銀と紺
「アハハハハハハ!スゴイ!スゴイネ!」
不気味に笑いながら、銀の怪人は腕を、足を無茶苦茶に振るう。
その全てが重く、速い。
──かわし続けるのにも限界があるな……
ほんのわずかずつではあるが、相手の攻撃は鋭く、より的確になってきている。
このままでは一撃食らって……食らい続けて死ぬ。
「サテライト!来れないのか?一人じゃきつい!」
『絶賛修理中だよ、あと二時間はそっちに行けない!』
「ああもう!なら仕方ない!ぶっつけ本番で!」
シオンは銀の怪人が突き出した拳を巻き込むように掴む。
「せえいっ!」
付け焼き刃の柔術が、怪人を攻撃の勢いのまま地面に叩きつける。
地面が砕け、怪人は土にめり込む。
「よし!」
「アッハハハハハハハハハ!」
怪人はバネじかけの人形のように跳ね上がり、少し離れた地面に着地する。
「効いてない……か?」
「アハハハハハハハ!」
怪人は不気味に笑い、シオンに突進する。
「甘いっ!」
シオンはその手を掴み、足を引っ掛け──投げる。
怪物はシオンを中心に円弧を描き、地面に叩きつけられる。
そして再びバネのように飛び上がり、着地する。
「クソ、やっぱ効いてないな……」
──このまま投げ続ければひょっとすればダメージが通るか?いや、しかし……
不慣れなこの技は、思いの外集中力が必要だ。
繰り返しているうちに集中力が切れれば……
──こんな不確実な手段に、命かけてたまるか。なんか他の手を……
シオンはチェンジャーに収納されたウェポンギアのことを思い出す。
あれを使えばいくらか有利に立ち回れるかもしれない。が。
──嫌なことを思い出した。これはまだ……使うべき時じゃない。
数日前にシルバーマナと戦ったときの血溜まりが、血に染まった髪が、痛みに漏らす声がシオンの脳裏に蘇る。
──なら、どうする?不利な賭けに命を捧げるか?
答えは出ない。シオンは突進する銀の怪人をいなし──いや。
「しまっ──」
速すぎる。さっきより、ずっと。
乱雑ながら重く鋭い蹴りがかわしそこねたシオンの腹部に直撃し、装甲がビシビシと音を立てひび割れる。
シオンはそのまま吹き飛ばされ、地面を転がった。
「ぐうっ……」
「アッハハハハハハハハハハハハ!」
銀の怪人は笑い、トドメとばかりに突進する。
──終わりか。
諦めかけたシオンの視界に紺色の影が現れ、銀の怪人を蹴っ飛ばす。
不意を突かれた怪人はバランスを崩し、地面に倒れる。
「諦めんのか、イモムシぃ!」
どこかで聞いた声が、シオンに叫んだ。




