#19
オータム要塞の城塞上部の通路で、双眼鏡を覗きながら周辺警戒をしている。
森の方を見ると動きが止まり、下に居るメグミ中隊長に
「帰って来ました!カイヤナイトの機体全機帰還しました」と報告する。
森の方から號龍を先頭に、カイヤナイトの機体が要塞に戻って来る。
連絡を受けたメグミは
「戻ってきたか」と言うと、要塞の扉前まで移動する。
そこには既にリンダがおり腕組みをしながら、エムジーのアルダートを睨み付けていた。
メグミが来たのに気付くと、姿勢を正し一礼をする。
メグミは手を一度リンダにかざし、アキの號龍に向かって
「何処に散歩に行っていた。随分と遅いお戻りじゃないか」と皮肉を言う。
だがアキは気にする様子はなく
【すまない、メグちゃん。急いでアーリィちゃんと通信を繋いで貰えるかい?報酬の話なんかをしたいんでね】
「やはり傭兵は大義よりも金か」
【大義だけじゃ、大根一本買えないからね】
「いいだろう、機体を要塞のハンガーに入れろ。リンダ!要塞の司令室に案内してやれ。私は先に行って姫様に報告をしておく」
リンダは「分かりました」と言うと、メグミは要塞内の建物に入って行く。
アキ達も機体を格納庫のハンガーに機体を納めると、リンダの案内で要塞の司令室に向かった。
司令室に入ると既にメグミが大型ホログラムモニターを起動し、アーリィとその隣に居るゴードンと話をしていた。
奥にライラも居るのか映像には映ってないが、声だけ聞こえる。
司令室にアキが入って来たのに気付くと、メグミが
「来たようです。では、アキ団長に代わります」
メグミは座っていた席を立ち、アキに座るよう促す。
司令室に来たのはアキとトシそれとハヤテだけだ。他のメンバーは要塞内のとある場所で待機していた。
アキは席に座りその両隣にトシとハヤテが立つ。
アーリィは「お疲れ様でした、アキ団長。報告はメグミ中隊長から伺っております」と姿勢を正して軽くお辞儀をする。
アーリィの横から会話を掠める様に話だした、ゴードンはマシンガントークの如く興奮しながら
「アキ団長、流石だ!!!貴殿等に依頼した我々の判断は、間違っていなかった。それと急ぎ報酬の話をしたいとか。その件なのだが、今ライラ殿が色々と調整中でな、暫く待っては貰えないだろうか」と言ってきた。
アキは「その件なんだけど…」と言いかけると、隣にいるトシが
「その件だが、先に報酬の一部を今直ぐに渡して欲しい」言い。
「報酬の一部を今直ぐにですか?」とアーリィが首を傾げる。
トシは「あぁ、今直ぐにだ」と相手を焦らせる。
そこにハヤテが
「まぁ、今直ぐに報酬の受渡しが、可能だとは思ってないよ。…俺達も」
その会話を後ろで聞いていたメグミは
「貴様等、私の前で姫様を脅すとは、いい度胸だ」と、リンダと共に睨んでいた。
一瞬焦ったアキは「ちょっ!落ち着いてメグちゃん!!」となだめるが、
逆に「誰がメグちゃんだ!!!」と怒らせる。
トシは2人のやり取りを無視し
「取引をしたい。報酬の支払い不可能分を、今そちらに捕まっているDキャンパー全員と、こちらで投降したDキャンパー達全員の解放だ」
アーリィは「えっ?いいですけど」と言ったが、隣に居るゴードンとライラが焦り、部屋に他の幹部も居たのか、色々な発言が飛び交う。
「姫様!確かにDキャンパー達の解放には、私自身賛成ではありますが、全員を解放というのは……」
「そうです!?それに全員の解放ともなれば、それこそ支払う報酬分全てを含んで頂かないと割合が取れません!」
「ライラ殿、今はその様な事を話をしている場合では……」
