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PROJECT・NOVA ~英雄たちの輪舞~  作者: たい平


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31/32

#31

カガミは情報端末サージル Sa-Jiruに届いた部屋に向かう。

カガミの隣には、ベンベンも一緒にいた。

恐らく部隊内挨拶が終わり次第すぐにブリーフィングを行う為に、ベンベンが一緒に居るものと思われる。

カガミ自身ブリーフィングで、作戦説明や指示に馴れていない為内心ホッとしていた。

指定されたブリーフィングルームに入ると、既に大人数が席に座りカガミとベンベンが来るのを待って待機している状態だった。


部屋に入ると全員が立ち上がり敬礼をしてくる。

カガミはそれに一瞬たじろぐが、ベンベンは気にする様子もなく

「らくにしろ~」と一言いい、大型モニター横まで移動する。

カガミはその反対側に移動し、簡単な挨拶を交わしあいある程度の隊員の顔と名前を把握する。

やはりと言えばいいのか、メリッサは希望通りカガミが率いる第10中隊・通称 スカーレット隊の副隊長に任命されていた。

顔合わせが終わるとメリッサが

「アキ団長から新しい作戦指示書を受けとっています。隊長達の端末に送ります」

リンダが自分のSa-Jiruを操作し、カガミとベンベンに作戦指示書を送る。

2人が画面に表示された内容に目を通すと、見る見るうちに表情が変化していく。

ほぼほぼリアクションが同じで『うん?……うん?!うん!!!』と唸り声を上げる。

ブリーフィングルームに来るまでに、作戦内容がまとめられた書類を目にしていたのだが、その内容とは全く違う内容に変更されていた。

しかもその内容はとても現状の戦力でどうにかなるのか、怪しいものだった。


2人の表情を見た部下達が不安そうにしている所にメリッサが

「あの~、隊長?」と代表して聞いてきた。

カガミは「あぁ、うん、なんだ、大丈夫。…いや、ごめん。噓だ、ちょっと大丈夫じゃない…かも」と顔をそらす。

メリッサ達が『えっ?』と驚いていると

「よ~し、今から変更された作戦内容を話す。質問があるヤツは、その場ですぐに聞け」

ベンベンはそう言うと、Sa-Jiruとモニター画面の操作盤をいじりだす。


モニター画面には、簡単に描かれた商業連合会の本部であるアクタイオン社の所有する街アクタイオン周辺が表示される。

比較的に沿岸部に近く、海辺から街までは何もない完全な砂浜になっている。

そこには街側に青い凸マーク、海側に赤い凸マークが2つに別れて表示されている。


「恐らく全員に送られたデータには、こんな配置に表示されているはずだ」

ベンベンがそう言いながら操作盤を操作しながら

「中央の激戦地をコルレットの主戦力が受け持ちつつ、コルレットと同盟を組んでいる組織は左翼側に展開。帝国側は右翼側に展開しつつ、街側の最終防衛ラインを担当する。

どの国や組織にも属していない連中の大半は、威力偵察を兼ねて既に海上・海中・対空戦を繰り広げているらしい。

俺達が現場に入る頃には、遊撃部隊として行動予定とされている.。…はずだった」


「はずだった、とは?」メリッサに聞き返されると


「配置と役割が完全に変わったことだ」

更にベンベンが操作盤を動かすと、モニター画面の映像が変わる。

今度は緑色の凸マークが街側の中央真ん中に表示され

「俺達の配置はココになった」とベンベンが全員に向かって疲れた様子で言った。

それを聞いた隊員達は

「はぁ~!敵の真前!?」

「しかも…待って下さいよ。ほぼネクティアだけの戦力じゃないですか!!」「これをアーリィ姫が、本当に許可を出されたんですか!?」「有り得ない。抗議するべきです!俺達は捨て駒じゃない!!!」「落ち着けお前ら」とベンベンは隊員達を一度なだめ

