共闘
「はぁ……ぐっ……」
よろめきながらもシオンは立ち上がる。
蹴られた腹が鈍く痛む。 咄嗟に取った受身により致命傷は避けられたが、明日になれば大きな痣になるだろう。明日を迎えられれば。
「まだ立てんじゃねえか……安心したぜ。」
「お前、こないだの狼の奴か……ずいぶんとイメチェンしたな」
「おう……ロムルスってんだ、お前より……強いぜ。ハァ……」
シオンを助けた紺の戦士、ロムルスは既に満身創痍だ。
シオンはもともとのダメージが比較的少ないため、だいぶ回復してきているが、どうやら彼はそうではないようだ。
「やれんのか?」
「あ……?当たり前だろ……」
ふらつく足で地面を踏みしめ、ロムルスは構える。
「あいつ、こないだの女の子だよな?」
「ああ……間違いねぇ……」
「ならやることは決まりだ!二人であいつ倒して、あの子を取り戻す!」
「ああ……!」
緑と紺の戦士は並び立ち、構える。
銀の怪人が不気味な笑みをうかべながらゆらりと立ち上がり、その体からぼろぼろと灰色に変わった皮が剥がれ落ちた。
「アハハハハハハ!」
笑い声が曇り空に響く。
それを合図にしたかのように、シオンとロムルスは駆ける。
「「はあっ!」」
即席コンビにしては息のあった両方からの蹴りを、銀の怪人は受け止める。
「効カナイ、ネェ!」
怪物は銀の腕で、2つの足をはねのけた。
続く突き、肘打ち、そして蹴り。2方向から繰り出されるそれを、怪人は全て捌き切る。
「クソ……効いてねぇ……」「でも反撃する余裕はないみたいだな!これなら!」
シオンとロムルスは息もつかさず攻撃を続け、時折隙を見つけたシオンが怪物の腕を掴み、ふわりと投げ飛ばし地面に叩きつける。
「どうだぁ!」
「アハ……ハ?」
少しずつ怪人の動きが鈍っていく。少なからずダメージが蓄積しているようだ。
「おいイモムシぃ!なんかないのか、必殺技とか!」
「データ不足とかで出ないんだよ!手を止めるな!」
勝負を決めようと焦れるロムルスにシオンは答える。
が、たしかにこのままではまた銀の怪物は脱皮し、逆転されることは想像に難くない。
シオンにもロムルスにも、キキのように力押しで倒せるほどの強さがない。
──どうする?押し切るのはおそらく不可能……かと言って武器を使えば多分中の子が大怪我だ。それは避けたい。
焦りがシオンの注意を奪い──気がついたときには遅かった──怪物の反撃の拳が、シオンに迫る。
「しまっ──」
衝撃音が響き、割れた装甲が散らばった。