「何を言いますか!我が国の財政は、火の車なのですよ!!!」と言い合いをする横で、他の幹部達が
「いや、いかんでしょ。国民に示しがつかん」
「それにコルレットの連中に、やはり姫様は甘いと侮られる」
「だが、足りない報酬分がそれなら、いいのではないか?」
「周辺国の連中にも、なめられる事になり兼ねませんぞ!」
「せめて、リーダーの小僧だけでも処刑せねば、我々の面子が…」と、意見はいいものでは無かった。
その話を画面越しに聞いていた、ハヤテとトシは。アキに小声で
「アキさん、今です!」
「今が絶好のタイミングだ。真面目な顔で言えよ」
「お、おう」とため息をし、神妙な顔になって咳払いをする。
するとモニターの向こう側にいる、全員がアキに注目する。
「こちらの戦闘能力は、ネクティアの皆さんにも理解して貰ったようなんで、こちらから一つ取引をさせてもらいたい」
「取引…ですか?」とライラが聞き返し、アーリィが「なんでしょうか?」と聞いてくる。
アキは徐にテーブルの上で、腕を組み
「もしもこちらの条件を呑んで貰えるなら、ネクティアの防衛・遠征作戦・周辺警備の一部を引き受けてもいい。勿論ゴードンが出した契約金の半分で」
アキの隣に居るトシとハヤテは、携帯端末・Sa-Jiruを操作しライラの操作する端末に、要求内容を記載した書類データを送る。
送られてきたデータはライラの端末を通し、各幹部達の情報端末に届く。
幹部達の表情は色々で
「待ってくれ!?カイヤナイトで使用している機体全て、第四世代機だと!」
「馬鹿な!11機全てがか」
「予算と材料の調達を考えると、下手な小国の国家予算を超えるぞ」
「だが、それならば…あの戦闘力についても説明がつく」
「第四世代機が11機か……豪気な話だな」
「それに当初の報酬額と契約金を考えると、悪い話ではないな」
「なにを言っている!面子の問題だ!!Dキャンパー達を許したとなれば、他国の連中どころか、コルレットの連中に舐められる」
「そうだ!連中に突き入れる隙を、与える事になるぞ!!!」
「だがそれも、カイヤナイトの戦力が加われば、状況そのものが変わる事になる」
ゴードンが
「落ち着け、皆の者!」と言うが、議論が白熱し過ぎて誰も聞く耳を持たない。
その様をモニター越しから見ているアキ達は
「あと一押しって感じなんだけどねぇ~。他にこちらから出せる物なんて無いよね?」と、ハヤテとトシに聞く。
「これ以上条件を引き下げれば、今度はこっちが損しますよ」
「確かにな。俺達の今後を考えると、金はいくらあっても足りないからなぁ」
「お金以外で何かない?」とアキが聞くが、ハヤテは
「ダイ君の富嶽でも、くれてやります?」と言うと、トシは
「それはそれでダメだ。絶対にアイツ働かなくなる」
「それもそうか」とハヤテが納得する。
「でも発想自体は、悪くない」とトシは言いSa-Jiruを操作すると、ライラに
「このネクティアの東側城壁の外側の森、ここは手付かずの森があるようだが」と聞く
「あぁ、ここですか。東側の森は資源が豊かではありますが、それはつまりキメラにとっても同じな訳で、多種多様なキメラが生息しています。ナイト級も多く居ますのでこちら側は整地すらしていませんし、危険すぎて警備範囲にも入ってもいません」
それを聞いたハヤテ・トシ・アキは「それは」「素晴らしい」「決定だね」とニヤリと笑う。
そしてアキは再び
「それではこうしましょう。報酬を更に削る代わりに、ネクティアの東側の土地を頂きたい」と言い、それに続くようにトシが
「そこに俺達カイヤナイトの拠点を建設する」
その話を聞きネクティアの幹部達は
「東…側を?」
