#29
カガミ達は朝食をすませるとダイに言われた通り、カイヤナイト基地の地下スペース内にある、第3区画の実験場に向かった。
建物の中に入ると、入口付近にあった貼り紙に
”ダイ隊長に呼ばれた方は、左側階段から3階の観測室にお入り下さい”と書かれていた。
カガミ達は指示通り3階まで上がり、観測室と書かれた部屋に入る。
「ダイさん、来ましたけど…」
カガミは、数人の整備兵とダイが端末操作している所まで近づく。
「あぁ、うん、ちょっとだけ待って」とカガミを見る事なく、整備兵達に色々と指示を出しながら忙しそうにしている。
ベンベンとアキも端末に近づきながら
「なにをまた変態チックな物を作ったの?」
「あれ?ハヤテさんは、何処だい。連れて行かれたから。ここに居るかと」
「ベンベンさんじゃないんですから、誰が変態チックな物を作るか!それとハヤテ先生なら、そこで死んでまーす」
ベンベンが「誰が変態だ!コラ‼無視すんな!!!」と怒る横で、ダイが指差した方向を見ると整備兵達に隠れ見えずらかったが、力尽き白眼を向きながら口を全開に開いたハヤテが、端末の上に倒れ込むように伏せていた。
『うをぉー!』と3人が驚くと、ハヤテの右腕がフラフラとしながらも手を振りながら
「ま…まだ……か…ろうじて、生き…とる」と声を枯らしながら返事をしたが、その様子はさながら、ゾンビになりかけの様な感じだ。
そこに更に次々とネクティアの関係者・軍人、カイヤナイトの兵士達が部屋に入って来る
「ダイ隊長!新型アーマードブレインが完成したとは、本当ですか!?」
「いや、今回は残念ながらアーマードブレインでは無く、別の新型で…」
「ダイ隊長!新型アーマードブレインが完成したと聞いたのだが」
「いやね、今回はアーマードブレインではなく…」
「ダイ隊長!新型機が完成したと…」
「だ!か!!ら!!!今回は…」
ダイのイラつきの沸点が、限界を超え振り切られたタイミングでハル達が部屋に入り
「おーいダイさん、来てやったぞ。アーマードブレイン出来たのか」
「アーマードブレインちゃうわ!いい加減にせぇ!!何度聞くつもりじゃ!!!」とブチ切れる。
「知らねぇよ!?俺等は今来たばかりだ!」
慌てた整備兵達は、ダイを落ち着かせながら端末盤前の席に促しながら
「す、すいません。OS関係が上手く調整出来ない上に、不眠不休の作業でしたので」と整備兵の1人が説明しながら、その場の全員に謝罪した。
そこに更にアーリィ達一行が到着し部屋に入ってくる。
「あの~、ダイ隊長さんに来るように言われたのですけれど」とアキに状況を聞こうと近づく
「それがごめんね。俺も呼ばれて来ただけで、詳しく知らないんだ。一応新型機のお披露目らしいけど」
アキも困ったといった感じで、頭を掻いていると
「無責任な。本来呼ぶ前に事前説明を、ちゃんとするべきだろう。姫様はそこらの一般人ではないのだぞ」
声の主の方に皆が目を向けると、そこにはスカルルージュ隊の副隊長であるリンダに車椅子を押され、その車椅子に座っていたメグミ中隊長がいた。その両足はギプス固定されていた。
「メグちゃん!?もう大丈夫なのかい?」
「誰がメグちゃんだ。…見ての通り無事ではあったが、暫くはまともに動けん。スカル・ルージュ隊は暫くリンダが指揮を執る」
カガミもメグミの方に近づき
「本当に動いて大丈夫なんですか?」と聞くと
「姫様達だけでは、何を見せられるのか分からんからな。それにそんなヤワな訓練をしてきた訳ではない」と素っ気なく返す。
そこにアーリィが近づき
「メグミ中隊長は、カガミさんに用事があったんですよね」
アーリィがニコリと笑う
それを聞いたカガミは「俺に?」と不思議そうに顔を歪ませながら、メグミとリンダの方に向く。
メグミは観念したかのようにため息をし、カガミに真面目な顔で向き合うと
