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「刺」

 「私は...ひとつ前の魔王に!目の前で!6歳の息子と!4歳の娘を!殺された!!」

 「?!」

 「私の子供...返してよ...っ...」


 女性秘書が衝撃の事実を口にした後、鬼の姿のまま内股で座り込み、泣き始めた。俺は驚いた。そして困惑した。前の魔王に殺されたのは勿論の事だが、それ以上に鬼の女性秘書の姿に。「殺戮を繰り広げる鬼」だが、視界から伝わってくる情報は、内股で座り込み、手の甲で涙を拭き取る、「人間」の女性の姿。おそらく、理性を失ってるわけではない。


 そして、女性秘書は立ち上がり、不適な笑みを浮かべ始める。


 「あははっ。でも私は、ある日突然、神々しいおじいさんが目の前に現れて、この「鬼」の力を与えてもらった!まるで「復讐をしろ!」と言われてるみたいに!」


 俺は「神々しいおじいさん」という言葉に聞き覚えがあった。それは俺自身がこの世界に来る時に出会ったおじいさんの呼び名。まさか、あのおじいさんがこんな事を?


 「あ、そうそう、錦木?だったっけか?その魔王を殺した後、お前がこのサナガラル島を仕切って王になれ。前の魔王は超能力者だったらしいが、姿をくらました今、この島はいつ他の島の奴らに奪われるか分からない。お前は超能力者なんだろ?さっきの能力...まるで夢見心地だった...あんな美味いものがこの世にあるなんて...。」


 不適な笑みを浮かべた女性秘書は指を刺しながら命令口調で言ってきた。俺がこの島を仕切る?しかも結局前の魔王は超能力者?一体どういう能力だったんだ?...くそ、謎だらけだ!


 「錦木!」

 「錦木さん!」

 「クルーシア!カタル!無事か!」


 崩れた壁の中からクルーシアとカタルが顔を出し、俺の名前を呼んだ。


 「錦木...さ、さ...ん。被害を加えた私達が悪い...。置いて...逃げて...。」


 俺に寄りかかっていたシマリスの魔王が血を吐きながら伝えてきた。「置いて逃げて」って...なんでだよ...お前らは良い奴なのか悪い奴なのかはっきりしろよ!


 「チッ。あの猫娘まだ生きてたの?!私の邪魔しないで!さもなくば、魔王を殺した後、本当に殺す!今魔王にとどめ刺すから待ってな!」


 再び、鬼の様な女性秘書が突っ込んでくる。くそ!クルーシアとカタルは傷だらけでまだ壁の瓦礫から抜け出せてない!


 鬼の女性秘書は更にツノと刀を大きく伸ばす。スピードを上げる。


 くそくそくそ!確かにこいつらは悪い事をした!...でも、ただ不器用なだけなんだ!多分、こいつらの事だ、また心の底から反省してる!だから、自分の罪を認めて「置いて逃げて」って言ったんだ!こいつらは何が良くて何が悪いかまだ分かってない。悪い事を良い事として前の魔王に教わったんだ!まだこいつらを死なせたくない!でもあの女性秘書の気持ちも分かる!なら...こうするしかない!


 「死ね!!!!」

 「ザクッッ」


 俺はシマリスの魔王を庇い、背中から手刀で刺された。





 【残りのカップラーメン数】 286個

 「カップラーメン1年分が当たった俺、貧困異世界で無双する」を読んでくださり、ありがとうございます。


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