第三十話 初めての旅は、三日歩いた先にある国を目指す
二章、始まりました! どうぞよろしくお願いします。
ロミオとパック、そして私の三人は国境を越え、行先も決めず旅に出た。
ムストとネヴァの元継嗣、地下育ちのパックという組み合わせ、なんとなく不安になってきた。
しっかり者枠のベンとマーサとキュー不在の今、フォローされる側しかいないというのは、どうなんだろう......。
ある程度道を進み、追手が来ないことを確認してからわき道にそれ、ロミオとパックが持っていた荷物を広げた。
三人で顔を突き合わせて、手持ちの食料や物資を確認する。
乾いたパンが二切れ。干し肉のかけらが少し。水筒がふたつ。それから、なぜか私が後生大事に抱えてきてしまった、明らかに旅向きではない絹の肩掛けの中には宝物が入っている。
神殿の地下牢に閉じ込められてもこれだけは肌身離さず持ってきた私の「お守り」
大好きなクッキーも入れておけば良かったわ。
後悔先に立たず。思わず本音がこぼれる。
「……これだけで三人、足りるかしら」
誰も答えない。
考えてみれば、荷造りというものをしたことがなかった。旅の支度はいつもマーサがしてくれて、私はただ出発するだけだった。ロミオも似たようなものだろう。
侍女も、護衛も、案内も、誰一人としていない。
「……私たち、本当に旅ができるのかしら」
「今更?」
パックが呆れた顔で笑う。
「今さらだけど、思ったの」
「大丈夫だって。地図は俺が持ってるし、飯は現地調達、寝床はその辺で何とかなる。姫さんとデンカは、いかにも継嗣ですみたいな、バレバレな態度だけ気をつけてくれりゃいい」
「寝床はその辺……」
聞き捨てならない言葉が聞こえる。
箱入り改め、箱から出たばかりの乙女、一六歳。
その辺って、どの辺?
私の困惑にパックは全く気づかず、ロミオは困った顔をして私を見ていた。
ロミオだって、その辺は気になるよね?
ね?
結局、絹の肩掛けは丸めてロミオの荷物の隅に押し込み、パンは三等分に割った。
生まれて初めて食べた干し肉は塩っ辛くて固かった。水筒は二つしかないから、少しだけ口に含んで何とか飲み込んだ。
次に、パックが広げたのは古い地図だった。
この前見せてくれた地図だ。
「で、目指す国はここだな。スポイルって国」
「スポイル……聞いたことがあるわ。たしか、由緒正しい大国よね? 昔、外交の授業で習った気がする。困っている国があれば真っ先に手を差し伸べる、慈愛精神が高い国だって」
「私も聞いたことがある。世界連盟内でも一目置かれている国だと」
「へー。まあ、俺が商人たちから聞いた話だと、ちょっと違ったけどな」
パックが記憶を探るように両手でこめかみをグリグリと押しながら答えた。
「何が違うんだ?」
「なんか、国の中は結構カツカツらしいぜ。羽振りがいいのは表向きだけ、みたいな」
「豊かな国だって学んだけれど、実情は違うってことかしら?」
「ていうか、パックはどこで商人たちと知り合うんだ?」
「だって俺、無印だからネヴァなら自由自在、どこにでも潜り込めたからさ~」
パックはそう言ったきり、あまり気にした様子もなく地図を畳んだ。
パックには刻印がない。ムストでもアラームが鳴ることはないが、あちらは「うなじをさらして刻印を見せるのが義務」の国だから、髪の毛で刻印を隠すネヴァの方が動きやすかったということね。そう一人納得していると、パックがお気楽に続けた。
「噂なんて、話半分に聞いとけばいいんだよぉ。行きゃ分かる!」
軽い調子で流されて、私もロミオも、それ以上は突っ込まなかった。教科書で習った"由緒正しい大国"のイメージの方が強いけど、この目で確認するのが一番いい。
さて、スポイルに向けて出発するかというときに、パックが少し落ち込んで見えたのが気になった。
「パック、スポイルへは今日中に着くだろうか?」
「は?着くわけねぇっての!」
「どのくらいで着く見込みだろうか?」
「う~ん、姫さん連れだと三日ってところかな?」
「三日!?」
思ったより遠かった、スポイル国。二~三時間歩けば着くと勝手に思っていた。
ロミオが青い顔をしてパックに尋ねた。
「その間、宿はあるだろうか?」
「ねぇな。そもそも金がない」
「ムストの電子マネーなら、持っているが」
「国際通貨に両替しないと使えねぇよ、たぶん。アプリ入ってる?」
「いや、いつもはベンが......、なら今夜は野宿だろうか」
「言ったろぉ、その辺で何とかなるって。ここら辺は獣も出ないし、野盗もいないって商人たちが言ってたから安心だって!」
ニカッと笑うパック。
青い顔のままのロミオ。
狼狽える私。
その辺って、街道沿いのこと?