「昨日の戦闘では部下を含めて、私自身も助けられた。改めて礼を言う、ありがとう」
メグミはカガミの方に手を伸ばし、握手を求めた。
当のカガミはスカル・ルージュ隊の救出後、キメラの殲滅戦に参加していた為、完全にメグミ達の事を忘れていた。
「メグミさん達が無事で良かったです」
カガミは求められた握手に応じ、握手する。
そこにエムジーが
「そんな堅苦しい言い方じゃなくて、もっと普通に……」
ムックが慌てて、エムジーの口を押さえながら苦笑いで
「そんな堅苦しく考えずに、仲間なんだから気を使わずにってね、ね?」と言うがエムジーは否定するように、首を振る。
今度はそれを見たリンダが
「カガミさんは見返りを求めないのに、お前はがめつくも何かを要求するのか。やはり根は野蛮人そのものか」
エムジーはムックに口を押さえられながらも
「―んだ―もう―度言っ―み―」とキレながら暴れる。
そこにゴードンが「止めんか2人共!こんな大人数の前で、みっともない」と止めに入る。
更にそこにダイは大声で、Yの字に身体を伸ばしながら椅子から立ち上がり
「皆様お待たせいたしました!窓の近くまでお進み下さい!!」
ダイの指示通りその場に居た全員が、観測室の窓に近づく。
すると眼前には鉄製の壁に覆われた広い空間が広がっており、左右の壁にはスライド式のデカい扉が設置されている。
「それでは皆さん!まず最初の新型機の登場になります!!!」
ダイの一言に反応するかの様に右側の扉がスライドし、その奥から通常のバイクよりも明らかに大きなバイクが、4台入場曲と共に入ってきた。
その光景に観測室に居た全員がざわつく。
それもそうだろう。
新型機と言われ来てみれば、バイク本体左右に武装が付いている程度の物で、ただの戦闘車両だったのだから。
だが整備兵とダイの様子は、全くの逆で
「いや~、見た目のデザインもいいですね。流石ダイ隊長」
「誰もアレがああなるとは思ってないでしょう。さすがっす」
「コストと戦力のバランス考えれば、世紀の大発明ですよ」
「キミ達もっと褒めてくれていいのだよ!」
ダイがドやる横でハヤテも「俺の…努力も……称え…ろ」と、力なく声を上げる。
そこに流石にこの状況に耐えかねたライラがダイに
「あのぉ、まさかとは思いますが…これが新型機なのですか?」
「えぇ、その通りですよ!これから機能を、バッシ!バッシ!!と説明しますよ」
ダイの一言にライラは頭を抱え、他の軍人達も苦笑いで誤魔化している。
だがカイヤナイトメンバーの様子は、違う意味で呆れていた。
『どうせ普通のバイクで終わる訳ない』と……
観測室の空気を気にする様子もなくダイは
「それでは機体名から説明します。分類はブレインワーカー、型式番号BW-S001ーA・通称グランバッシュ。ビークルモード時は時速120キロまで加速可能であり、パイロットスーツ着用時は両サイドのガトリングガンのエイム補助機能により、走っている状態でもかなりの命中精度を保つ事が可能です」
その説明通りと言わんとばかりに、実験場の床からキメラを模した的が床から出てきて、バイクもとい、グランバッシュは走りながら的にガトリングを撃つ。
その命中率は確かに高く保々全弾が命中し、観測室にいる軍人達も確かに驚いていた。
「それではビークルモードから、いよいよディフェンスモードに……変形します!!!」と
ダイが大々的に言うと全員が声を揃えるように
『変形?』
全員が驚いているとグランバッシュは変形し、2足歩行型の半ロボット形体に変形した。
変形すると2.5メートル程の高さになり、車体本体からマニュピレーターらしき腕が2本出てきている。
武器を掴んだりする様な物ではなく、マニュピレーター自体が武装そのものと言った感じで出来ている。
「変形しただと!」「あれは戦闘車両では無かったのか!?」「そもそもブレインワァーカーは、戦力外認定された兵器では無かったか?」
