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有紗は性獣  作者: 柊蓮
第四章――
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グランド・フィナーレ②

 一人教室に残された俺は、自分の手のひらを眺めながら、どうしたら淫魔(インキュバス)に変身できるのだろうかと考えた。


 身体に力を入れてみた。だけど駄目だ。次は全身の力をできるだけ抜いてみた。そしたらどうだろう。なんだか身体の奥底に熱いものを感じはじめたではないか。


 俺はこっちの方向性が正しいことに確信をもつと、全身の力を抜いてその身体の奥底に感じはじめているその熱源により意識を向けた。すると、その熱源のエネルギーがより肥大化していく感覚を覚えた。俺は全身が熱くなり汗を流し始めた。身体が、急激な変化をみせているようだった。


 俺は自分の身体が拡張していく感覚を覚えた。


 すると、背中の方に二つの痛みを感じ始めた。それが、淫魔(サキュバス)と同様に羽が生える前兆であることは言うまでもなく、俺の背中はまさしく羽を生やそうとしていた。


 肩甲骨辺りに感じる二つの痛みに、身体は内側から大量の汗をかくほどの熱を感じる。そして次の瞬間、俺は自分の背中に、皮膚を喰って表面に出てきた二つの羽を感じることができた。


 羽が生えてくるその痛みは耐え難いもので、俺はあまりにも耐え難いその痛みに、思わず床に両手をついてその場にしゃがみ込んだ。

 だがそんな俺の苦痛などお構いなしに、背中の羽はどんどん俺の身体の内側から外側へと露出していく。


 俺は短くない間、羽が生えてくるその苦痛に耐えていた。有紗と約束したように今すぐ自衛隊を片付けに行かないといけないのに、そんな俺の考えに身体がついてこない。


 そしてとある瞬間を境に、その背中の痛みは一瞬にして消えた。


 床に両手をつけてしゃがみ込んでいた俺は、気がつくと、全てが変わっていた。そのことを、感覚で分かった。


 近くの窓まで俺は行くと、俺は窓に映るその、全てが変わってしまった自分を見た。身長は百七十センチ代から二メートルほどまで伸び、全身にはまるで蝶のように綺麗な模様が入っており、勿論背中の部分には二つの綺麗で大きな羽が生えている。


 俺は、窓に反射したそんな自分の姿を見て、哀しさ半分、嬉しさ半分の感情を感じた。


 俺は、有紗と共に世界へ反抗する手段を得たんだ。そう思うと、より有紗へ対する愛情が俺の中で大きくなっていった。淫魔(インキュバス)になったというこのことが、有紗へ対する何よりの愛情表現であると俺は感じた。


 だが、今は淫魔(インキュバス)になれたことに浸っている場合ではない。そう思った俺は、教室を飛び出して一階へと向かった。

 だいぶ淫魔(インキュバス)への変身に時間を使ってしまったが、自衛隊の姿はまだこの二階にはない。


 教室を飛び出したあと、一階への階段を降りたそのときだった。


 階段を降りた先に、ちょうど自衛隊員の姿があった。俺は、一階へ降りる階段の踊り場で足を止めた。自衛隊と遭遇してしまった。自衛隊員を目の前にして、俺は頭が真っ白になった。


 どうしよう、どうやって戦えばいいんだ。


 だがそんな思考に至ったと同時、数十人ほどの自衛隊員からの一斉射撃は始まり、鉛玉の雨が俺に降り注いできた。だがその鉛玉の雨が眼前を埋めたことによって、俺の書き換えられた本能が勝手に俺を突き動かした。


 俺は、眼前を埋める鉛玉の雨を、水族館にて有紗がそうしたみたいに、全て手で掴んだ。


 自分でもそんなことができるだなんて全く思わず、俺はそうした自分に驚いた。本能で俺はそうした。まるでお菓子の掴み取りをするみたいに、俺はいとも容易く銃弾を鷲掴(わしづか)んだ。