「あそこが欲しいと言うなら…別に止めはしないが……」
そこにアーリィが
「アキ団長、東側の森にはキメラが多数生息しています。大変危険な森です。以前、コルレットの精鋭部隊が、森を開拓する為に大規模キメラ討伐部隊が編成され森に入りましたが、部隊は壊滅的な状態に追い込まれ、開拓案は白紙になりました。この話を聞いても、そこに本当に拠点建設をするつもりなのですか?」
トシ・ハヤテ・アキ達はその話を聞き、寧ろ都合がいいと言った感じで笑うと
「勿論。寧ろ都合がいい」
「確かに名前を売る手間も省ける」
「それにネクティアにとっても、抑止力が増えたと広められるんじゃないかな」
その言葉を聞くとアーリィは
「分かりました。ネクティアの代表として、アキ団長の御取引をお受けします。皆さんもそれでよろしいですね?」とアーリィは幹部達に尋ねる。
その場に居た全員がアーリィの意見に賛同し頷くと、ゴードンが
「全員姫様のお考えに賛同します」と口にする。
その言葉を聞くとアーリィは、ライラの方を向き
「牢に居るDキャンパーの皆さんを、今直ぐに解放して下さい。メグミ中隊長、そちらで拘束しているDキャンパーの皆さんも同様に」と続けた
メグミは
「了解致しました。リンダ!」と言い、リンダは無線を使い兵士達に連絡を入れる。
その横でハヤテもムックに連絡を入れた。
「ムックさん?交渉成立」と伝えた。
※
一方で要塞内の広場で待機していたムック達は、ネクティア側の兵士達とDキャンパー達の間に入り、揉め事を抑えていた。
戦闘中はともかく、それが落ち着いた事でネクティアの兵士達は、戦闘終了後メグミとリンダの指示でDキャンパー達を拘束しようとしていた。
逆にそれに気付いたヴァレリー達は、抵抗しようと暴れていたのを、カイヤナイトのメンバーが間に入り仲介をしていた。
主に拳による仲介を……
「フン!」とムックが気合いを入れた声を出し、ネクティアの兵士が背負い投げされ地面に叩きつけられると「ぐぅふぇ」と声を出して気絶する。
ムックが「次!」と言うと、投げ飛ばされ気絶した仲間を一回見ると
「お、お前行けよ」「俺はパイロットだぞ!お前こそライフル兵として、白兵戦をしていたんだろ。お前が行けよ!!」と弱腰だ。
その反対側ではベンベンとリュウがDキャンパー達を相手に、殴り合いをしている。
ベンベンは相手が殴る直前に躱し、突き出された腕を掴みこちらも背負い投げをし地面に叩き付ける。
倒れたDキャンパーの青年は、起き上がろうとするがそこにリュウが、一度腕を組みながら青年の顔に座り込み、目を”カッ”と開き右腕を高らかに上げながら
「フッシャー!!!」と言うと”ボフ”と鈍い音がし、リュウの尻の下に居る青年は叫びにも似た悲鳴を上げながら、数秒身体をジタバタさせていたが、ピタリと動きを止めた。
ベンベンは他のDキャンパーの青年の首を掴み、そちらの方に向かせ
「お前もああなりたい?」と聞くと、全力で首を振り否定する。
他のメンバーもお互いの兵士達が近づかないように、近づこうとした者を次々と無力化させていた。
「いい加減にしろお前ら!」とカガミは次々と、ネクティアの兵士とDキャンパー達を殴り・蹴飛ばし、無力化させる。
その横で同様にエムジーもネクティアの兵士を殴っていたが
「流石に面倒になってきた……殺っていいか?」
「ダメに決まってるだろ!!!」とカガミがツッコミ返す。
するとネクティアの兵士の1人が
「全員止め!リンダ副隊長からの指示だ!!Dキャンパー達の処遇は、以後カイヤナイトのムック副団長の指示に従え、だそうだ」
ムックの方にもハヤテから連絡が入り