ネクティアの軍人達が、驚きながら色々と口にしていたがダイは気にせず説明を続ける。
「このグランバッシュは更に、アーマードブレインが必要とする脳波数値がなんと25レベルで操作可能とし、両サイドの武装はオプションパーツ扱いなので変更可能。接近戦にも対応しており、両腕のマニュピレーターは新型フレームを採用した事で、強襲用マニュピレーターとなってます。主にポーン級キメラとの戦闘に対応・特化した兵器として製作しました」
変形したグランバッシュは、再度床から出てきた的をガトリングで撃ち抜く。
それを見ていたメグミが
「射撃はもういい。ビークルモードと言ったか、あの状態であの命中率だ。変形した程度で命中精度が下がる事はないだろう。問題は変形した今の状態なら接近戦が可能と言ったな?見せてくれ」
ダイは「了解!」と親指を立てながら、整備兵に指示を出す。
整備兵はグランバッシュのパイロットに、何か伝えるとパイロット達の表情が真剣なものになる。
「接近戦の様子を見せるとなると、ただ的を出せばいいって訳には行かなくて……、ここからは捕獲したポーン級キメラを使用した、本格的な実戦形式のものにシフトします」
すると床から檻が出てくる。その中にはポーン級キメラのワームビートルが、20匹程入っていた。
実験場のスピーカーから「これより実戦テストに移行。各員戦闘態勢にシフトせよ!」
スピーカーから何度か繰り返しアナウンスがされると檻の扉が開かれ、ワームビートルが一斉にグランバッシュに向かって走りだす。
それに対抗するようにグランバッシュもワームビートルに向かって、ガトリングを撃ちながら動きだす。
両腕のマニュピレーターを振るい、先端部の爪でワームビートルを切り裂き、掴んでは引きちぎるなど、正直に言えば戦闘能力の高さは証明出来たが、その光景はお世辞にも見せられるようなものでは無かった。
実際ゴードンとライラはアーリィの前に立ち、アーリィの視界に入れない様にした。
ものの数分でワームビートルが殲滅され、実験場はワームビートルの体液が飛び散り緑色一色に染まる。
戦闘を見ていた軍人やネクティア関係者からは、興奮と拍手が送られた。
すると数人の軍人が
「そう言えばパイロットの1人に、見覚えがありますが…」
「確か彼は元は制圧部隊に居たはずでは?」
「他のパイロットも確か歩兵部隊に居た人間じゃ…もしやこのブレインワァーカーは、歩兵サポート兵器なのか?ダイ隊長」
「いや待て。一応2足歩行型兵器になるようだが、パイロット適正の方はどうなっている?」
そこでダイは
「えぇ~。そこら辺の説明は、もう1種類の機体紹介後にまとめてさせて頂ければと思います。ですがその前に小休憩を挿みましょう。スタッフ~!」
軍服を着た兵士が数人部屋に、飲み物を持って入ってきた。
1人1人にお茶などを配る。
その間にダイは、カガミとエムジーにコッソリと近づき
「カガミ君、エムジーさん、ちょっと2人にお願いがあるんだけど」と小声で話してきた。
2人は釣られるように
「頼みってなんですか?」
「つうか何で小声?!」
「実験場の格納庫に2人の機体を用意してあるから、今すぐに格納庫に行って欲しいんだ」
「それは別に良いですけど…なにさせる気ですか?」
「次の機体紹介もキメラを使うから、その警備件実験兵器のサポートをね。ベルナール達を先に行かせてるから、一緒に実験場に入ってきて。あぁ、行進曲に合わせてお上品に頼むよ」
2人が『はぁ!?』と呆気に取られた所で、ダイは軍人に呼ばれそちらに歩いて行った。
カガミが「どうする?取り敢えず格納庫に行くか」とエムジーに聞くと
「仕方ねぇ、取り敢えず行くか。でも行進曲うんぬんは知らん!?適当に歩く」
2人は観測室を後にし、実験場の格納庫に向かった。
