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強盗

 二人は腹がこなれるまで散歩を続け、帰りついた頃には深夜近くになっていた。

「兄ちゃん、こんなに蕎麦もらっても食いきれないって。」

「お前のほうが量食えそうだろ。ハゲにも効くぞ。」

「うるせぇ、ハゲはちょっとずつ治ってきてんだよ」

残った生蕎麦の押し付け合いの後帰宅。半分ぐらいずつにしたのであと一日かニ日もすれば食べ切れるはずだ。

「あー、もうちょい歩いてくるか……」

自室に帰ったシオンは一人、再び外に出た。

分厚い雲の僅かな切れ間から、綺麗な満月が空に浮かんでいる。

「月が綺麗ですね……とか言うんだっけか。こういうとき」

死んでもいいわなんて返してくれる人はいないが。

「アホなこと考えてないでコンビニ行こ。」

シオンは食器棚に入れたマスクの箱から一枚とり、つける。

ついでに貰った商品券のおかげでしばらく食材には困らなさそうなので、たまには無駄遣いをしてもいいかもしれないな、とシオンは小銭がジャリジャリと音を立てる財布の感触を確かめながら考えた。


 コンビニ。かつてやらかした元職場ではあるが、シオンにはもうそんなに気にならなかった。

店員の方が気にするかもしれないとは思ったが、こちらは客だ、マスクもしているし問題あるまいと彼は判断した。

──へー、今のヒーローってこんなんなのか。

シオンは食玩のプラスチック人形の箱を手にとってまじまじと眺める。……タガメファイターという名前らしい。

シオンの変身するジュピターよりカッコいいような、いやそんなことはない。絶対にない。

──一個くらい買ってくか。

シオンは箱をカゴに放り込み、飲み物を漁りに行く。

「オラァ強盗だぁ!金出せ!」

突然、背後のレジの方で物騒な声が聞こえてシオンは立ち止まった。

振り返るとフルフェイスのヘルメットを被った男が、ナイフを店員に突き付け、レジの金を出せとせまっている。

黒衣の男……ではなさそうだ。ヘルメットからして銀色だし。

「うわ、めんどくさ。」

──食玩買えねぇじゃん。

「お前、ちょ、ちょっと来い!警察呼んだりしたらこいつの命はねえからな!」「え?何?嫌!離して!」

強盗は手近にいた若い女を人質に取った。

見た感じ武器はナイフ一本のみ。いけそうだ。

シオンは足音を立てないよう強盗の背後から近づき、ナイフを持った手首をひねり上げた。

「ぐっ!?……な、なんだお前!?」

ヘルメットをかぶっていてもでもわかるほど、強盗が動揺する。

「買い物客だ。」

腕を背中の方へひねり上げられた強盗が取り落したナイフをシオンが蹴り飛ばすと、それは店の端まで滑っていった。

「もう武器はない。人質を離せ。」

シオンはひねり上げる手に力を込める。

「ああああぁ!わかった!わかったから!」

強盗は手を離し、開放された女性はその場にぺたりと座り込んだ。

「店員さん、ビニール紐あります?」

あっけに取られる店員にシオンは強盗の腕をひねり上げたまま尋ねる。

「あ、は、はい!」

差し出されたのは黄色いビニール紐。雑誌を縛るのによく使ってたなとシオンは思い出した。

「じゃあ……」

とシオンは強盗の両腕を掴んでぎりぎりと地面に引き倒し、両手を無理矢理後ろに回させる。

「ぐうぅ……」

「これ。ぐるぐる巻きに。」

「は、はい!」

シオンは店員の協力で強盗の手足を完全に拘束し、何事もなかったかのように会計を済ませて店を出た。

──警察が来ると事情聴取とか厄介そうだしな。

毎日のように怪人と戦っていたのもあり、全く恐怖はなかった。

店員はひたすらあっけに取られていたが。

──この辺も治安悪くなったよな。

と、シオンは曇り空を眺めながらため息をついた。







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