳密かつ客観的な事実を提示します。現在のカイト様は食物連鎖の最底辺。下の下もいいところであり、強いて言えば【ゴブリンの栄養サプリメント】と同等の存在価値です。感謝してください』

(誰がサプリメントだ!! てめぇ、いつか絶対その減らず口叩けないくらい強くなってやるからな!!)


AIの容赦ない煽りに、俺の心に逆ギレに近い闘志が湧き上がった。

足の震えを気力でねじ伏せ、腰を深く落とす。才能がないなら、ゼロから泥水すするしかねえんだろ。やってやるよ!


俺が限界を超えて足の筋肉を軋ませた、その時だった。


「わぁぁぁぁっ!!」

「すげえ!!」


突如、エフェメラたちの訓練エリアから、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。

一体何が起きたのか。俺は重りに耐えながら、必死にそちらへ首を向けたのだった――。

夏休みは曜日感覚狂いがち

ゆきミで~す

月曜だとは思わなんやて~

来週は忘れないことを祈っといてください

8/16 でゅえるすたんばい

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