格納庫内に入ると意外な人間達が、カガミ達を待っていた。
「あっ!?兄貴!こっちこっち」とベルナールが手を振る。
ベルナールの周りには、お決まりの面子でヴァレリー・ジョンも一緒にいる。
意外と言えば更にそこにトッド・キース伍長が、部下数人とベルナール達とカガミを待っていた事だ。
「カガミ隊長・エムジー隊長、お待ちしておりました。この新型機は凄いですよ!戦場のあり方が、今後大きく変わるでしょう」
興奮気味のトッド伍長とその部下達の視線の先には、一瞬”マジか!?”と思える見た目の機体が立っている。
それを見たカガミとエムジーは啞然とした表情で、ダイが作った機体が悪ふざけか、それとも真面目に作った物なのか本気で悩んだ顔になる。
※
観測室では休憩を終えて、再び窓際に人が集まる。
「それでは引き続き、新型機のお披露目を行います。それでは登場して頂きましょう!」
ダイは整備班に合図を送ると、端末を操作し出す整備兵達。
格納庫の扉が開きその奥から機体が出てくる。
その機体が登場すると、反応が様々だ。
「なんだ?!あの機体は?」「あれは本当に、戦闘用に開発された物なのか?」
「悪ふざけ…では、無いのですよね?ダイ隊長」
色々聞かれるダイは、胸を張って「本気も本気、大真面目でございますよ!」と返す。
その横では女性陣の様子は、アーリィを筆頭に
「か、かわいいです」と意外な反応が返ってくる。
ライラとメグミもつい釣られる様に「可愛い」とぼそりと呟く。
カイヤナイトメンバーは『また笑いを取りにいくような機体を』と半分呆れていた。
行進曲と共に出てきた機体は2足歩行型の機体で、頭部にうさ耳を付けている様にしか見えない機体が出てきた。
大きさも後ろから歩いてくるイヅナとアルダートに比べると、半分位の大きさになる。
全員が啞然としていると、ゴードンが戸惑いを隠しながら
「ダイ殿…アレは……一体?」
「アレぞ!今回の大目玉!!ブレインワーカーのラビットファイターです!!!」
『……』
「どうした皆!感動し過ぎ!?」
「感動してんじゃねぇーよ!?リアクションに困ってんだよ」っとハルがその場の全員の代弁するかの様に突っ込む。
リュウも「それにラピッドファイターだろ?なんか肩にミサイルみたいなの付いてるし」と言うがそれを強く否定し、ダイは両手を頭に乗せうさ耳を作り
「NO!ラピッド!?YES!ラビット!!!」とドヤ顔をして答える。
『……』
「うさちゃんで~す!YES!ラビ……」
ハルは堪らず
「2度も言うな!聞こえてるよ!!あえて見なかった事にしてやってるんだろうが!?」
「え?皆俺のファンシーさにやられていたのでは?」
「どちらかと言えば、オメェのホラーさにやられてたわ!……たまに本気でダイさんのメンタルが羨ましい時があるよ俺」と疲れた様子で近くの椅子にハルは座る。
ゴードンは
「と、取り敢えず。そのラビットファイターとやらの性能を説明してくれるか?ダイ殿」と促す。
ダイも整備兵に何かを指示を出しながら
「それではラビットファイターの説明をさせて頂きます」と言いながら、ラビットファイターのパイロット達に聞こえるよう、インカムを付けながら説明をしだす。
「型式番号BW-M003-A・ラビットファイター、全長8メートルの2足歩行型ブレインワァーカーに分類し、ウサギの耳のような部分はレーダーになっており、アーマードブレインのレーダー範囲を超える広さに拡張されています。
また機動力も非常に優れ、偵察能力が非常に高く設計されております。
武装はグランバッシュ同様、強襲用マニュピレーターを独自に開発し、マニュピレーターから連射式2連装ビームガンを発射可能なアームガンを採用しました。
コバルトの装甲材を使用することで、強度面でも近接・射撃戦を可能域に持っていきました。
