予兆
翌朝。朝のジョギング帰りのシオンと、コンビニで朝食の菓子パンを買って帰る途中の蒼はばったりと出くわした。
「あれ、お前まさか……」
「ああ、お前か。明るいとこで顔見んのは初めてだな、イモムシ。」
シオンは少し躊躇いながらポケットからチェンジャーを取り出す。
「まあ待て、イモムシ。お前に言っておきたいことが二つある。それに明るいうちから戦うと目立つだろ。それは俺らにとってもいいことじゃない。」
「……」
シオンはチェンジャーを持った手を下ろす。
「まず一つ目。昨日のあいつは、タ……じゃない、シルバーマナは元気だよ。まだしばらくは安静だがな。二つ目。お前に会ったらお礼の一つでも伝えとけとさ。」
「……本当か?」
「こんなんで嘘ついてどうすんだよ。じゃ、またな。」
蒼はシオンの横を通り過ぎ、帰ろうとする。
「待て!」
「待ってどうすんだよ。お茶でもすんのか?また夜にでも会ったらそのときに勝負しようぜ。」
「くっ……」
シオンは追ってこない。
──さて、伝えることは伝えたし……
と、突然曇った空が光る。
「なんだ……?雷……じゃないな。隕石?」
空には尾を引きながら地面に突き進む物体。
そのまま山の斜面に吸い込まれるように接触し……音もなく消えた。
「なんだったんだ……?」
まあいいか、と蒼はまた歩き始めた。
「なんだあれ?」
同じく帰宅途中のシオンもその光を見ていた。
『あれは……こんなに早く来るなんて……』
チェンジャーから聞こえる、少しの焦りを感じさせるさてらいとの声。
「知り合いか?」
『関わり合いにもなりたくないんだけどね。早いうちに処理したほうがいい。』
「ふーん。じゃあ行って処理なり処分を……」
『一人じゃ無理だ。せめてキキにだけでも応援を……』
「大丈夫大丈夫!行くぞ!」
『やめときなよ。ほんとに』
シオンはさてらいとの忠告も聞かず、足早に山へと向かった。
「で、私有地につき立入禁止、と。まあいっか。変身。」
光る物体が落下した山。ジュピターに変身したシオンは立入禁止の看板を無視して山に分け入る。
数分後、シオンは木々に囲まれた地面の上には自分の背丈ほどはある銀色の卵のようなものが鎮座し、呼吸するように脈打っているのを見つけた。。
それはときおりぶるぶると震え、そのたびに少しずつその大きさを増していった。
「なにこれ?」
『気をつけて、来る』
銀色の卵の動きが止まり、ぴきぴきと表面にひびが入る。
数秒の後、バリッと殻を突き破り何かが這い出る。
「なんだあれ……」
シオンの背丈の倍はあろうか、おおよそこの世のものとは思えない醜悪な姿容の……怪物?
浮腫んだような桃灰色の全身に、全身に生えた細かな棘。
地面を踏みしめる十本余りのひょろ長い足には、鋭く尖った爪が3本生えている。
顔と思しき部分には乱杭歯と五つの濁った目。
その全てが、ぎろりとシオンを見た。