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蕎麦

 「うちの商店街も有名になったもんだなー……なあ兄ちゃん」

蕎麦をすする手を止め、鼠島が呟く。

TVの画面には、ニュースのご当地情報のコーナーでインタビューを受ける孔雀の怪人。

画面の右上には[ 伊那星いなぼし商店街にご当地ヒーロー誕生!?]の文字。何故かインタビューを受けているのは怪人の方だが。

跡形もなく消し飛んだように見えた彼はショーが終わったあと店の奥からしれっと出てきていた。あの時シオンが放ったのは何らかの偽装ができる必殺技だったようだ。

「蕎麦処「鳳凰」!是非食べに来てね!」

と画面に映る怪人がポーズを決めると、画面はスタジオに戻った。

「あれ、兄ちゃんの友達か?」

「近からず遠からずだな」

シオンは蕎麦をすする。ピーコックの中身である蕎麦屋の店主から帰り際、ショーのお礼にと大量にもらった蕎麦。

一人ではまず消費しきれない上、何故こんなにそばが余るのかと問われると答えに詰まるので事情のわかる鼠島の部屋で二人蕎麦大食い大会を繰り広げるしかなかったのだ。

キキも誘おうとしたがさてらいと曰く会議が長引いていて行けないらしい。社会人は大変だなと考えながら、シオンは蕎麦を咀嚼もせず胃に流し込む。

つるりとした歯ざわりと、確かなコシ。蕎麦の香りも良く、つゆも良い出汁を使っている。が。

「食っても食ってもなくなんねえな、蕎麦」

「そうだな」

本当に大量だ。今日中に全消費は確実に不可能なほど。

蕎麦湯はシオンの好物だが、飲む余裕すらない。

「こういう落語があったような気がするんだよなぁ。最後は蕎麦が羽織を着てたんだっけかな」

「怖い話をするな」

シオンはまた蕎麦をすする。


 「あー……もう……何も食えねぇ……」

「とうぶん蕎麦は見たくない……」

一時間後。もらった蕎麦の半分ほどの量を消費しきった二人は満身創痍だった。

「運動……激しいのは無理だな」

「そうだな、散歩でもしようや」

と、二人は外に出て夜風を浴びる。

少し暖かくなってきた空気が、新たな季節の訪れを感じさせた。

「歩くと耳から蕎麦が出そうじゃ……」

「急に年寄りみたいになるな。こっちも2歩ごとに休憩が必用だ……」

しばらく蕎麦は食べる気がしない、が。

「あとどんなもん残ってたっけ?」

「持ってきた三分の一は消費したはず……げふっ」

まだ先は長い。明日はキキも誘わなくてはとシオンは心に決めた。


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