他の武装としましては、肩部に小型マルチマイクロミサイルが搭載されています」
不意にアキが
「背中に背負ってるのは、コバルトのビームガンとビームソードかい?」とダイに聞くと、待ってましたと言わんばかりに
「よくぞ気付いてくれました!ラビットファイターの背部にはサブアームが付いていて、そのアームでアーマードブレインの武装を運搬・使用を可能になっているんですよ!!」
その説明を聞くとネクティアの軍人達は食いつき
「それは本当ですか!?」「世代機によって武装も変わりますからね。その辺は?」
「その前にコストでしょ。性能が良くても、そこがクリア出来なければ」
「ですが戦場でトレーラーやガンシップを使うよりかは、コスト面でも現実的では?」
「運搬出来るのは、武器だけなのですか?」
意外にも質問攻めにあい困惑するダイに代わりアキが
「まぁ、聞きたい事も山ほどあるでしょうけど、まずは見ませんか?」と窓の方に指をさす。
ネクティアの軍人達が窓の方に視線を向けると、実験場ではラビットファイターが10機程整列し、指示を待っている状態だ。
イヅナとアルダートは邪魔にならないよう、壁際により待機している。
ダイは何とかネクティアの軍人達の輪から抜け出して
「それではラビットファイターによる、実戦形式の模擬戦を開始します。ラビットファイターは対ポーン級・ルーク級キメラを想定して製造されているので、今朝方捕獲してきたソードスパイダーで模擬戦を行います。それでは模擬戦開始!」
ダイの合図と共に、床から檻がいくつか上がってくる。その檻の中には腹が空いているのか、通常よりも狂暴化しているソードスパイダーがいた。
両鎌で檻を激しく攻撃し、ラビットファイターに威嚇をしている。
その様子を見てかラビットファイターのパイロット達は、緊張と恐怖で息を呑む。
それをコックピット内のモニター画面越しに見たトッド伍長やベルナール達は
【気負い過ぎるな。訓練通りにやれば上手くいく】
【何かあっても心配要らねぇよ。兄貴達はその為に居るんだし】
【うんうん。しんぱい#%$&……】
【ジョン、お前コックピットでポテチ食べるな】
緊張の欠片も無いジョンに冷静に突っ込みを入れるヴァレリーを見て、他のパイロット達から緊張感と恐怖が消える。
暫くして合図が出され、檻の扉が開かれる。
ピギィと威嚇するように鳴きながら、ラビットファイターに飛びかかる。
各々回避すると、2連装アームガンで弾幕を張る。
ソードスパイダーに命中するとそれなりの威力があるようで、ソードスパイダーの外皮に抉るような穴をつくる。
【全体の動きを止める!射線から全機離れろ!!!】
トッド伍長が全機に指示を出すと、ラビットファイターのマルチミサイルを拡散させるように発射する。
ソードスパイダー同士の間に撃ち込む事で、爆風に煽られてソードスパイダーの態勢が崩れる。
そこにラビットファイターのサブアームに、コバルトのビームソードを搭載したベルナール機とジョン機が突撃し、背中のサブアームを上手く振り回しながら動き、ソードスパイダーを斬り裂く。
ヴァレリーと他のパイロットも2人を援護するように、2連装アームガンとサブアームに搭載されたビームガンを撃ちながら、ソードスパイダーとの適正距離をとりながら動き走り回る。
その光景を見ている観測室では
「凄い」「まさかこれ程までの機動力とは」「武器の火力も十分ですな」
全員がラビットファイターの性能に驚いていると
「凄いのは何も性能だけじゃない」
目の下にクマを作り今にも倒れそうなハヤテが
「皆さんはアーマードブレインを操縦するのに、パイロット適正があるのはご存知でしょうか?」
「それは勿論」「確か脳波適正レベルが125以上でしたか」「そう言えば、あの2機の適正レベルはいくつなのですか?」
軍人達がハヤテに質問すると、疲れた様に