「言いたい事の山ほどはあるだろうが、現状のネクティアは御世辞にも情勢がいいとは言えない状況はお前等でも分かるだろ」


「まぁ」「それは」「いや、それでもですよ」

隊員達が言い淀みながらも、言葉を返そうとするが

「アーリィちゃんやアキさんが、無闇やたらにこんな無茶な作戦を出すと思うか?」

「姫様や団長には、なにか深い考えがある…と」

リンダをはじめ隊員達の視線がベンベンに集まる。


「勿論!…でも……多分アキさんはノリかなぁ~、って気がする」

『えぇー!!!』と全員が不安な表情になる。

「ちょっと!ベンベンさん!!なに不安にさせるような事を言ってんですか!!!」

「だってよカガミン、アキさんだぜ?無いって言えるか?」

「そんなの…言えるに……言えるに……」


カガミの脳内で今迄のアキの行動が走馬灯の如く再生される


號龍に乗りハルバートを振り回しながら、1人敵陣に突っ込みながら

「大丈夫!大丈夫!適当に殴ってりゃどうにかなるから」


今度はアサルトライフルを撃ちながらキメラに

「楽シィー!ねぇ、ねぇ。痛い?痛いの?オコ?オコなの?」と煽る。


完全にヤバい状態の時のアキが次から次へと出てくる。

カガミは視線を泳がせながら、最後の方だけ小声で

「……大丈夫ですよ…多分」

それを見た隊員達は

((思い当たる事があるんだ))と心を読んだ。

「と、兎に角、無茶な配置ではあるけど、作戦が全く用意されていない訳じゃない。変更された作戦内容を今から話す」

カガミは何とか話を無理矢理戻そうとすると、1人の隊員が恐る恐る手を上げながら

「あのぉ。他国と共同戦を行うなら、本来作戦は一緒に考えるものではないでしょうか?」

そう疑問を投げかけてきた。

カガミは苦笑いをしながら「本来はね」と返す。

それと同時にベンベンは呆れた様子で

「あのなぁ、俺達とこれから連携とる連中の名前を言ってみろ」

すると疑問を投げかけた隊員は、動揺しながら

「えっと、商業連合会・サルダール・セクターズタウン・クレイドル帝国・アスコールそれから…」

「もういい。それで今言った連中全員に、お前は背中を預けられるか?」

「それ…は、その」

「ちょうどいい。俺の言ってる事が訳分らんって顔してるヤツが多いみたいだから、今のうちに説明しておいてやる。言うまでもないが帝国側とコルレットは戦争真っ只中で、俺〇達の立場は一応コルレット側な訳だ。そこを一時的とはいえ、停戦状態に持ち込んで人類の敵キメラを共に倒そうと言う訳だ。だな?」

「は、はい」

「昨日の敵は今日の友って割り切って、ついさっき銃やナイフで殺り合って命のやり取りを無かった事にして、明日からはまた笑顔で敵同士になる訳だ」

「いや、それは…」


ベンベンは今迄の演技的な表情からいつも通りの表情に戻り

「んな訳ねぇわな。隙を見せようもんなら後ろから”ズドン”とやるかも知れんし、チャンスがあればアーリィちゃんの命を狙って来るかもしれない。そんな連中と上手く連携取れると思うか?」

誰もベンベンの話に返す様子はなく、静けさが広がる。

カガミは補足するように

「まぁ、そこまで流石にあからさまな事はしてこないと思うけど、少なからず味方ばかりが居る戦場ではない事は分かったと思う。あくまで一時休戦。必要最低限の作戦行動とおおまかな配置は、商業連合会を通してアクタイオン防衛戦に参加する組織に連絡される。

だから俺達は、ある程度の作戦を自分達で展開出来る訳だ」


今度はメリッサが手を上げ

「それでカガミ隊長。変更された作戦とは」

「これから説明する」


それから数時間かけて配置や作戦内容、自分達が搭乗予定の軍艦について説明がされる。

夕陽が沈む頃には、ブリーフィングは終了しカガミは2番ドックに向かっていた。


基地内を軍用車両で走り、ドックに向かっていた。

ベンベンは別の仕事があり、ブリーフィング終了後に別れていた。

今カガミが運転する横の座席には、メリッサが乗っている。

カガミが率いるスカーレット隊こと、第10中隊のメンバーリストを見ながら

「カガミ隊長。彼女、ラミン・J・ロシェ少尉ですが、私が率いていた第6小隊の副隊長を務めていました。中距離支援を得意としてますので、隊長との相性は非常に良いかと思います。ただ、先月の戦闘で機体が中破しており、新しく機体を用意する必要があるかと」

「分かった。俺の方で申請しておく」

メリッサは紙をめくり

「バラム・スタンリー少尉、元ネクティア防衛7班 班長。頭脳派の好青年ですが、実戦経験も多く、彼の経験則は、かなりの役に立つと思われます。重武装機を好んで搭乗しています」