気絶......はいけないわ。みんなに迷惑をかける。
頑張るのよ、ジュリエット!あなたはれっきとした成人女性なんだから、男性二人と野宿の一つや二つ。
私の混乱と焦りが顔に出ていたのだろうか。
ロミオがそっと手を繋いでくれた。優しい.......。
ちょっとだけど空腹が紛れたパックがルンルンと先を行く。突っ込み不在の一行は先を進むしかなかった。
ある程度歩いて、足が疲れてきたので休憩をとることにした。水筒の水を少し口に含む。水も大切にしないと。
ふと、マーサのことが思い浮かんだ。無事に地下から脱出できただろうか。
「ジュリエット、何を考えている?」
ロミオが心配そうに聞いてきた。
「マーサが無事に逃げられたかなと、思っただけです」
「たしか、ホルトと昔馴染みと言っていたな」
「それだけで姫さんと離れて一緒に行く~?」
「たしかに」
ロミオは生真面目に頷きつつ、いまいちよくわかっていない顔をしているが、パックはニヤニヤしている。これは、避けられない話の流れ。
ごめん、マーサ。ちょっとだけ話すね。
「元々ルール国時代に、オーレン先生の私塾に二人とも通っていて」
「オーレン先生繋がりか」
「オーレン先生って、公開審判かけられたホルトの恩師だろ?聞いたよ」
「そうなの。それで」
――と、道端の茂みが不意にガサリと揺れた。
次の瞬間、体が引き寄せられていた。ロミオの片手が私の肩を抱き、もう片方は剣の柄にかかっている。
「……敵か」
全員に緊張が走る。しかし、茂みから飛び出してきたのは、白い尾をぴょこぴょこ揺らす、ただの兎だった。脱兎のごとく、反対側の茂みへ駆けていく。
「……兎、だったな」
「ああ」
パックが盛大に噴き出した。
「デンカ、今、剣の柄握ってたよな!? 相手、兎だぞ!?」
「むむ...、油断は禁物だろう」
ロミオは仏頂面で言い訳したけれど、耳が赤い。それに、彼の手はまだ、私の肩に乗ったままだった。
「……あ」
「……うん」
同時に手と肩を離す。気まずい沈黙。パックがにやにやしながら口笛を吹く。
「うるさい、パック」
ロミオが即座に言い返したけれど、声が少し上擦っていた。私は何も言わず少し俯いて、髪の毛で顔を隠した。真っ赤な顔を誰にも見られないように。
______
歩き疲れて限界だなと思った頃、パックが「野営宣言」をした。
曰く、比較的安全な所についたらしい。
「パックは地下育ちなのに、すごく道とかいろいろ詳しいのね」
「本当に感心する。私たちだけでは戸惑うばかりだっただろう」
「え〜、俺だって初めてだし、わかんねぇよ」
「え?さっきこの辺は安全だって......」
「ん?そんなの勘だよぉ」
ロミオと私は同時に黙った。
そして、なぜかパックも黙った。
ツッコミ不在というのは、こうも間が持たないものかと痛感する。
「あっちの木がたくさん茂ってる方、水の音がするからちょっと水汲めるか、見てくるわ」
「わかった。私は火を起こしておこう」
「私は?」
「姫さんはデンカと待ってて。足、限界だろ?」
パック、優しい......