「グランバッシュが脳波レベル25・ラビットファイターが脳波レベル50です。ラビットファイターの場合複座型もあるので、2人で脳波レベルが50以上あれば問題なく稼働・戦闘が可能です」
それを聞いた全員が驚き
「それは本当ですか!」「有り得ない。あれ程の動きをしながら、脳波レベルがそれだけの数値とは」「これが本当ならば、無理にパイロット適正のある者を軍人にする必要も無くなるのでは?」「それは流石に早計過ぎるだろ」「ですが少なからず戦場の在り様は、変わるでしょ」「あとはコスト面でしょ」
ハヤテは
「まぁまだ実験機ですが、既にある程度の量産化の目処がたってます。コストはコバルト1機分の予算で、ラビットファイターが3機分・グランバッシュは10機分位ですかね」
それを聞き更に観測室では驚きが広がる。
だがそこにハヤテは付け加えるように
「但し少し問題が……実はカイヤナイト基地の生産工場には数の限界が。出来ればネクティアの工場ラインの一部を使わせて欲しいんですが…どう?アーリィちゃん」
「分かりました。クライヴ少佐」
アーリィは近くに居た参謀本部の初老の軍人に指示を出すと
「分かりました。直ぐに手配いたします」と言い、携帯端末を片手に部屋を出ていく。
ハヤテの話を聞いている間に、既にソードスパイダーは全滅している状態だった。
実験場で待機しているエムジーとカガミは
「俺達はいらないようだな」
「みたいだな」と安心しているとスピーカーから観測室のマイクを使いダイがパイロットと観測室の人間達に聞こえるように
「正直ここまでは、予測通りだった。だから最後にロックビースト2体を相手にした模擬戦を行いたいと思う」と言い出したのだ。
その言葉に流石のアキやベンベンは
「流石に危険じゃないかい?」
「そこまでしなくても結果は出せただろ」と止めようとする。
だがダイは
「スペック的には、ラビットファイター数機とグランバッシュで連携を取れば、ナイト級キメラを倒す事が可能です」と言うと、当のパイロット達からは
【む、無理ですよ】【スペック的に出来ても、自分達の訓練時間では…】と否定的な意見が出る。
「やるかやらないかは、パイロット諸君に任せる」
ダイがそう言うと、トッド伍長はイヅナとアルダートを見て
【やります!やらせてください】と意気込む。
部下達は驚くが、ベルナール達も
【叔父貴!俺もやるぜ。ヴァレリー、ジョンはどうする?】
【聞くまでもないだろう。ラビットファイターの性能限界を俺も知りたい】
【全然暴れたりなかったところさ】とやる気満々だった。
その様子を見た他のパイロットも
【そうだよ!?やろう!】【俺達の今後が掛かってる模擬戦だ】【ラビットファイターとグランバッシュが正式に量産化されるかは、俺達の手に掛かってる】とやる気を出す。
パイロット達のやる気を聞きダイは再び、整備兵に指示を出す。
実験場の床からは、再び2つの大型の檻が床から上がってくる。
檻の中にはダイが言った通りのロックビーストが入っている。
全員が息を吞むと、ロックビーストが入った檻が開く。
ロックビーストはゆっくりと檻から出てくる。
そこにグランバッシュにグレネードランチャーを装備した機体が、ロックビーストの顔面に撃ち込み視界を奪う。
そこにラビットファイターの2連装アームガンと、サブアームのビームガンによる一斉射撃が開始される。
ロックビーストは怯むこそすれ、ソードスパイダーの様なダメージは与えられずにいた。
撃たれるビームを右腕で防ぎながら、ロックビーストは実験場を走り回る。
1機グランバッシュが、ロックビーストに蹴られそうになると、トッド機が庇い蹴り飛ばされた。
それを観測室で見ていた全員が、トッドが死んだのでは?と一瞬凍りつくが、蹴り飛ばされたラビットファイターは、ひっくり返った状態からサブアームを使い自力で立ち上がる。
