13話
──P510329の深層意識に不可アクセスを開始
──P510329の精神汚染度を強制的にランクアップ
──意識の混濁を確認。不可アクセスを継続して観察
なんだかいろんな人が見てくれてますねー。ついでに誤字脱字の報告はありがたいんですけど、感想もくださったりブクマとかお気に入りしてくれると嬉しいのでよろしくお願いします!
〜ヒビキ視点〜
『チャージ完了まで7分』
「GAaaaaaaaa──!!」
「グゥッ!」
押しつぶすように前足の振り下ろし攻撃を全力で横に飛んで避ける。
けれど、地面にその前足が落ちた時に発生する衝撃波と砕けた地面の欠片がビシバシと体のあちこちにあたり、HPが削れると同時に走る不快感に苦悶の声を漏らす。
けれど、それを無視して目の前にある手首部分にジャッジメントの刃で切りつけた。
その黒い帯で巻かれた表皮を切る事に、傷口から黒い液体が飛び散り地面や木の表面に付着する。
「OAaaaaaaa──!!」
ラグラー吠えると、その飛び散った液体が小さく蠕動する。
「やばッ!?」
それを見た私は直ぐに攻撃の手を止め、その場所から離れる。
それと同時に、いたるところにある液体から刺が私目がけて飛んできた。
「チィ!」
側転やらバク転、マトリックスのような上体を逸らしで体操選手もビックリな動きで次々と迫り来る棘をかわして行く。
「GYAaaaaaaa──!」
無論、それを見逃すラグラーガではなく背中の脊髄をたわませ私を串刺しをしようとしたが、突如飛来してきた矢がその背中に突き刺さり、続けて大爆発を起こす。
「SYAaaaaaaaaa──!?」
突然の攻撃にラグラーガは驚き、思わず攻撃の手を止めてあたりを索敵するがどこにもその攻撃を行った者を見つけることが出来ない。
そして、今度はその目に当たる口が爆発した。
「ナイス狙撃桜子」
『まっかせんしゃーい。小さい頃から弓だけはお兄ちゃんに負けたことがないからね〜』
ドカン、ドカン、とさらに続けてラグラーガのあちこちで爆発が起こり、その度にラグラーガは周囲を探す。
「私を無視するなんて余裕だね!」
「CAaaaaaaaa──!?」
指を複数本まとめてぶった切ってやり、ラグラーガの悲鳴に口元を歪める。
──そうだ、もっと鳴いて魅せろ。私を楽しませろ!
「ちがうっ!黙ってろ!!」
本能を無理やり黙らせ、当たりそうだった脊髄を上体を少し逸らして避け、その関節部にジャッジメントを突き入れ、グリグリと捻じり半ばから断ち切ることに成功する。
「SYAaaaaaaaa──!!?」
切られた脊髄は地面に落ちると、少しの間ビチビチと跳ねてラグラーガは悲鳴をあげ暴れ回る。
そして、たまたま尻尾のなぎ払いが当たってしまい、体が変な方にひんまがって内側から変な音が聞こえてきた。
勢いよく吹っ飛び、軌道上にあった大木に思い切りぶち当たる。
「ガフッ!?」
喉奥から変なものがせり上がり、堪らず吐き出すと口の中に鉄の味が広がっていく。
痛みの代わりの例えようのない不快感に顔を顰めつつ、ジャッジメントを杖替わりに立ち上がる。
尻尾にぶち当たる瞬間にガントレットを間に挟んだおかげでHPは2割くらい残ったが、おかげでガントレットが思い切りひしゃげており、完全に修復不可能というのがわかってしまう。
「クソッタレ……高かったのにッ」
愚痴りながらポーションをがぶ飲みし、一定時間回復効果のある緑光草をいくつも貪ることでHPを八割くらいまで回復させた。
『チャージ完了まで6分』
これだけやってもまだ1分。あまりの長さに軽く愕然としそうになるが、なんとか気を持ち直して口の中に溜まっていた血を吐き出す。
本当にこのゲームリアルで、まるで現実の体に痛覚だけを切り取って異世界に居るような感覚だ。
まぁ、陽の光に悩まないで済むから構わないけど。
『マスター。思考がズレているわ。集中して』
「ごめんジャッジメント」
尖兵と戦い始めた時から妙に思考がおかしい。
なんというか……引っ張られるのだ。血を見ると残虐で幼い方向だったり、かと思ったら間の抜けた感じになったりと、なかなかにやべーですね。
危うく首をチョンパしそうだった脊髄をかわし、噛み砕こうとしてきた顎を黒騎士の剣をつっかえ棒のようにして防ぎ、ついでに口の内部をジャッジメントで切り刻む。
「………アレ?」
やばいな、ほぼ体が無意識にやってたよ……
というかさっきからあたりの景色がスローだったりものすごく早かったり安定もしていない。
不味いなぁ
「っぶな!?」
反射的にジャッジメントを交差させ、ラグラーガの振り下ろされそうになっていたパンチを防ぐことに成功する。
『マスター!』
その攻撃により大きく態勢の崩れてしまった私は、次のラグラーガの攻撃に反応することが出来ず、その大きな口に咥えられ、そして……噛み砕かれた。