「ヴァレリー君とジョン君を押さえる。他任せたハルさん」と言うが早いか、ムックはヴァレリーとジョンの首根っこを掴み上げる。
2人は猫が持ち上げられるうよに、ムックに持ち上げられた。
カガミ達もネクティアの兵士を相手にするのを止めて、暴れるDキャンパーのみを押さえつけた。
そしてムックは
「Dキャンパーの皆は全員解放!機体に乗って家族の元に帰りなさい。以後両陣営で戦闘があれば、カイヤナイトの俺達が相手をする!!!」
そう言うとムックは手を離し、ヴァレリーとジョンを解放する。
ヴァレリーとジョンは、ムックの方を向き
「本当に…解放してくれるんですか」
「最初からウチの団長が、言ってたでしょ」
「待ってくれ、おっちゃん!ベルナールはどうなる?」
「ベルナール君も、もう解放されているはずだよ。少ないけど手土産も持たせたらしいから、君らの拠点に戻るといいよ」
2人はムックに一礼するとDキャンパー達に指示を出して、機体に乗り込みオータム要塞を出て行く。
その様子を見て、ネクティアの兵士が
「おい!本当にこのまま返す気かよ」「仕方がないだろ、命令だ」
その話を聞いていたベンベンは
「後ろから撃つ気なら構わないが、果たして出来るかお前らに」と言うと、要塞の扉の方を向く。
すると既に機体に搭乗していた、カガミとエムジーの機体が扉の左右に展開していた。
「ウチのエースと弟子相手に、お前ら何分持つかな」とわざとらしい聞く。
するとネクティアの兵士は苦虫を嚙み潰したような顔で
「旦那方を相手に、やり合うのはごめんですよ」
「俺達じゃ勝ち目が無いの分かって、聞いてきてるでしょ。勘弁して下さいよ」と返した。
※
同時刻のネクティア
ベルナールとDキャンパー達一行は、ネクティアの兵士に連れられて牢獄から出され、西門前まで連れて行かれる。
到達すると全員の手錠がはずされる。
「おい、どう言うことだよ」とベルナールがネクティアの兵士に乱暴に聞く。
するとゴードンの部下ジョセフが他の兵士達の後ろから歩いてきて
「お前ら全員釈放だ。姫様とあの団長達に感謝するんだな」
「団長?……あの傭兵部隊の連中か!?まさか本当に約束を守ってくれたのか」
※
オータム要塞攻略前日、まだネクティアの牢獄に入っていた時の事だ。
牢屋にアキ・カガミ・ベンベンが来た。
ベルナールは牢の鉄格子を両手で掴み、歩いて近づいてくるアキ達に話しかける。
「なぁ!アンタ等本当にネクティアの兵士じゃないのか!?だったら頼む!俺以外の連中だけでも、助けて貰えるように言ってくれないか。金なら逃げた連中が多少持っているはずだ。頼む!アンタ等傭兵なんだろ?正式に依頼するからよ」と必死だ。
他の牢屋からは「何言ってんだよベルナール!」「お前はどうなるんだよ!?」「助かる時は一緒にって、言っただろ!!!」
他にも色々とDキャンパー達が騒ぎだす。
カガミは牢屋全体に聞こえるように
「落ち着け。まずは俺達の話を聞けよ」
するとベルナールが「分かった、話を聞くよ。みんな!」と一言口にすると、噓みたいに牢屋は静まり返った。
そしてアキは、ベルナールの牢に近づき
「まずは初めまして…でいいのかな。俺は……そうだな、カイヤナイトって傭兵部隊の一応団長をやらせてもらっている、アキだ。
君たちに幾つか聞きたい事がある。その回答次第では、君たちを助けるよう尽力しよう」
そしてアキはいくつか気になった事を聞き出した。
なぜ今回戦力不足と予想される戦力で、ネクティアを強襲したのか。
ネクティアの防衛戦力が減っていると、何処で情報を手に入れたいのか。
その情報主は、いったい誰なのかと。