 鷲掴(わしづか)んだはいいものの、俺は手の中にあるその銃弾と睨めっこをして、この後どうしようかと思った。だが次の瞬間、俺はその鷲掴(わしづか)んだ銃弾を目の前の自衛隊員に向かって投げつけていた。


 投げつけた銃弾は、自衛隊員が手に持っている小銃と、ほぼ遜色のないスピードと殺傷能力で目の前の自衛隊員達を襲った。


 自衛隊員達を襲った無数の銃弾は、目の前の自衛隊員達をちょうど全員殺してくれた。


 本能でほぼヤケクソに投げた銃弾だったが、俺は目の前の自衛隊員が全て死んだことに自分の能力の素晴らしさを思い知った。


 殺した自衛隊員達の血飛沫で階段は汚れていた。俺は、そんな血と死体で汚れている階段を避ける為に少し滑空をして一階へと降り立った。さぁ、まだまだ自衛隊員を殺すぞ。


 俺はそれから、少し一階を回って自衛隊員を探したが、一階には自衛隊員の姿はなく、そのまま昇降口から校庭へと出た。



 校庭へと出た俺は、横風に乗って飛んでくる大きな雨粒に頬を殴られた。


 未だに嵐のような天候は収まってはいなかった。俺は校庭の上空に二つのヘリコプターが留まっていることに気がついた。こんな荒れた天候の中、よくヘリなんて飛ばせるなと俺は素直に感心した。


 校庭の上空に留まっている二つのヘリコプターからは、今まさに何人もの自衛隊員が降下してきていた。既に地上に降りてきている自衛隊員の姿というのもいくつか見え、俺はパッと見ただけでも数で押されていることが分かった。だから、首尾よく片付けるしかなかった。


 次の瞬間、俺は宙に高く飛んだ。それは、三階建ての校舎よりも高い跳躍だった。三階建ての校舎の屋上が見えるほどまで跳躍をした俺は、空中での身体のコントロールを効かせる為に、羽をバサバサと羽ばたかせた。


 空中での身体のコントロールができるようになると、俺はふと、目に飛び込んできた屋上に有紗の姿を確認した。有紗は屋上で、大勢の自衛隊員を相手にし、大立ち回りをしていた。そんな有紗の姿は頼もしさしかなかった。そして、堪らなく美しかった。


 気を取り直して、俺は二つのヘリコプターの方へ向き直った。


 すると、ヘリコプターの操縦士と目が合った。操縦士は、この世の終わりとでも言うかのような恐怖の表情を浮かべていた。それか、自分の死期を悟ったのか。もし後者であれば、大正解だと俺は思った。


 俺は、ヘリコプターの後ろの方まで移動すると、ヘリコプターの尻の部分を両手で掴んだ。そして、そのままヘリコプターを全身を使い背負い投げして地面へと叩きつけた。


 地面へと叩きつけられたヘリコプターは、大きな爆発をあげて木っ端微塵になった。先に校庭へと降下していた自衛隊員達は、叩き落とされたヘリコプターから逃げたが、その逃走も虚しく全ての隊員が叩き落とされたヘリコプターの爆風から逃れることができなかった。


「おぉ、気持ちいい!」


 俺はその光景に思わず笑い混じりの言葉が出た。


 俺の次の標的は勿論もう一機のヘリコプターだった。


 すると、もう一機のヘリコプターは、その場で急旋回をして俺から退避をし始めた。だがそんな事は無駄である。俺は有紗から渡されたこの淫魔(インキュバス)の能力を、すっかり気に入っていた。自分の頭で想像したことが、想像した以上の形で再現できるのだ。そして、考えるよりも先に身体は動き、今の俺は、この世界で一番自由な人間だと言えた。