「タンク役か。足止めしてくれる人間が居るのは、助かるな」

「次は西 春奈 少尉。元コルカタウン第6遊撃部隊所属。コルカタウンがキメラに襲われる前に、応募で来たようです。金銭面で当時の上官と揉めてカイヤナイトに来たようですね。記録を見る限りでは、実力には問題はないようです」

「ウチに来ても給料は良くないと思うけど…、俺も揉め事は嫌だな」

「提示している金額には納得しているようですから、恐らく問題は無いと思いますよ」

メリッサは目的地が近づくにつれ、急ぎながら紙をめくる

「スクラム准尉 元Dキャンパーで、本人曰く(いわく)、アーマードブレインの操縦よりも白兵戦を得意としているそうです」

「歩兵部隊希望?」

「いえ。新しく開発されたラビットファイターのパイロットとして登録されています。模擬戦での戦績も問題はありません」

「ラビットファイターか……まだどうやってアーマードブレインと連携して運用すればいいか、難しいんだよな」

「難しいとは思いますが、隊長なら大丈夫ですよ」と言いながらまたメリッサは紙をめくる

「ラリー・栗本准尉 元ネクティア遠征部隊第3中隊所属。後方支援を得意とし、機体操縦は基本苦手。オペレーターとしては非常に優秀なので、我がスカーレット隊では彼にオペレーターをして貰う事になると思います」

その後もドックに着くまでに、ある程度の隊員のリストと説明を続けた。


ドックに着くと目の前には、カイヤナイトで建造した強襲揚陸艦 2番艦ヴァルキュリアがあった。

今度の作戦でカガミ達第10中隊が乗る船だ。

それと同時にアーリィが乗る予定の旗艦になる。


ドッグの周りでは、整備班の人間やパイロット達の怒号が飛び交う。

「誰だ!搬入口前にラーカス置いてる馬鹿は!!!」

「ヴァルキュリアの物質搬入が先だ!輸送機なんぞ後だ!!!」

「おい!このコンテナ何処に搬入すればいいんだよ!!!」

「俺達の機体はどうすんだよ!?もう1時間もカタパルトの上で待機だぞ!」


「何処もかしこも忙しそうだな」

「そうですね。人員配置が速く終わったといっても、新しい場所で新しい部隊ですから、ルールも決まり事もまだ決まってないですから」

2人はそのまま船の格納庫に向かう。


格納庫に着くと誰かが「おーい!カガミ隊長。こっちだ、こっち」とカガミを呼ぶ。

そちらに向くと如何にもな頑固おやじといった感じの人間が手招きして、カガミ達を呼んでいた。

実はカガミは何度かこの人物と面識があった。

「どうも川本曹長」と挨拶すると

”がっははは”と大笑いし「源でいい」と、カガミの背中を叩く。

この人はカガミ率いる第10中隊 スカーレット隊の整備班班長で、名前を川本かわもと げんと言う。

階級は曹長で頑固おやじで有名な整備士。

「あの曹長。一応ここは軍隊で、カガミ隊長は我々の上官です。その態度は……」

「あぁ。悪りぃな嬢ちゃん中尉」

「じょ、嬢ちゃん中尉!?」とメリッサは驚きと怒りが混じったような表情になる

「これでも一応カガミ隊長は認めてるんだぜ。だがお前さん達は、まだまだだ。嬢ちゃんの機体見させて貰ったぜ。機体の駆動系にかなりの負担が掛かってる。機体の全体的ダメージと比較しても、動きがいいとは言えんな」

「なっ!?」

何なんですかと言いかけるが、それをカガミが止める。

「源さんそれくらいに、ウチの副隊長を虐めないで下さいよ」

「虐めたつもりは無いんだが」と頭を掻きながら

「それはそうと、ウチの隊の機体。全機水中仕様に変更したぜ」

「仕事が速いね。助かる」

「だがよ、イヅナは装備の換装は簡単作業だが。調整に関しちゃ全然だめだ。若い連中と色々試したが、上手いこといかん。あの3人が作った機体は、全部に変な癖がある」

カガミは苦笑いを浮かべ「確かに」と答える。

言うまでもないが源が言った3人とは、ハヤテ・ダイ・ジャガーの事だ。


カガミとメリッサは自分の機体のコックピットに乗り込む。

機体を起動し、各部をチェックする。

イヅナの装甲は換装され、水中戦仕様に変更されている。

スラスター部位が全てジェットスクリューに変更され、胸部装甲・肩装甲・脚部装甲が増設されて、重量感が増している。

それに伴い自分に合わせた最終調整は自分で行わなければならない。

本来量産機ならば、今迄のデータを元に整備班の人間が調整を行い、パイロットがそれを最後に確認すればいいだけなのだが、カガミ達のようにワンオフ機になると自分達で機体の調整も行うことは珍しい話ではない。