ある程度聞き終えると
「情報主のパトロンの事は一切分からず、何処の勢力すら予想がつかない…か」
難しい顔になるアキを見てベルナールは
「なぁ、俺達が分かる事は全て話した!頼むよ!!」
必死なベルナールにベンベンは
「と言ってもな。お前らを操ってた連中の情報が一切無いとなると、ネクティア側の連中が納得する訳ないしな」
それを聞いたベルナールは「そんなぁ」と項垂れながら膝をつく。
他のDキャンパー達もショックを隠せないようだった。
その様子を見ていられないといった顔でカガミは、ベンベンとアキを見る。
「そんな顔でこっち見るなよ、カガミン。俺達だって何も意地悪くして言ってる訳じゃない」
「う~ん、参ったね。少しでも情報があればいいんだけど」とアキ達は悩む。
カガミも、もう助けられないのかと悩みながら
(せめてその情報主の一人でも捕まえられていれば……、捕まえていれば!?)と何か閃く。
「なぁ、ベルナール。その情報主の連中とは、逃げた要塞で合流する予定とかないのか?」
「そもそもネクティア強襲作戦に参加すらしなかった連中だぜ。少なからず雇い主はもう逃げてるだろ」とベルナールは諦めたように言い返す。
それを聞いたベンベンは
「合流予定があったなら、その雇い主の部下達はまだ要塞に居るかもしれないな。…アキさん!」
「そうだね、希望はゼロではないようだ」
ベンベンはSa-Jiruを操作し、トシに連絡をする。
そしてアキはベルナールに
「俺達に出来る事はしよう、だから大人しくここで待っていてくれ。ベルナール君」
※
そんなやり取りがあったのを思い出していた。
そんな事を思い出していると、城塞内の居住区の方から1台の軍用車両が向かってくる。
運転は少年兵がし、その隣には老兵が1人が座っている。
車両は止まり車両から降りてきた老兵はカバンを持ち、ベルナール達の方に近づいてくる。
それに気付いたジョセフが
「ホブジ防衛班隊長」と言い敬礼する。
その老兵はネクティアに着いて時に、アキ達をアーリィの屋敷まで案内した人物だった。
「伍長、お飾りの隊長に敬礼は不要だ」と笑って返す。
「いえ、決してその様な事は!」と続けようとしたが
「すまない伍長。先にこちらの要件をすませたい」と言い、カバンをベルナールの方に投げた。
「これは?」とベルナールが聞き返すと
「坊主!本当に姫様とアキの旦那方に感謝しろよ。処刑を免れたのは、あの方々が尽力してくれたからだ。それとアキの旦那から伝言を預かっている」
「伝言?」
「敵兵を捕らえる事は出来なかったすまない。それは違約金だ…だそうだ」
ベルナールはカバンを開き中を覗くと、そこにはカバン一杯に金が入っていた。
「違約金って…俺達まともな契約すらしてねーじゃん。……いいのかよ」と呟く。
「さぁ!もうここには用がないはずだ。外に1台車を用意させている、姫様からだ。それを使うといい」
ベルナール達はそれを聞き終えると何かを言いかけたが、口に出すのは止めて無言で城塞の扉から出ていった。
※
その日の夕方
オータム要塞にネクティアの兵士を何人か残して、スカル・スケジュール隊と共にカガミ達もネクティアに戻った。
機体を格納庫のハンガーに入れ、機体から降りるとゴードンが出迎えに来ていた。
「よくぞ成し遂げてくれた!アキ団長」
「あぁ、どうも。悪いけど皆疲れていてね。休ませて貰えると助かるんだけど」
「そうだな、姫様から屋敷の個室を人数分使っていいと、許可を得ている。送ろう」
そこにトシが
「高級ホテルとかでもいいんだぞ」と冗談まじりに言ったが、ゴードンは
「恐らくそこでは休めんだろ」と返した。