 俺から逃げ始めたヘリコプターの尻の部分を、またさっきみたいに掴んだ俺は、またさっきみたいにヘリコプターを、全身を使い背負い投げして地面へと叩き落とした。


 再放送みたいな二度目のヘリの爆発が起こると、そうして校庭での戦いは幕を閉じた。


 俺は横殴りの風に、身体のコントロールの難しさを感じながらも、なんとか羽を羽ばたかせて空中に留まり、学校の屋上を見た。有紗は未だに大量の自衛隊員を相手に大立ち回りをしている。


 校庭は綺麗さっぱり片付けた。次は、有紗を助けに行かなきゃ。そう決めた俺だったが、こんな嵐のような天候の横風に身体のコントロールが中々上手くいかなかった。本当であればこのまま飛んで有紗の元まで行きたかったが、まだ淫魔(インキュバス)になったばかりで、この悪天候の中、屋上まで辿り着けそうもない。


 俺は一度校庭に降りた。地面に足をつけると、俺はそのまま膝が折れ地面に尻もちをついた。


 俺は、屋上を見上げた。校庭にいながらも、有紗の自衛隊を相手にしている音が聞こえてくる。


 どうやら、淫魔(インキュバス)状態の時は体力を多く使うらしい。俺は息が絶え絶えになり、その場に立ち上がることさえも困難に感じられた。だが、こんなところで止まっている場合ではないのだ。


 その場に辛くも、まるで生まれたての子鹿のように立ち上がった俺は、遅々とした歩みであるが一度校内へと戻った。


 昇降口付近まで辿り着いた俺は、身体から勝手に力が抜け、その場に倒れ込んでしまった。


「なんだよ……こんなときに。有紗を助けに行かなくちゃ……」


 俺は、自分に対してそんな言葉を投げかける。このとき、俺の頭の中には様々な考えが浮かんできたが、その大半が自分にとって都合の悪いことで、具体的に言えば『自分のような人間は、淫魔(インキュバス)になんてならない方がよかったのではないか』とか『生まれつき淫魔(サキュバス)の有紗と、後天的淫魔(インキュバス)の自分は全く違う生物なんじゃないか』とか『手段があるとは言えど、人間が淫魔(インキュバス)になんてなったら身体が拒否反応を起こすんじゃないか』とか……。


 なんでそんな考えが浮かんでいるのかというと、今の自分が、淫魔(インキュバス)になったことによって身体に異常な疲労感を感じているからだった。


 俺は、何を間違えたんだろう。どこで、超えるべきではない一線を超えてしまったのだろう。そう思った時、ひとつだけ明確に理解できる一線がある。やっぱりそれは、淫魔(インキュバス)になってしまったことだ。


 俺は、感じたくはないが変な直感を感じていた。――俺は多分、このあと死ぬ。


 それは、自衛隊に殺されるということではなく、全ての自衛隊を殺した後、肉体の限界を超えて俺は死ぬ。そんな妙な直感が、今の俺にはあった。


「まぁ、それでもいいや……」


 俺は最後の気力を振り絞ってその場に立ち上がりながら、そう呟いた。


「別に死んだっていいや……。だけど、自衛隊に負けるのは嫌だな。自衛隊を全てぶっ殺してから、有紗に抱かれながら死のう」


 俺は、ボロボロに感じられる自分の身体を引きずりながら、有紗を助けに屋上へと向かった。



 さっき自衛隊と戦って颯爽と降りた階段も、今の俺からしたら永遠にも感じられるほど長かった。


 自分が倒れてしまわないように、壁に手をつきながら三階を目指す俺は、重い足取りで二階へ辿り着くと、これまた重い足取りで三階へと上った。


 すると、階段を上がり切ったところに、自衛隊員の姿があった。


 俺は内心、マジかよ……と思い、自衛隊員の姿が視界の端に映った瞬間すぐさま身を死角に隠した。そしてそのまま全く音を立てずに階段を少しだけ降りたが、屋上へ行くには絶対に対処するほかない現実に、歯を食いしばりながら俺は階段を上がり自衛隊員の前へと出た。


