病室
薬品の匂いが漂う病室。タタラは目を覚ます。
「ああ、気がついたか。よかった。」
少しバツが悪そうに、ベッドの横に座る蒼が言った。
「私……死んだと思ってた。助けてくれたの?ありがとう」
「いや……俺はただ……あいつに言われたままに……」
と、蒼は苦々しげに呟く。
「あいつ?」
「……あの緑のヒーローだ。」
「そう。じゃあ私を助けてくれたのはあなたとそのヒーローなのね。ちょっと素敵。もし今度彼に会ったら、お礼の一つも言っておいて。ありがとうって。」
「急にどうしたんだよ、シルバーマナ。なんかいつもと感じが違って調子が狂う……」
と、蒼は頭を掻く。
「ちょっと素直になっただけよ。私、ずっと前からあなたとこうやってお話してみたかった。いつも皮肉屋だったけど。あなた……まだ名前も聞けてなかったのね、私。教えて?」
「蒼だ。千疋蒼。」
「そう。千疋蒼。蒼って呼ぶわね。だからあなたも私のことタタラって呼んでね。」
「あ……ああ……わかった」
──こんな顔、する奴だったんだな。
蒼はベッドに横たわったまま微笑むタタラを見る。
「ねえ、蒼。私また眠くなってきちゃった。寝るまで手、握ってて。」
蒼は差し出された手をそっと握る。小さく、柔らかな手を。
「ふふ、暖かい。占いなんかに頼らなきゃ良かった。最初からこうやってしてたら……私達、もっと早くお友達になれてたね」
「……ああ」
程なくしてタタラはすやすやと寝息を立て始めた。
「さて、どうするかな」
蒼はポケットから装置を取り出し、眺める。
新たな試作品。娘を助けてくれたお礼になればいいが、とこの組織の首魁であるタタラの父から手渡されたものだ。
──建前にしてもお粗末だよな。扱いやすいモルモットとでも思われてんだろう。
だが、蒼にとってそれは好都合だ。この装置が……チェンジャーがあれば、ジュピターと対等か、それ以上に戦える。
次に奴と会ったら……今度こそ。
「つってもなぁ。」
蒼は目の前ですやすやと眠るタタラを眺める。
怪人由来の再生医療で傷はほぼ完治したとはいえ、肝の座りようが半端ではない。
「お礼言っといて、かあ。言うとして、そっから殺し合いってしまんないにも程があるだろ。」
仕方ない。アイツをどうするかは、会ってから決めよう。
蒼はそう決めると、タタラの手を離し病室を後にした。




