表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/245

深夜

 倉庫の奥、隠し部屋の研究室。フレイムボルトだった男は──火口かぐち 雷斗らいとはキーボードを叩いていた。机の上には回収したサンプル。

「素晴らしい……素晴らしいね、これは。夜雲、君は本当に素晴らしい部下だったよ。素敵な置き土産をありがとう」

雷斗は薄い唇の端を歪ませる。夜雲の遺した新たな理論に基づく、「フェイスレス」システム──ウプイリのように怪人から変身する、ヒーローと似た姿の兵士だ──の強化案。ヴォイド細胞の混じった土──何故か人間の細胞が混じっているが──そしてヴォイドの殻の破片。

「これで、新たなるフェイスレスを作り出すことができる……私は──人類は、さらなる進化に近づくことができるだろうね。」

キーボードを打ちながら、熱にうかされたように雷斗は呟く。

彼の切れ長の目の虹彩は、モニターの光を反射して銀色に輝いていた。


 隙間風が吹き込む臨時病室。ベッドで寝息を立てるシオンの傍ら、出張から戻ったキキは座っていた。

「あたしがいない間に、随分といろいろあったんだな、シオン。ちょっと男らしい顔つきになったじゃねえか。」

当然ながら、シオンの反応はない。心電図の音だけが部屋に響いている。

「あたしがもっと早く仕事切り上げてたら、出張断ってたら、こんなことになってなかったのかな。」

昨日シオンが意識不明だとさてらいとからメールで知らされたとき、キキの頭は真っ白になっていた。

そのまま無理を言って出張を切り上げ、大急ぎで戻ってきた。何ができるわけでもないのに。もう遅いのに。

──トオルのときもそうだった。いつもあたしは、一緒にいる仲間を守れない。ずっと一緒にいれば……


「いや──それじゃだめか。あたしにだって何があるかわかんないんだ。いつまでもおんぶにだっこしてやってるんじゃ──ほんとに大事なとき、あたしがそばにいないとき、自分の身すら守れなくなる。だから──」

キキは言葉を切る。

「いや。違うな。これはあたしの言い訳だ。もっとまじめにお前に稽古つけてれば。もっといろいろ教えてやってれば──」

答えは無い。求めても、はなからそんなものは存在しなかった。

「ダメだな、もしもなんて思っても意味ないのに。はあ、トオルが仕事辞めたってのも正解だったのかもな。あいつと違ってあたしは自分の周りの世界を、日常を捨てられなかった──なぁ、シオン。起きたら、またあの夜景見に行こうな。」

そう言うと、キキは椅子から降り、膝をついてシオンが眠るベッドに突っ伏す。

程なくして、寝息は2つになった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