 自衛隊員は五人だった。俺は三階へ上り切り、その五人の自衛隊員の前へと出ると、その五人の自衛隊員は俺を見た瞬間顔を引き攣らせた。だがそれと同時に俺への銃撃が始まった。


 俺は残り僅かな気力を振り絞って、その自分に向かって飛んできた殺意の塊を先程と同じように容易に鷲掴みすると、同時、豆撒きと同じ力感で五人の自衛隊員に向かって銃弾を投げつけた。


 アバウトなコントロールであったが、五人の自衛隊員は全員死んでくれた。


 バタバタと音を立てながらその場に崩れ落ちる肉の塊を見ると、俺は安堵を抱いた。まだ淫魔(インキュバス)の状態が維持できているとはいえ、もう既に体力は枯渇寸前。相手が一人であれば精神的にもまだなんとかなる気がするが、五人となるとそれを目の前にした時点で精神的に厳しさを感じる。


 俺は、床に崩れ落ちた肉の塊を踏まぬよう慎重に足の踏み場を探しながら、ゆっくりと屋上への階段を上っていった。


 屋上への階段は、踊り場までも長かったが、その踊り場から屋上の扉までも踊り場までと同じくらい長い。普段ですら屋上に行くのは面倒臭いから躊躇うというのに、今みたいな自分の状態じゃ考えただけで強い疲労を感じる。もし仮に、屋上に行くまでのこの階段を長く感じられなかった唯一の瞬間があるとするなら、それはこの屋上に飛び降りに来たときくらいだろう。


 俺は遅々とした歩みでなんとか階段を上り切ると、そうしてやっと屋上への扉の前に辿り着いた。


 こんな状態の俺が来たところで、有紗の助けになんてなるのだろうかと思う心は正直ある。だが、出来る出来ないじゃなくて、その有紗を助けたいというその気持ちを果たすことが自分にとっては大事だった。


 屋上への扉の前まで来て、俺は気づいた。先ほどまでは二階に居ても、校庭に居ても聞こえてきた、屋上での有紗と自衛隊とのドンパチの音はもう一切聞こえなくなっていた。


 もう既に死にかけている俺は、屋上への扉をゆっくりと開く。 


 すると俺は、見た。扉を開いた自分の目線の先に、その光景は飛び込んできた。


「あぁ……なんで……」


 自衛隊員に撃ち殺されたと思わしき有紗の身体が、血溜まりの中に転がっていた。



「お前らぁ! 有紗に何をしたぁ!」


 血溜まりの中に転がっている有紗の身体を見つけた瞬間、俺は自分の身なんて顧みず、大勢の自衛隊員の姿がある屋上へと言葉を張り上げながら出て行った。


 大勢の自衛隊員の銃口が俺に向けられた。だが俺はそんなの関係なしに血溜まりの中にある有紗の身体へ向かってズカズカと驀進(ばくしん)した。自衛隊から向けられている銃口は、そんな俺の動きをなぞるように動き、俺を捉え続けている。


 俺は血溜まりの中に仰向けに転がっていた有紗の身体を、両膝をつきながら抱きかかえた。


 そして俺は、熱を失った有紗の冷たい身体をぎゅっと強く抱き締めた。冷たくなってもなお、有紗の身体は俺を心の底から安心させる力があった。脈など測らなくとも分かる。有紗は、死んでいた。


 有紗の冷たい死体を抱きかかえながら、俺は自分達を包囲している全ての自衛隊員を睨んだ。自分でも分かる。今の自分の目つきはもう人間のものではないと。理性を伴っていない獣そのものであると。だがそれでいい。俺はもう、人間ではないのだから。    


