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『ルール国のロミジュリ20XX』  作者: 夜明けの碧
第一章 ルール国——義務と禁止が刻まれた国の物語

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第二十七話 こぼれ落ちる幸せは、砂の城に似ている

流血表現があります。苦手な方はブラウザバックでお願いします。

今回もまた、激震が走ると......

 

【ロザラインside】

ベンの足音が遠ざかっていくのを、扉の前でずっと聞いていた。

彼は行ってしまう。どのくらい待てば戻ってくるのか、わからない。


それでも ────

結婚しようとベンは言った。言ってくれた。

長年の恋が実って、私は浮かれていたのかもしれない。


「お嬢様」


エルザの強張った声で我に返る。

人払いを命じたはずなのに、いつからそこにいたのだろう。


「エルザ?」

「ノックをしても、お返事がありませんでしたので」


言わないでおくべきだと、頭のどこかではわかっていた。でも、この喜びと痛みを、ひとりで抱えていられなかった。


「殿下は今夜、ジュリエット様を助けに行かれるの。信じられないけど地下に多くの人が住んでいて、一旦そこへ寄ってからそのまま国を出るそう」

「そんな......それでは、お嬢様との婚姻の儀は?」

「中止よ。でもね......私はそれでいいと思う。ロミオ様は本当に好きな人と結ばれるべきよ」

「それでは、お嬢様に瑕疵がついてしまいます!」

「それは甘んじて受け入れるわ。でも、ベンが私と結婚するって...」

「お嬢様は騙されているんです!!地下に人が住んでるなんてありえません」

「違うわ!聞いてエルザ。旧運河にあるゴンドラの下に隠し通路があって、ベンは何度もそこから地下へ行ったと言っていたわ。彼は私に嘘をつかないもの」

「口ではなんとでも言えます!」


エルザらしくもない、非常に興奮した態度だった。少し落ち着いて欲しい。

続きの間に下がらせたけど、やっぱり様子が気になるわね。

部屋に入り声をかけると、エルザの体がビクッと震え、手に持っていた通信機を落とした。胸騒ぎがして急いで拾い上げると、画面には検閲局の通報窓口と送信完了の文字。そして、密告文......。



_____________


【検閲局・匿名通報】

ムスト・ネヴァの両継嗣は本日深夜、旧運河地区の地下施設を経由して国外へ逃亡予定。地下には大勢の人間が住んでいる模様。入り口はゴンドラの真下


_____________



血の気が引く。


「エルザ......何を」

「自分たちの都合ばかりで、お嬢様を振り回すからです!!!絶対に許せない」

「なんてこと......」


ロミオ様が謹慎処分を受けたきっかけも匿名の通報だったとベンが言ってた。

もしかして、あれもエルザが?

今はそれを問い詰めている場合じゃない。震える体を叱咤して、机の上にある自分の通信機をつかむ。

ベンとの直通チャットを開く。指が震えて、うまく文字が打てない。

────早く見て、お願い。


「今すぐ逃げて!検閲にエルザが通報した。地下の入口が相手に知られた」


送信ボタンを押した瞬間、目の前にあった幸せが手からこぼれ落ちていくような感覚がした。




【ベンside】

ざっと見て二十人ほどが地下階段を降りた所にある広場に入ってきた。

手にはロレンスからいろいろ渡されたモノの一つの、煙幕弾。

どこで調達したのやら。もしかして手製か?

不発はゴメンだよっと呟きながら、検閲の集団に投げつける。


周囲が真っ黒な煙に包まれ、咳や怒声があたり一面に響き渡る。

俺は、大勢の地下の人たちや殿下が向かう先とはあえて逆方向に検閲の奴らをおびき寄せるため、わざと大きい音を流しながら進んだ。

だが、運悪く検閲のエースと呼ばれる、切れ者が中にいたらしい。


「慌てるなっ!この派手な動きは陽動だ。音と逆方向へ迎え」

「ハッ」


おいおい、マジかよ。

こっち追っかけてきてくれねーと。まだ、十分な距離は稼げてない。

別の通路から先回りして剣を抜く。あえて細い場所で狙い撃ちをした。

一撃。相手の装置を弾き飛ばし、峰打ちで昏倒させる。


「二人目、三人目――くそ、思ったより多いな」



側面の暗がりから、さらに二人が躍り出る。ベンの剣が低く一閃し、一人の膝が崩れた。返す刀でもう一人の得物を叩き落とす。息を継ぐ間もなく、四人目が横から斬りかかり、剣と剣がぶつかる音が狭い坑道に反響した。

ベンの剣は止まらない。五人目、六人目。峰打ちで済ませる余裕は、もうなくなっていた。斬って、払って、また斬る。呼吸ひとつぶんの間に、三人が地に伏す。額から、汗が飛んだ。


「十人斬り、二セットはまだまだ余裕だよ」


しかし、続々と応援が入っているようだった。

打ち損ねた奴らが奥へ入っていく。


「くそっ、数が減らない!」


声や音の様子から、地下の人たちが逃れたルートではなく、殿下たちの方へ向かっているようだった。このままでは追いつかれる。


「ロレンスさん、これ使うよ」


地下の存在を知られたら、色々まずいものまで見つかる。証拠は隠滅しなきゃな?

そんなふうに笑ってロレンスが手渡してきたものの一つが、この地下施設の自爆スイッチだ。


「俺も吹っ飛びませんかね〜〜」


だからといって、躊躇している暇はない。

俺は迷わず起動ボタンを押した。



ものすごい爆発音が響き渡る。

いくつか仕掛けられていた装置が一斉に破裂したようだ。

爆風とともに火の手があがり、悲鳴が聞こえる。


混乱の隙をついて殿下たちのルートへ向かうやつを片っ端から斬っていく。

その時、地下の天井が崩れ始めた。


「おいおい、ロレンスさんよ〜、俺らも巻き添えくらいそうなんですけど」


逃げ惑う検閲官たちを横目に、脱出経路を走り抜けようとした。

その時───

刀が胸を貫いた。口から大量の血がこぼれ落ちる。


「一人でここまでとは、さすがムスト一の剣だ。だが、終わりだ」


エース様は検閲官がどの道で多く斬られているかを冷静に観察してたらしい。

そんな講釈、ぜんぜん要らないんだけど。


「この道を真っ直ぐだ!そこに継嗣たちがいる」


残っている検閲官全員を従え、殿下たちが進んだルートを駆けていく。


なんとか阻止したくても、もう目が霞んできて見えない。

血を流しすぎた。


やばいな......


大事な人とそれぞれ約束したんだけど


必ず戻るって。


殿下、すみません。これ以上、お守りできなくて。

これからの道のりがどんなに険しくても、殿下ならムストを変えられるって、信じてます。


ロザ......

おかしいよな。ようやく一緒になれると思ってたのにな......

やっと...なのにな

まだまだ俺の深い愛をつた...えき...れてないの...にな


あぁ、最後なら

もう...一度お前の笑った...顔...が見たかったよ......


ガタンっ

ダダダ...ダダ



「神様の...ご...ほうびか...な」



お...れはし...あわせ...者だ...



作者は鬼ですか......

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― 新着の感想 ―
ベン・・・(泣)悲しすぎます・・・エルザに腹が立って仕方ないです。
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