私の体力がなくて距離を歩けないから、二人に迷惑をかけている。申し訳なくて居た堪れないけど、早く回復して、明日たくさん歩けるようになる方がいい。
「ロミオ、ごめんね。明日はもっと歩けるように頑張るね」
私がそう伝えると、火を起こしながらロミオが優しく笑った。
「ジュリエットはもうたくさん頑張っている。地下牢に閉じ込められて、脱出して地下へ逃れて、今は国境を越えて歩いている。本当はもっと休んで欲しい。だが、ちゃんと休ませてやれないことが歯がゆい」
「そんなこと......」
ロミオが起こした小さな種火が大きくなっていくのを見つめる。
暗闇の中にオレンジの炎の灯りがユラユラ揺れて、なんだか眠たくなってくる。
「ジュリエット、私にもたれかかって休むといい」
「それじゃ、ロミオが休めないよ」
「私は鍛えているし、ジュリエットより体力があるから平気だ。ほら、こっちへおいで?」
ロミオが火から少し離れた大きな木を背に、片腕を広げて手招きしてくれる。
いいのかしら?戸惑う気持ちもあるけれど、どうしようもなく眠たくなってきた。
ロミオの好意に甘えて、休ませてもらおう。おずおずと側に近寄り、腕の中におさまってロミオの胸に頭をつける。
規則正しい、心臓の音が聞こえる。
少し、早いけど......
そんなことを思ううちに、私は眠りに落ちていた。
+++
「あれ〜、姫さん寝ちゃったか」
パックが水筒を右手に持って帰ってきた。左手には葉がついたままの可愛らしい野いちご。
「水は汲めた。明日出る前にもう一度汲めばいいから、姫さんも飲んだ方がいいと思ったけど、起こすことはないよなぁ」
「そうだな。無理して歩いていたから、限界だろう」
「だな、野いちごは姫さんにとっておいて、デンカは水飲みなよ」
「ああ、ありがとう」
水の不安がなく、喉を潤せるのはありがたい。
しっかりと水分をとって、少し体が楽になった。ジュリエットを起こさないようにそっと自分の上着を脱いで、細い肩にかけた。
「明日は、なんか食うもん探さないとなぁ。腹減った」
「そうだな、さすがに私もお腹が減ったよ」
「俺さぁ、水汲みながらお腹、ぐうぐう鳴っちゃって!いつもはキューが......」
そう言って、パックは黙り込んだ。今日何度か同じように見えた時、キューのことを考えていたんだろう。私も同じようにベンのことを考えているから、わかる。
「――大丈夫だ」
誰に向けた言葉か、自分でもよく分からない。パックにか、それとも自分自身にか。パックは何も言わず、ただ薪をくべた。
「デンカ、交代で火の番しようぜ。先に寝なよ」
「わかった、そうさせてもらうよ」
「ぜってぇー起こすからな!」
「はは、わかったよ」
ジュリエットの寝顔を見てから、目を瞑った。
最悪な状況は脱した。大丈夫だ、ベンもキューも無事だと信じている。
____
食べられそうな木の実や、果物を見つけて食べているが、全員が極限の空腹状態だった。
今なら、苦手だったものでもなんでも食べられそうだ。
二日目の夜、火を起こしてジュリエットと野営の準備、といっても手頃な木をみつけ、石などを取り除いて平にするくらいだが、水を汲みに行ったパックを待っていると、両腕にりんごのような果物を抱えて走ってきた。
「デンカ、姫さん、これ見てよ!」
「りんご?」