「何をした? 見ての通りだよ、殺したんだ」


 すると、大勢の自衛隊員の中から、一番偉そうな重厚な格好をした男が大勢の自衛隊員を掻き分けて俺の目の前まで出てきた。俺はそいつを野良犬のように睨んだ。


「君も、助かる余地はあったというのに。残念なことだ、人間に生まれたというのに自ら進んで淫魔(バケモノ)になるだなんて。……だからといって、慈悲はないぞ」


 俺は自分の無力さを嘆いた。


 そのときだった。俺は、大量の血を地面に吐いた。有紗から流れ出た血溜まりの中に、俺の吐血が混じっていく。


 目の前のお偉いさんは、俺が淫魔(インキュバス)であるもののもう力が殆ど残っていないことを見抜いているようだった。そうでなければ、もう俺はとっくに殺されている。ギリギリ淫魔(インキュバス)の状態は維持しているものの、力がこれほどまでに枯渇していると、今の俺はただの人間と遜色ないほどに劣化しているだろう。さっきの吐血で、もう俺は自分の死を決定的なものとして悟った。


 雨は、まだ降り続けている。


 嵐のような天候が、この場に居る全ての生物を襲う。


「さぁ、死ね」


 あぁ、人生の終幕を感じる。人生のグランド・フィナーレがとうとう俺にやってきたようだ。


 これまでの人生の中で死にたいと思ったことは幾度となくあった。母親に棄てられたこと。つむぎが死んだこと。他にも色々な些細過ぎていちいち覚えてもいないようなことが、俺の精神を確実に蝕んでいって死へと誘った。


 この屋上で、自殺しようとしたことはもはや懐かしい。


 そしてそれを、有紗に引き留められたことは本当に現実にあったことなのか今じゃ不思議な出来事だ。有紗と出逢い、そして共に過ごしてきたこのたった二ヶ月ほどが俺の人生のハイライトであることは間違いない。


 でも、結局死んじゃうんだ。


 いや、人間はいつか死ぬ。それが早いか遅いかっていうだけで、別に死ぬこと自体は平等に全ての人間に訪れる。俺は今高校二年生で、世間一般では高校生の死は〝早い〟とされている。だが、俺の人生においてはそれは違った。俺はあの日、あの夜の学校で、飛び降り自殺をしようとした。だが何故か有紗がそこにいて、俺を引き留めたから俺は今の今まで生きてきた。


 でもそれって、普通に考えて確率的にあり得ないことだ。


 しかもあの時俺の飛び降りを引き留めてきた有紗は制服を着ていた。夜の学校にいること自体もおかしいのに、しかも制服を着ているだなんて、おかしすぎる。


 結局何を言いたいのかというと、俺からすれば、もうあの時に俺は死んだも同然だということだ。つまり、あの夜から今までの有紗と共に過ごしてきた時間は、神様がくれたプレゼントということだ。


 だから、今死んだってなんにも悲しくなんてないね。


 有紗の死体を抱き締めていた俺は、その力をより強めぎゅっとした。俺はもう完全に地面に尻をついていて、その時を待っている。反撃の余地など、どこにもない。


 そのことを自衛隊のお偉いさんも分かっているのか、先程よりも俺達を見てくる表情が軟化したように思える。でも、俺のような存在に向けられる慈悲なんて一欠片も持ち合わせていないだろうから、その線は諦める。


 俺は、曇天の空を見上げた。


 大粒の雨粒が俺の顔に降り注いでくる。人生最後の天気がこれかぁ、と思ったが、死んだ後もし天国に行けたとしたら、そこで素晴らしい景色が見れると思い、今は我慢する。


 俺は、抱きかかえている有紗のおでこに一度キスをした。そうして、死んでもなお綺麗なお顔をしている有紗に向かって呟いた。


「俺も、もうすぐそっちに行くよ」


「総員撃ち方用意……撃てっ!」


 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン。


 最初の鉛玉が俺の身体を貫いた瞬間、俺の淫魔(インキュバス)状態は解除され、普通の人間へと戻った。


 それでも止まることを知らない鉛玉の雨に俺の身体は引き裂かされ、蜂の巣にされた。


 肉体が木っ端微塵にされると、器を失った魂が、天へと還って行った。

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