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第2章 第8話 どうやら気になることがあるらしい

- 魔素の世界 -

《ポルファス王国 南部 シキニ山地の戦い》


王国軍の憤怒。

イバラン軍の軽蔑。

邪教国軍の侮蔑。


国によって心に抱く感情は違っている。


戦いの火蓋は切られた。


王国軍とイバラン軍の共闘軍は、平原で敵を迎え撃つことを選択した。

地の利を捨てたのである。


その提案をしたのは、イバラン軍の若き将校ラタであった。

それには大きく2つの理由がある。


まず一つ。

山中で敵を迎え撃つ場合は、その前提としてそこに敵が攻め込んでくることが条件となる。

敵が山の中に入ってこなければ意味がない。


邪教国が素直に攻め込んでくるとは、ラタには思えなかった。


邪教国は、人の道から外れた邪教徒の集団である。

もし、こちらが山中で防衛する陣形を固めた場合、敵は山に火を放ってくるに違いない。


その場合、激しく燃え上がる炎と煙は、山中に陣を張る共闘軍を襲うであろう。

すると、共闘軍は何もできずに壊滅させられる可能性が高い。


実際、そのラタの考えは正しかった。

邪教国軍は食糧とともに大量の油を運搬してきている。

それを、この戦場から少し離れた場所で保管していた。


もう一つ。

恐怖は人の判断を誤らせる。

大量の敵に囲まれた状況では、内通者が出る可能性が多分に生まれる。


要するに裏切りである。


王国軍の中から、敵と内通する者が出ることは、まずないと考えられる。

王国軍騎士の気概、誇り、結束、忠義、愛国心の強さは、剣を交えたからこそよく理解できていた。


それに対して、イバラン軍はどうであろうか。


イバランは共和制の国であり、兵の多くは徴兵された者たちである。

残念ながら、内通者が出る可能性は高い。


すると、外と中の両方に敵を作ることとなり、共闘軍は壊滅してしまうこととなる。


ラタの提言は、両国の代表全員を納得させるに十分であった。

それにより、平原で敵を迎え撃つことを決定したのである。


しかし、共闘軍は圧倒的な数的不利にある。

平原の戦いでは、少数が多数に勝利することは至難のことだ。


カモットが口を開いた。


「まずは、鉤形陣かぎなりじんで敵を迎え撃つ。」


そして、両国の代表は簡単な打合せを済ますと、陣幕テントを後にしていたのであった。


突撃アーレース!」

殲滅ディーバ!」


共闘軍と邪教国軍が激突する。


邪教国軍の第1波はその数の優位性を活かして、両翼より共闘軍に覆いかぶさる形で囲い込みを図っていく。


それに対する共闘軍は、両翼を凹の形に折り曲げた鉤形陣かぎなりじんで迎え撃つ。


【状況】

□=王国軍、〇=イバラン軍

■=邪教国軍


――――――――――――――――――――――

平原

□                    〇

■□□                〇〇■

■■□□    □□〇〇 〇〇〇 〇〇〇■■

■■■□□□□□□□〇〇〇〇〇〇〇〇〇■■■

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

   

   ■■■■■■■■■■■■■■■■

  

   ■■■■■■■■■■■■■■■■


     ■■■■■■■■■■■■



敵を包囲しようと考えた邪教国軍であったが、両翼が敵に抑えられたことに苛立つ。

それどころか、左翼は押し返されていたのであった。


それに対する共闘軍の右翼では、王国騎士軍団常駐隊長のサコンが鬼神の如く奮闘していた。


激怒、憤慨、悲憤。

サコンの頬には血の涙の跡が残っている。


火あぶりにされたカモットの息子は、子供のいないサコンにとっても息子同然であった。


彼が幼き頃から、槍と剣の指導をしたのはサコンである。

英明なカモット辺境伯に似て、彼も幼い頃から文武両道で聡明であった。


その反面、女性に対してはとてもシャイな一面があった。

彼の初恋の相談を聞いたのもサコンである。


彼の最後の叫びが耳から離れない。

その悔しさは、我らに託された。


「絶対に許さんぞ!貴様らっ!」


サコンが敵をなぎ倒す。


敵右翼の勢いが強く、左翼が劣勢と見た邪教国軍は、第2波を左翼に集中させた。

その顔からは、すでに敵を侮蔑する表情は消えている。


【状況】

□=王国軍、☆=サコン

〇=イバラン軍

■=邪教国軍

                     〇

                   〇〇■

□□      □□〇〇 〇〇〇 〇〇〇■■

□☆□□□□□□□□〇〇〇〇〇〇〇〇〇■■■

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

↑↑↑↑↑↑↑↑

■■■■■■■■

■■■■■■■■

  

   ■■■■■■■■■■■■■■■■


     ■■■■■■■■■■■■


その頃。

憤懣ふんまんやるかたない気持ちを必死に抑えるカモットは、共闘軍の中央にいた。


息子の最後。

それを考えずにいられるわけはない。


カモットは敵軍を睨みつけると、その様子を観察した。


敵の数は多い。

だが、弱すぎる。


それが気になった。


海を渡って侵略してきた軍が、この程度のものであるとは考えにくい。

それに邪教国には、魔法を扱う“使徒”なる存在がいるはずである。

しかし、目の前の敵軍は、魔法を放つ気配さえ感じられない。


これは、邪教国の本軍ではない・・・。

カモットはそれを察知したのであった。


************


- 万物の世界 -


とりあえず歩くことにした6人。

行くあてなど、どこにもない。


この世界には国がなければ街もない。

全ての生物は、厄災を恐れてひっそりと隠れて生きている。


その空は、変化の兆しが濃くなっていた。

それが反転して、蒼紫色に変わると厄災がはじまるのだ。


「まずは身を隠せる場所を探すべきだ。」


ニャンモクのライが言った。

赤い一つ目をキョロキョロさせて辺りを見渡す。


「てか、あんた誰よ?」


ミアがライに向かって言った。


「いま、そんなことを話している場合か?」


ライが、ミアを見下すように冷たく言い放つ。


ライに食ってかかろうとするミアをポランが止めた。

ポランもライを見たことがない。

その為、不信感がないといえば嘘である。


《ライ》

■系統種族:妖精系-ニャンモク  ■年齢:123  ■レベル:15

■経験値:20000/22000

■HP:150/150  ■MP:300/300

■攻撃力:20  ■防御力:20(+30)  ■魔力:100(+100)

■ちから:20

■みのまもり:20

■すばやさ:10

■きようさ:5

■かしこさ:30

【スキル】観察

     真似

     幻視

     阻害系魔法

【ジョブ】オブスタクル

【称号】異世界免許教習所に雇われし者・新米


「雇われし者に間違いないでヤンス。」


ライのステータスを見たポランが呟いた。


「でも、なんか怪しいわよね。」


「お前ら、そいつの追及はあとにしろ。時間がない。」


ミックは空を見上げながら言った。

空は反転しはじめている。


「ミック、あの岩陰はどうだ?」


ライカンスロープのウルが指を差した。

その方角には巨大な岩が見える。


「走るぞ!」


岩陰に向かって走りだしたミック。

それを追いかけて、全員が走りだす。


空は反転して蒼紫色に変化する。

至る所から聞こえてくる竜獣系の吠える声・・・。


厄災が訪れる。

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