なぜそう言われたのか、それは格納庫を出てすぐに理解した。
格納庫の扉を開けると、大量のカメラのフラッシュを浴びる。
そして何人かの人間が近寄ってくると
「NKT通信です!カイヤナイト傭兵団のアキ団長ですね?!今回の作戦はお見事でした。何か一言頂けますか!!」
「おはよう新聞です。今後カイヤナイト傭兵団が、ネクティアの防衛の一部を担うとお聞きしましたが、その件について教えて頂けますでしょうか!」
「ブルーノTVです!こちらに視線頂けますか!」
記者団の人間が次々と押し寄せる。
ムックが前に出て
「ちょっと落ち着いて…」と記者達を抑えようとするが……
「副団長のムック副団長ですね?!ヒプロTVです。オータム要塞奪還後、防衛の陣頭指揮を取りキメラを撃退したとお伺いしました。どういった作戦だったのでしょうか?」
「いや、陣頭指揮なんて取ってな……」
「私はネクティアWest地区の市長フェニ・ミランです」と言い急にムックに握手をし、そのまま肩に手をのせ親しい友人のように、カメラに笑顔を向ける。
終始ムックは引きつった笑顔で記者達に対応している。
それを一歩後ろに居るアキは、隣にいるゴードンに困った顔で
「カメラは無しの約束だ」と言ったが、ゴードンは悪びれる様子も無く、寧ろ誇らしげに
「そもそもオータム要塞での戦闘の一部は、テレビで報道されていたのだ。隠す事も出来まい。それにここ最近では、1番のいいニュースだ」
「それでも困る」
「そう言うな、アキ殿。今この国は戦力不足で国民全体に不安が広がっていた。そこに貴殿等の活躍する姿を見れば、国民も期待する。今この国には、姫様と共に歩む英雄が必要なのだ」と返す。
それを聞きアキは諦めたように、ため息をすると再び記者団に囲まれる。
他のメンバーも記者に囲まれ同じ状況だ。
カガミも記者に囲まれ身動きが出来ない状態だったが、離れた所でカイヤナイトメンバーの紹介している記者がカガミの方にカメラを向けながら
「今映っているパイロットの方が、緋色の破壊騎士と国民に呼ばれるカガミさんです」と紹介されていたのだ。
それを聞いたカガミは「はぁー!!!」とついつい大声で驚く。
それもそうだ、今まで一度たりともそんな呼び名で呼ばれた事などないからだ。
「なんか勝手に変な名前付けられた!」と記者に文句を言おとするが、隣にいるベンベンに
「おう!さすが緋色の破壊騎士様。モテるね!」と揶揄ってくる。
「ベンベンさんバカにしてるでしょ!」
「そんな事ないぞ、緋色の破壊騎士殿」
ベンベンはニヤニヤとしていたが、予想外の所から揶揄った代償が支払われる。
それは先程からカガミの紹介をしていたアナウンサーからだった。
「フォルストレザールを倒した、緋色の破壊騎士ことカガミさんの御師匠様でもある、戦槌の蛮族爪の呼び名で広まりつつあるベンベンさんをご紹介します」
その言葉を聞いたカガミとベンベンは『はぇ!?』と間抜けな声を出す。
「只今出ている映像を見て頂ければお分かりの通り、師弟での連携でナイト級キメラを見事に撃退する様子が…」
恐らくテレビ放送ではオータム要塞での映像が映っているらしく、イヅナと秋水の戦闘の映像が出ているらしい。
カガミは死んだ目をしながら、棒読みで
「さすがです、戦槌の蛮族爪さん。いや~、凄い人気ですね、戦槌の蛮族爪さん。弟子として鼻が高いですわ~、戦槌の蛮族爪さん」
「カガミン!コンノヤロ~!!」
アナウンサーは未だにカガミとベンベンの紹介をしており、再びカメラを向けられる。
『これ以上、中二病名を広げないでー!!!』と2人はカメラから逃げた。