「木に登って取ったのか?」
「そーだよぉ。ちょっと形悪いけど、いいだろ〜」
私たちはさっそくりんごをいただいた。少し酸っぱかったけど、すごく美味しかった。
食べ物があるって、本当にありがたい。ジュリエットはりんごの丸かじりに苦戦していたが、モグモグ食べていて、可愛かった。
「にやにや姫さん、見つめてんなよ〜デンカ」
パックは何かとこうやってからかってくる。そのたびに真っ赤になるジュリエットはすごく可愛らしいのだが、照れくさい。
あえて無視していると、パックが話題を変えてくれた。
からかい甲斐がなかったのだろう。
「――さて。明日には着くな、スポイル」
「ようやく着くのね、うれしい」
「由緒正しい大国か、巷の噂通りの国か」
「まっ、行きゃわかるだろ。何とかなるって」
軽い口調のパックに、私もジュリエットも笑った。
パックがそういうと、だんだん何とかなると思えてくるから不思議だ。
この時はまだ、知らなかった。その「誇り高き国」の足元に、誰にも顧みられずうずくまる人々がいることを。
_____
翌朝、国境を越えたところで、それは唐突に視界に飛び込んできた。
空を突くような放送塔。その根元の巨大なスクリーンには、涙ながらに感謝を述べる異国の代表と、深々と頭を下げるスポイルの高官の映像が、繰り返し流れている。朗々としたナレーションが響く。
――我らが誇り高き支援は、今日もまた、遠い国の希望となった。
「……なんだあれ」
誰もスクリーンを見ていない。行き交う人は顔を下げたまま、足早にその下を通り抜けていく。表情はどこか冴えない。なんだか異様な光景の気がして、思わずパックとジュリエットの背中を軽く押して言った。
「……行こう」
スポイル国の街中は、外から見た印象よりずっと賑わっているようだった。石畳の大通りに露店が並び、焼いた肉や香ばしい匂いが漂ってくる。商人の声が行き交い、こどもたちが駆け回る、ごくごく普通の、生活の匂いがした。初めに見た印象とは異なり、少し戸惑っていると、パックの腹の音が盛大に鳴った。考えてみれば、まともに食べたのはいつだったか。
そんなことを思っていると、私のお腹も情けない音を立てた。
「デンカもお腹鳴るんだなぁ」
自分の腹の音の方がよっぽど大きかったのに、パックがからかってくる。
「……空耳だろう」
「空耳が『ぐううう』とは鳴りませ〜ん」
ジュリエットが横で小さく笑いを堪えている。パックの口を塞いでやろうと隣を見ると、いつの間にいない。慌てて探すと、露店の方へふらふらと吸い寄せられていた。
「パック!!」
呼んでも返事がない。あいつ、完全に匂いに釣られてる。
嫌な予感がした。芋を焼く屋台の前で、涎を垂らしそうな顔で芋を見つめている。
営業妨害も甚だしい。
――これを、キューは普段から抑えていたのか。
地下にいた頃、パックが暴走しかけると大抵キューが涼しい顔で首根っこを掴んで止めていた。あんな自由な男をあっさりと大人しくさせるキューはすごい。
ちょっと現実逃避をしているうちに、パックの涎がついに芋に落ちた。
「ちょっと兄ちゃん、なにやってんだ!」
「いや、これうまそうだったから」
「買取だよ!!」
「いや、金持ってねぇし」
激怒する店主、平然とするパック。
オロオロするジュリエット。カオスだ......
