第21話「友達と山」
「ここが家だよ」
「お〜、立派〜」
私は引っ越してから初めてできた友達を家に招待した。
「楽しそうじゃな」
四季ちゃんがニヤニヤしながら言った。
(なによ)
「いや、なんでもないのじゃ。わらわは先に山に行っとるゆえ、二人で後から来るとよい」
そう言って、四季ちゃんは先に行ってしまった。
「どうしたの?」
「なんでもないよ。あそこが相続した私の山」
そう言って、山を指さす。
「お隣にあるんだね」
「うん、だからすぐ行けるよ。でも、先に家に入ろうか」
「そうだね、挨拶しないと」
そう言って、家に入る。
「あら? おかえり」
お母さんが出迎えてくれる。
「お友達を連れてきたのね。神名の母の恵子です」
「あ、お母さん! 私は葛城 圭といいます!」
圭ちゃんが頭を下げる。
「あら、可愛い子ね。上がって? 飲み物とか用意するわ」
「はい」
「お母さん、山に連れていっていい?」
「いいけど、怪我させちゃダメよ?」
「うん、分かってる」
「でも、学校帰りだし、疲れてるでしょ? しばらくゆっくりしていって」
「あ、うん」
「じゃあ、お茶とお菓子を持っていくわね」
「ありがとう、お母さん」
そう言って、私たちは縁側へと向かった。
私の部屋は縁側に面していて、そこから庭や隣にある山を眺めることができる。
「わぁ〜、ここ、いいね!」
圭ちゃんは縁側に座ると、目を輝かせながら周囲を見渡した。
「そうかな?」
「うん! なんだか落ち着くし、景色もいいし!」
「えへへ、ありがとう」
私は圭ちゃんの隣に座った。
しばらくすると、お母さんがお盆にお茶とお菓子を載せて持ってきてくれた。
「はい、お待たせ。ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます!」
圭ちゃんはお母さんからお茶を受け取る。
「それじゃあ、お母さんは夕飯の準備をしてくるわね。山に行くときは気をつけるのよ?」
「うん!」
お母さんは笑顔でうなずくと、家の中へ戻っていった。
「神名ちゃんのお母さん、優しいね」
「うん。いつも優しいよ」
私はお茶を一口飲んだ。温かいお茶が喉を通り、ほっとする。
「それにしても、神名ちゃんって、ここに引っ越してきてからずっと二人で暮らしてるの?」
「うん、お母さんと一緒だよ。おじいちゃんが亡くなって、この家と山を相続したから、二人で引っ越してきたの」
「そっか。おじいちゃんの山なんだね」
「うん。だから、ちゃんと管理しないとね」
「偉いなぁ。私だったら、山の管理なんて何をすればいいのか分からないよ」
「私も最初は分からなかったよ。でも、少しずつ覚えていけばいいかなって」
「なるほど〜」
圭ちゃんは納得したようにうなずいた。
それから、私たちは学校の話や好きな食べ物の話など、いろいろなことを話した。
気づけば、すっかり時間が経っていた。
「あっ、そろそろ山に行こうか!」
私は立ち上がった。
「うん! 楽しみ!」
圭ちゃんも元気よく立ち上がる。
「そういえば、山には何があるの?」
「えっと、大きな木と、小さな祠があるよ」
「祠? 神社みたいなもの?」
「うーん、ちょっと違うかな? 実際に見たほうが分かると思うよ」
「そっか! じゃあ、早く行こう!」
圭ちゃんは待ちきれない様子で、玄関のほうへ歩き出した。
「あはは、そんなに急がなくても大丈夫だよ」
私は苦笑しながら、圭ちゃんの後を追った。
玄関で靴を履き、外に出る。
すぐ隣には、緑に覆われた山が広がっていた。
「じゃあ、案内するね」
「よろしくお願いします!」
圭ちゃんは楽しそうに笑った。
私たちは山へと続く道を歩き始める。
山の入口が近づいてくる。
その先には、私がいつも掃除をしている山頂の大きな木と祠がある。
そして、そこには四季ちゃんたちも待っているはずだ。
「さあ、行こう!」
「うん!」
私は圭ちゃんと一緒に、山の中へと足を踏み入れた。