その日、私は初めてこの世界で死んだ。
《現実世界・神奈月響視点》
「死んだー……」
ヘットギアを外し、開口一番私はそんなことを漏らす。
「あーあー、負けちゃったなー」
手足を投げ出し、目を腕で覆って思いをめぐらせる。
「………………悔しいなぁ」
初めて負けた。
しかも自分の不注意で。
精一杯頑張って負けたって言うのならまだ、なんとか、ギリギリというかすごーく悔しいけど許せる。
だけど、ラグラーガに負けた原因は自分の間の抜けた事だ。十中八九私が原因。
「ッ………!」
端正な顔を歪め、唇を噛んで泣きそうになるのを我慢する。
そうしていると、私の部屋の扉が外からコツコツ……とノック音が聞こえた。
『お嬢様、夕食の時間です』
沙知さんの声が聞こえ、腕を少しだけずらして壁にかけられた扉を見てみると、時刻は午後の7時を指していた。
「うん……今行く」
『………?畏まりました』
沙知さんがリビングにいく足音を確認して、ゆっくりとベッドから起きあがると私もリビングに行くために部屋を出た。
「本日は養殖のものではなく、極秘ルートから調達した全て貴重な天然物の秋刀魚、栗、松茸を腕によりをかけて作らせていただきました」
机の上に並べられた秋刀魚の塩焼き、栗の炊き込みご飯、松茸のお吸い物と様々なおかずから鼻腔をくすぐるいい匂いに自然とお腹がキュルル〜と鳴ってしまう。
「……いただきます」
箸を手に取り、合掌して出されたご飯を食べ始める。
それから程なくして……
「お嬢様。なにか悲しいことがおありですか?」
「ッ……別に何も無いよ」
「嘘ですね」
にべもなく即答され、思わず答えにつぐみ黙りこくってしまう。
彼女のこと動作を答えとしたのか、沙知は目を伏せて口を開いた。
「お嬢様はなにか嫌なことがあるとすぐ顔に出ますからね。私では相談相手には不満でしょうか?病院でのお言葉が嘘だったのなら私は悲しいです……」
「沙知さんはずるいなぁ……そういわれたら言わないといけないじゃん………」
苦笑いを浮かべ、響はそこから少しずつ話し出した。
自分がラグラーガと戦い始めたこと。その最中で自分の不注意で負けたこと。
そして、初めての敗北が自分の馬鹿みたいなミスが原因のことを。
話し終えた頃には視界が涙で滲み、ポタポタとぎゅっと握った手に水滴が落ちていた。
「お嬢様。人には誰しもミスがあります。それに、負けることはわるいことではありません」
「でも……私は……」
「ていっ!」
「いたい!なにするの沙知さん!?」
突然の額にやられた沙知のデコピンに響は目を丸くして、その額をさすりながら叫ぶ。
そして当の沙知はというと、やれやれと言った様子で首を振っていた。
「お嬢様は気にし過ぎです。たかが1度の負けがなんですか?それにお嬢様がそのゲームをやり始めてから1週間も経っていないのでしょう?なら仕方ありません。だって装備も整っていないのですからね。ええ。言い訳ですとも。ですが、次は負けないよう手を講じればいいのです。幸い、そのゲームでは幹也様もおられるのでしょう?ならば頼み込んで今お嬢様が使える最大級の装備を貸してもらい、次こそは勝てばいいのです。物事は最終的に勝てば良いのですよ。納得できるかどうかはさておき。さあさあ、きちんと食事を噛んで平らげてお風呂を済ませ、歯を磨いて睡眠をとって明日リベンジを致しましょうそうしましょう!」
「う、うん!なんだかよくわからないけどわかった!」
響は弾幕のように沙知の言葉の並に目を白黒し、勢いに流されきちんと30回噛んでから飲み込み、出されたご飯をきちんと平らげたあと風呂を済ませ、沙知に歯を磨いてもらい、寝巻きを着せてもらい、兄の幹也へフレンドメールを送り寝ることにした。
ちなみに、インデスのシステムでレベルが15にいってない状態だとデスペナルティが『現実時間の24時間経過するまでログイン不能』なので割と手持ち無沙汰になってしまったのは余談である。
〜幹也へのプライベートチャット内容〜
ヒビキ『兄さん!』
ディラン『なんだー』
ヒビキ『UNMに負けて装備が大半壊れたから今のレベル帯で装備できる凄いやつ貸して!』
ディラン『は?ちょっとまて、兄ちゃんいきなりすぎてよくわからねーんだけど!?なんだ?またUNMに遭遇するとかどういう悪運してんだお前!』
ヒビキ『それじゃ、私はもう寝るからね!』
ディラン『いや、まだ9時……』
─ヒビキが退出しました─
ディラン『聞けよッ!はぁ……仕方ねぇな。今回だけだぞー』
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それでは、誤字脱字のご報告。感想、評価、ブクマ、お気に入りまってます!