実際ベテランの源でさえ、第四世代機の機体を弄る事は生きていれば1回あるか無いかのレベルで、その仕様・構造・整備手順も第三世代機から、ガラッと変わる。

そこにあの3人が手を加えるのだから、普通の整備士の手におえる訳がないのだ。

「今回は地上での動きが鈍っても、水中での動きが速い方が有り難いな」

カガミがイヅナの調整をしていると、自分の機体の調整を終えたメリッサが、コックピット内を覗き込む。

「第四世代機のコックピット内って、こんな風になっているんですね。やっぱりコバルトのコックピットとは違いますね」

カガミはモニター画面から顔を上げ

「確かに第一・第二世代機と比べると違うだろうな。その変わりパイロットに掛かる負担は大きいらしいけど」

「らしいですか?まるで他人事に聞こえますけど…隊長は平気なんですか?」

「俺だけじゃなく、カイヤナイトの幹部全員が平気だと思うぞ」

「えっ!?本当ですか!」


”コッチの世界”に来てから分かった事だが、一部の第三世代機・第四世代機が多く生産されないのには理由がある。

アーマードブレインを操縦するには、ある程度の適正数値が存在する。

パイロットの脳波と機体をリンクさせるブレインサーチで、機体とパイロットをリンクさせる数値は125以上とされている。

だが実際第三世代機以上になると、機体が求めるブレインサーチの数値は300以上と言われている。

カガミは達が乗る第四世代機となれば更に多くの数値を求められる。

第二世代機クラスの機体であれば、数値不足でも機体が動かないで済むが、第三世代機クラスになると機体がある程度動くが、身体に負担が掛かり気を失う場合がある。

だが、実際そこまでの数値を打ち出すパイロットは貴重で、各国に数人居るだけでも多いと言われている。

それも”コッチの世界”の話であり、”向こうの世界”から来たカガミ達はそんな設定があったな程度だ。

片桐博士からは、「お前たちの今の肉体は”人工英雄兵器”計画で作られた物に、元の記憶データを入れ込んだものだ」といったものらしい。

そのせいか肉体的負担や疲労といったものを感じる事はほぼない。


「隊長…その、本当に大丈夫なんですか?一応医療部で、身体の健康チェックをして貰った方が良いのでは?この所激務が続いていますし、自分自身で気付かないだけで、身体に何かしらの影響が出ているかも知れませんよ」


メリッサは心配そうに気遣ってくれているが、片桐博士の話ならば

「普通の貧弱な人間の身体と、お前達の身体では作りの基礎が違う。普通の人間が即死になるものでも、お前達ならば軽傷ですむ。病気などというものは、縁遠いと思え」だ。


「心配は有り難いけど、ベンベンさんとか見ても本当に心配だと思うか?」

「それは……」

メリッサが言葉に詰まると

「今するべき心配は、俺よりも今回の作戦さ。生存率が上がったとは言え、生きて帰れるかは、話が別だ」

「それでも私達は隊長達を信じて付いて行くまでです!」

真っ直ぐな目でカガミを見るメリッサに、カガミは顔を下げ

(今なら前にハルさんが言っていた言葉の意味が心底理解出来る)

「頼むから、そんな真っ直ぐな目で見ないでくれ。そんなハードル上げられても、マジで困る」

「自信を持って下さい!隊長。隊長達の腕前は、近隣諸国含め敵う(かなう)人間やキメラなんていませんよ」

顔を上げたカガミは「お世辞として貰っておく」と返す。

するとメリッサのSa-Jiruが鳴り、それを確認する。

「隊長、アキ団長から呼び出しです。司令部に来るようにと」

「分かった。すぐに行こう」

イヅナの調整を8割程終わらせ、カガミとメリッサはアキが待つカイヤナイト基地の司令部に向かった。

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