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第2章 第1話 どうやら大変な日になるらしい

異世界免許教習所内ココカラ


「今日の目覚めは最高っ!」


ミアは目を覚ますと飛び起きた。

清々しい朝の陽ざしを浴びて、気分良く伸びをする。


すると、意思を持つ手紙コンシャスメールが目の前に届いた。

所長のゴランからの伝言である。


「・・・・今日は最悪の朝ね。」


「今日の目覚めは最高でやんスっ!」


ポランは目を覚ますと飛び起きた。

清々しい朝の陽ざしを浴びて、気分良く伸びをする。


すると、意思を持つ手紙コンシャスメールが目の前に届いた。


「・・・・やっぱり、起きたくないでやんス。」


僕は、自分の部屋がある建物に戻ってきた。

早朝に湖で出会ったキントンと一緒にいた黒色のゴーレムは、“アダマンタイト”のゴーレムであった。


やはり、かつての僕が作った特殊なゴーレムの1体であり、その中でも古株なのだそうだ。

その名前は、ドルトンディアス・オマラティゴ・なんちゃらと長かった。


“ドルトン”と呼べば良いらしい。

そのステータスは、やはりチートだった。


自分の部屋がある建物の前には、項垂うなだれたゾンビのような2人の姿があった。

ミアとポランである。


「おはよう!清々しい朝だねっ!」


手を大きく振って、2人に駆け寄った。


ミアとポランは、無言のまま顔を少しだけ上げた。

僕の姿を確認すると、また項垂うなだれるのであった。


そして、ズルズルと足取り重く歩き出す。


「どうしたの?体調悪い?」


心配する僕の顔をチラッと見た2人は、またまた項垂うなだれる。


「せっかく、2人ともレベル5になったんだし、元気出そうよ!」


ミアとポランの足が止まった。


「それよ。」

「それでやんス。」


2人が顔を上げた。

そして、究極に萎えた表情になる。


「・・・・届いたのよ。」

「・・・・届いたでやんス。」


「何が??」


「・・・・審査告知よ。」

「・・・・審査告知でやんス。」


「何それ??」


2人が白い目で僕を見る。


「私たちって、異世界免許教習所に雇われし者の新米じゃない。」

「そうだね。」


「新米が一人前と認められたら、教官とかになるのよ。」

「そうだろね。」


「それには、審査をクリアしないといけないでやんス・・・。」

「もし、まだレベル5になってなかったら、たぶん審査告知は来なかったはずよ・・・。」


2人はそう言って、また項垂うなだれた。


「審査って、そんなに難しいの?」


「その時の審査によるわ。」

「今回は、あの“万物の世界”でやんス・・・・。」


この世の終わりだという表情の2人。


「万物の世界だと、審査が難しくなるの?」


「ミライは、万物の世界に行ったことがないから知らないでやんス。」

「ミライは、お気楽で良いわよね。あそこには二度と行きたくないわ。」


「たかだか、レベル5のオイラ達が、足を踏み入れてはいけない世界でやんス。」


そう言うと、2人は黙りこくってしまった。


「ま、まあ。とりあえず、朝食を食べに行こうよ。」


僕は2人の背中を叩いた。


「ちょっと待ってて。ぜー君にも声掛けてくるから。」


「ぜー坊とは、さっき会ったでやんス。」

「研究室から呼び出されたって言ってたわ。」


「そっか、残念。じゃあ、3人で行こっか。」


僕らは食堂に向かうことにした。

今日の朝食は、とても辛い食べ物が入っていた。

辛い食べ物が苦手なミアには、とても残念な一日が始まるらしい。


***************


- 魔素の世界 -

《ポルファス王国 南部 シキニ山地の戦い》


ポルファス王国の南部では、昨日から起きた戦が続いていた。


南部領主であるカモット辺境伯が率いる王国軍。

それに対するは、隣国イバラン国とマイラン国の連合軍。


防衛、夜襲、衝突。

カモット辺境伯の策によって、初日に起きた3つの戦いでは、全て王国軍が勝利している。


そして、早朝。

新たな戦いが始まろうとしていた。


カモットは山の麓を見下ろした。


「どうやら、再び正面から攻めてくることにしたようじゃのう。」


カモットは、自分の横に立っている王国騎士軍団常駐隊長と私兵騎士隊長を見た。


「敵の方が数的有利である以上は、やはりこうなるのでしょうな。」

「しかし、イバラン軍だけのようですな。」


山の麓で陣を張る動きをしている敵軍の数は、凡そ6千と思われる。

王国軍は、昨日の戦いで4千にまで減っていた。


連合軍のもう一方であるマイラン軍は、昨夜の夜襲により潰走していった。

すでに、自国まで撤退したのであろう。


「マイランの潰走を受けて、イバランも引き下がってくれたら良かったのじゃがのう。」

「昨夜の潔い撤退といい、やはりイバランは底が知れませんな。」


「まあ仕方ない。こちらは専守防衛じゃ。段取り通り頼むぞ。」

「はっ。」

「はっ。」


両軍は陣形を整えていく。

2日目の戦は、間もなく始まろうとしていた。


【状況】

□=王国軍陣形

■=イバラン軍陣形

      

