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空中戦

 「おお……捕食した怪人の特性を受け継ぐとは。素晴らしい。大事な部下を一人失っただけの価値があったよ──さて。」

上空数十メートルに浮かび、満足気に呟いたフレイムボルトの両掌にバレーボール大の光り輝く球体が生み出される。右手の球体はバチバチと雷のように弾け、左手の球体は轟々と燃え盛る炎。

「君は興味深い実験体だ──持ち帰るのは難しそうだが、手土産に腕の一本でも頂いていこうかね!」

フレイムボルトは両腕を交差させ、投げる。螺旋の軌跡を描いた二つの球体は地面に着弾し、焼け焦げた跡を刻む──が。

「いない……?」

そこに悪魔のような怪物の姿はなかった。僅かな土煙だけが風に舞い、霧散していく──突如風を切る音がフレイムボルトの耳に届いた。

「上か!」

フレイムボルトは火球を放ち、反動で数十センチ空中にいる自分の位置をずらす──その目と鼻の先を、真っ黒な影が突風を巻き起こしながら落下していった。

「危ないところだったねぇ……」

怪物は地響きと土煙を上げ、地面に着地──同時にフレイムボルトめがけ跳躍する。

「なっ!?」

反応が遅れたフレイムボルトの胴に、蝸牛の殻のような形をした2つの角がめり込む。

「がっ……この高度まで跳躍……とは!だが!」

フレイムボルトはその長い腕で自由落下に入った怪物の角を掴み、掲げ持つ。

「こうなれば──私の勝利だ!」

角を掴んだのは右手。左手は──その掌に炎の球体が燃え盛る。

「これで幕引きとしようか、怜央?」

フレイムボルトは左手を振りかぶる。怪物はじたばたと足をもがかせ──思いついたかのように羽ばたく。

その風圧が、角を掴む握力を凌駕した。

耐えきれず、フレイムボルトの指が角から離れる。同時に蹄による蹴りがその異国の仮面のような頭部を蹴り飛ばし──ひび割れさせた。集中の途切れたフレイムボルトの左手から炎の球が消える。

「ぐうっ……」

怪物は回転し、体勢を崩したフレイムボルトに勢いを載せた踵落としを叩き込む。

ドオン、とトラックが衝突したような音を立て、フレイムボルトは地面に落下した──奇しくも、そのすぐそばに夜雲の遺したサンプルがあった。

「今日は──このあたりにしておこうかね。また会おう、怜央」

パリリッ、と微かに静電気のような音を立て、フレイムボルトはサンプルごと消えた。

「ウウアアアアァ……怪人ハ……スベテ……殲滅スル……」

獲物を見失った怪物は呻き独り言のように吐き出すと、彼もまた夜の闇に消えていった。



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