「金持ってねえのか!? おい、警ら呼べ!!」
屋台の主人が声を張り上げる。あっという間に周囲の視線が集まった。誰も助けてはくれない。それどころか、遠巻きに「みっともない」「乞食?」という顔で見ているだけだ。
警らを呼ばれるのはまずい。入国してすぐにお尋ね者になるのはお断りしたい。
「すまない、連れが」
懐の通信機を探ったが、地下から持ってきた電子マネーはムストのローカル通貨で、まだ国際通貨へ両替していない。つまり、この国で通用するお金を持っていない。詰んだ。
「ちょ、待って!俺は悪くねえって、ただ腹減っててさ」
パックが両手を上げて言い訳している横で、ジュリエットが泣きそうな顔でこちらを見る。
屋台の主人の声はますます大きくなっていく。冷や汗が背中を伝ったその時、横合いから場違いなほど明るい声が飛んできた。
「はいはい、ごめんねー、この子たち、あたしの連れだから!」
割って入ってきたのは、大鍋を担いだ女性だった。屋台の主人に何か耳打ちしながら、芋の代金らしきものを押しつけている。主人は渋い顔をしつつも、それで矛を収めた。
「……助かった。礼をいう」
「あのっ、ありがとうございました。ほら、パックもお礼を言って!!」
「おばちゃん、ありがとな〜」
「おねーさんな!」
女性はパックの頭をポコっと叩いた。対して痛くもないはずなのに、パックは「いった〜」と頭を抱えている。
「ふざけた奴ですまない」
「いいのいいの。腹減った顔してる子、放っておけないだけだからさっ」
ドーラと名乗った彼女は、そのまま私たちを路地裏の炊き出し場へ引っ張っていった。湯気の立つ鍋から、どこか懐かしい、いい匂いがする。
「食べな、食べな!遠慮すんの、一番良くないよ」
パックはもう椀を受け取って、汁物を行儀悪くかき込んでいる。ジュリエットも目をキラキラさせながら椀を両手で包んでいた。
私も椀を受け取りながら、ドーラの手を見た。荒れて、指の関節が節くれ立っている。
「正直、とてもありがたい。私たちは旅をしていて、この国の通貨をまだもっていないから、食べ物を買うことも弁償もできなかった。改めて礼をいわせてほしい」
「本当に、本当に助かりました。これ、すごく美味しいです!」
汁物はとても美味しくて、体に滋味が染み渡るようだ。
「たまたま炊き出しがあって、助かったな〜みんな」
パックが二杯目をおかわりしながら言った。少しは遠慮しろと目配せしたが、華麗にスルーされた。やはりこの男を制御できるのはキューしかいない。
「たまたまじゃないんだよ、毎日やってんだ」
「毎日ですか?なぜ......」
ジュリエットの疑問はもっともだ。この国は大国だったはず。
なぜ毎日炊き出しが必要なのか。
「この国、見た目より生きにくいからさ」
ドーラはせつなげに笑って、私とジュリエットにもおかわりをよそってくれる。
誰かに命じられているわけではないのに、こうして毎日誰かの腹を満たしているという。
「……ありがとう」
「礼はいいよ。それより、いっぱい食べな。美味しそうに腹一杯食べて喜ぶ人の顔が見たいだけなんだ」
言葉とは裏腹に、ドーラは少し寂しげだった。
【パックside】
宿なし、金なし、着替えなしと言ったら、ドーラがいろいろ世話をしてくれた。
家にも泊まらせてくれるらしい。やっぱ、何とかなるもんだよな!
ドーラの話を聞きながら歩く二人の後をついていきながら、俺は一瞬だけ足を止めた。
人混みの向こう、最初に見た大きなスクリーンに目が釘付けになる。国際式典の記録写真が、スライドのように切り替わっている。深々と頭を下げる高官、感謝を述べる異国の代表。次の式典を予告する宣伝。
偉そうな高官の横に並んでいる何人かの男女。その端に、何かを堪えるような目で一点を見つめる男が映っていた。
――キューだ。
見間違えるはずがない。あの、感情を押し殺すときの目の細め方。地下に降りた頃によくしていたあの瞳。
心臓が、うるさいくらいに跳ねた。今すぐ駆け出して、あのスライド内容を確かめたい衝動に駆られる。
でも、あれは式典の予告で、キューが今この場所にいるわけじゃない。
少し調べなければ。はやる心を抑え込む。
確かめる。この目で、絶対に。
俺は拳を握りしめたまま、ロミオ達の後を追いかけた。
――待ってろよ、キュー。必ず助けてやるからな!!