それには観測室の全員が、別の意味で驚いていた。
「ロックビーストの攻撃に耐えた上に、自力で態勢を立て直せるのか」
ゴードンが口に出して驚くとダイは
「ラビットファイターには、衝撃吸収材を使用してるからね。多少の打撃攻撃なら十分に耐えれますよ~。しかも運動性能もかなり力を入れて作りましたから」と自慢する。
「だけどロックビースト相手じゃ、やっぱり火力に欠けるように見えるけど」
アキの心配はもっともで、数でロックビーストを翻ろうしているものの、止めを刺すには明らかに火力不足。
ダイとハヤテが説明をする前に、トッドとベルナールはイヅナとアルダートに近づくと
【エムジー隊長!】と呼びながらアルダートに近づき、ラビットファイターの右腕を振る。
その様子はウサギがぴょこぴょこと跳ねながら、手を振っているようでそれを見ていた全員が、不覚にも『かわいい』と思ってしまう程だった。
勿論乗っているパイロットとしては、コックピット内で必死だ。
【アルダートのサブマシンガンを貸して下さい!】
【あ、あぁ。分かった】
エムジーは、直ぐにアルダートの腰に装備していたサブマシンガンを、ラビットファイターのビームガンと入れ替えて装備させる。
カガミの方も同じ様にバスターソードをサブアームに装備させた。
【行くぞベルナール!】
【おうよ!】と2機は走りだし、1体のロックビーストに狙いを絞る。
トッド機はアルダートから借りた、サブマシンガンをロックビーストに撃つと、ロックビーストの身体の撃ち抜いた場所から大量の血が流れる。
更にそこにベルナール機がバスターソードを槍のようにして突撃し、ロックビーストの眼前で飛び上がり、喉元に突き刺す。
ロックビーストは、最後に断末魔の様な叫び声と共に倒れ、なんとか1体を倒す事に成功する。
残りの1体は攻撃を受けすぎて、怒り狂っている。
そのせいか動きに規則性が無く、先程よりも動きが速くなっていた。
グランバッシュが、ビークルモードに変形し攻撃しながら囮を引き受け、ラビットファイターで頭部を狙ってミサイルやビーム兵器で攻撃をしている。
そこにトッド機がサブアームのサブマシンガンで、背中に弾丸を撃ち込むが数十発撃つと弾切れをおこす。
するとトッドは【ベルナール!】と呼び掛けて、実験場の壁をラビットファイターである程度駆け上がるとそのまま壁を蹴り、ロックビーストの後頭部目掛けて飛び蹴りをお見舞いする。
ベルナールもトッドの意図を読み【任せろ!】と、前に倒れるロックビーストの首にサブアームのバスターソードを横向きにして、首を斬り裂いた。
そこでスピーカーから「模擬戦終了」と流れ、観測室では拍手が起こっていた。
ただアーリィだけは、やはりと言うべきか視線を逸らしていた。
そこに先程観測室から出て行った、クライヴ少佐がこっそりと部屋に入って来ると、アーリィとゴードンに近づき
「姫様・ゴードン師団長、緊急です。少々宜しいでしょうか」
「分かりました。すぐに」
「分かった。行きましょう、姫様」
アーリィとゴードンが部屋を出て行こうとすると、クライヴ少佐は今度はアキに
「アキ団長も宜しいでしょうか?」
「うん?!俺もかい?」
「出来れば御一緒に来て頂ければと」
「分かった。ちょっと外すよ」とアキはハルに伝えて、アーリィ達と部屋を出て行った。
※
とある企業の会長室、ビルの最上階。
長い顎鬚に白いスーツを着た50代位の男性でいかにもな紳士が、窓際に立ち砂漠に囲まれた街を見回していた。
そこに執事の男が1人扉をノックして、入ってきた。
「ハリス様、ご指示通り招待状を送りました」
「ありがとう。情報の方はどうですか?」
「現状で手に入った物をお持ちしました」
すると執事は写真が添付された書類を手渡す。
そこにはアーリィとカイヤナイトのメンバーを中心にした、アキの写真と情報が載っていた。