山   □□□□□□□□


 ―――――――――――

    

    ■■■■■■■■

平原  ■■

    ■■



イバラン軍の陣営。

若き将校であるラタは、陣形を整える為の指示を忙しく出していた。


そのラタの下に、イバラン軍の将軍が歩み寄ってくる。


2人は、昨夜遅くまで綿密な計画を練って話し合っていた。


「ラタよ。いよいよだな。」

「そうですね。敵が気づいていない今が、最初で最後のチャンスです。」


そこに、青い髪の将校が、準備完了の報告に来た。


「陣営は整いました。しかし、左翼をここまで極端に厚くして良いのですか?」


将軍に代わってラタが答える。


「大丈夫さ。敵には“あえて”分かるように厚くする必要があるからね。」

「しかし、これでは個の戦力に勝る敵に、こちらの右翼と中央を潰されてしまわないか?」


「それはだね・・・。」


この陣形の意図について、ラタはどこまで説明しようか迷った。

敵を欺く為にはまず味方からの要素があるのだ。


ラタの様子を見て、将軍はそれ以上の発言を制した。

そして、青い髪の将校に向かって力強く言った。


「大丈夫だ。この戦いで我々は勝利を手に出来る。」

「・・・かしこまりました。」


将軍に諭された青い髪の将校は、しぶしぶ自分の持ち場に戻って行った。


「ありがとうございます。」

「気にするな。これ位しか、私には仕事がないのだから。」


そう言うと、イバラン軍の将軍は気持ち良く笑った。


その姿を見たラタは心の中で呟いた。

だから貴方は、優れた将軍なのだろうと思いますよ。


***************


王国軍の陣営に戻る。


「敵はどうやら、兵法を知っておるようじゃのう。」


カモットは苦い顔をして言った。


「昨夜といい、どうやら知恵者がおりますな。」


平原で整えられた敵の陣形は、明らかに敵左翼が厚く編成されている。

軍が横に陣形を広げる場合、一般的には自陣の右翼に“実力の高い兵”を配置するものである。


それには理由がある。


武器と盾を手にした重装兵が並んで横に陣形を広げた場合、左側は盾で防御することが出来る。

それに対して、右側には身を守る盾がない。


その為、横に広がった陣形は、敵に右側から攻められる方が崩れやすい。

よって、自陣の右翼には、実力の高い兵を配置するのがセオリーになるのである。


しかし、敵は左翼に極端な厚みを持たせている。

これは、王国軍の右翼を数で圧倒して壊滅させるという意図が明確に見られるのであった。


そして、敵の陣形には、もう一つの意味がある。

こちらの方が、王国軍にとって問題であった。


全軍で専守防衛することが出来なくなったのである。


「これで、全軍で専守防衛するということが難しくなりましたな。」

「うむ。私が右翼を率いた方が良いかのう。」


「しかし、それでは御身が危ぶまれますぞ。」

「時間との勝負になるのう。貴殿らには、敵右翼を即座に壊滅させてもらわんとならん。」


その難しさと厳しさは、口に出さずとも3人とも理解している。


「これは参った。敵にあっぱれだ。」


そう言って、カモットは気持ち良く笑った。


「何とか急ぎ壊滅させます。それまで何卒、ご無事で。」

「万が一のことあらば、必ず御身だけでもお引き下さい。」


「うむ。2人とも、頼むぞ。」

「はっ。」

「はっ。」


王国騎士常駐隊長は自軍の左翼、私兵騎士隊長は中央を率いる為に持ち場に動いていく。


【状況】

□=王国軍陣形

■=イバラン軍陣形

  カモット 私隊長 常隊長

    ☆   〇  〇

山   □□□□□□□□


 ―――――――――――

    

    ■■■■■■■■

平原  ■■     ●

    ■■     大将

    ★

    ラタ


イバラン軍の将軍が大きく息を吸った。

そして、全軍に突撃の合図を出す。


突撃アーレース!!」


2日目の決戦の幕が上がった。

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