有紗は性獣⑥
それから俺は、有紗先輩にされるがままに服を脱がされた。
有紗先輩は俺を脱がした後、茫然としている俺を見てきながら自分も服を脱いだ。互いに下着姿になり、どこからともなくやってきた甘い匂いが俺の鼻を撫でる。俺は強烈な恥ずかしさ覚えていた。恥ずかしくて死んでしまいそうだったが、有紗先輩は一切そんな素振りなど見せず、服を脱ぎ捨てた後、下着姿で俺の方へゆっくりと歩み寄ってきた。
有紗先輩が一歩、また一歩と自分の方へ歩み寄ってくる度に、俺の下半身は熱を強めた。
畳に腰を下ろし、有紗先輩を見上げていた俺は、次の瞬間、下着姿の有紗先輩にパンツを軽く引っ張られた。
「脱ぎんしゃい」
俺は、ずっと有紗先輩の下着姿に見惚れていた。息も飲むほどの美しさに、言葉一つ出なかった。俺は立つと、有紗先輩にズズズとパンツを一番下まで下ろされる。足を上げると、有紗先輩は上手くパンツを俺から脱がす。俺は、有紗先輩の前で全裸になった。
俺の下着を脱がせた有紗先輩は、俺が脱がすまでもなく、自分から下着を取りはじめた。ブラジャー、パンツ。その二つを躊躇なく遠くへ放り投げた。すると、俺の目の前に有紗先輩の全裸がお披露目された。
俺の下半身は既に限界だった。今すぐにでも射精してしまいたかった。射精そうとなんて思わなくても、今ならば勝手に出てしまいそうだ。全裸姿の有紗先輩が、俺の方へジリジリと歩み寄ってくる。そんな有紗先輩の表情は、〝魔性〟という言葉が似合うほどのものだ。
互いの息遣いが感じとれるほどの近さまで近づいて来た有紗先輩。次の瞬間、俺は有紗先輩にチンコを撫でられた。
俺は、もう限界だった。今すぐ有紗先輩にイかせてほしかったが、有紗先輩はまだまだ前戯が足りないと言わんばかりに俺のチンコを揉みしだく。頭が馬鹿になる。脳味噌が溶け始める感覚に襲われる。俺はもう我慢なんてできなかった。次の瞬間、俺は有紗先輩を畳へ押し倒していた。
理性なんてない。本能しかない。人の性欲を笑うな。俺は本気なんだ。今、イかなきゃなんぇんだ。
俺が畳に押し倒した有紗先輩は、俺の予想と反して笑っていた。もっと嫌な顔でもされるのかと思ったが、すっごくニヤけた顔を浮かべていた。そのニヤけ面は、タカが外れたような凶器的な笑顔だ。全てを壊したくて、汚したくて、暴れたくて堪らないような顔だ。
「有紗先輩……ゴ、ゴムは……?」
有紗先輩は舌舐めずりをした。そのニヤけ面は、心底馬鹿にされている気がしてならない。俺が押し倒しているというのに、それすらも手のひらの上で踊らされているように思えてならない。
「えぇ~、持ってきてないけど。そういうのって男の子が持ってくるものなんじゃないの? ……あーあ、ゴム無いならできないねぇ」
「ご、ごめんなさい……」
「ふふっ……いいよ、ゴムなんていらないよ。だって私、淫魔だもん」
あぁ、そうだ。有紗先輩は淫魔なんだ。それに、俺の精子が欲しいって言って近づいて来たのは有紗先輩の方じゃないか。俺とセックスしたいって言ったのも、あっちの方からだ……。 そこから、俺が有紗先輩に対して遠慮を捨てるまでには時間はそうかからなかった。
後は俺の勇気だけ。俺が勇気をもって事を始めれば、後は流れのままに。
俺は覚悟を決めた。そうして次の瞬間、俺は有紗先輩の中に入れた。そうして俺達はひとつになった。
俺達は、獣のようなセックスをした。有紗は性獣だった。そして俺も性獣だった。性獣と化した俺達を止める者は誰もいない。俺達は暗がりの中、畳の上で互いに互いを自分勝手に貪り合った。暴力的に、破壊的に、時に速く、時に遅く、時に互いを嫌いになるくらいに、時に互いをもっと好きになるくらいに、俺達は様々な角度で様々な貪り合いをした。
俺が有紗の中で果てるまでにはそう時間はかからなかった。
有紗に俺の下半身が受け入れられた次の瞬間、俺は果てていた。脳味噌がまるで銃で撃ち抜かれたかのような衝撃を感じた。だが一度繋がったその連結を解こうとは微塵も思わなかった。そのまま、俺は有紗とのその連結をより味わい尽くした。
俺は有紗の全身を舐めた。なんでだろう、どこを舐めても甘い味がした。果物そのものとセックスしているんじゃないかと思うほどの果実的な有紗の甘さに、俺は舌が止まらない。有紗と互いに抱き合いながら事を進めていると、有紗の反応というのが、俺の背中に回された有紗の手から伝わってきた。俺が突く度に、有紗は戦慄いた。
脳味噌はもう全部溶け、俺の全身の穴という穴から流れ出ていくのが分かる。全欲望を俺は有紗にぶつけた。今日死ぬのが確定しているみたいに、有紗を殺す勢いで堪能し尽くした。
俺は最終的に、計五回有紗の中で射精した。有紗は俺のその熱をちゃんと全て受け止めてくれて、そして有紗自身も俺のことを楽しみ尽くしたのをその表情から分かる。今の俺達は、世界で一番充足感に満ちている人間だと言えた。心が、これほどまでに豊かに感じられたことは人生で初めてだった。
俺達は互いに体力が底を尽きたことによって、セックスを終わりにした。
俺達は互いに今にも死んでしまうんじゃないかというくらい、息が絶え絶えの中、二つ用意されているうちの一つだけ敷き布団を広げ、一緒に入った。
とても狭く身体が密着するのが不可避の布団の中、俺達は互いの身体に安心感を覚え、眠りに落ちようとする。有紗の中に五回も射精したなんて、未だに信じられないことだった。別に俺はそれを後悔なんて全くしていなかった。後悔なんて、するはずもないだろう。
俺は有紗を布団の中で抱き締めながら、髪の毛の良い匂いを嗅ぎながら、言う。
「有紗……なんでさ、俺の精子が欲しいって言って来たんだ?」
純粋な疑問だった。そもそも、俺が有紗とちゃんと面と向かって話したのは、有紗に呼ばれて学校裏手に行ったあの時が初めてだ。でもなんで、有紗が俺の精子が欲しいのか、俺とセックスしたいのかはあんまり分からなかった。淫魔だから、じゃあまり理由として納得できない。淫魔というのはそういうものなのかもしれないが、人間の肌感覚でそれを理解することは難しい。
「色々理由はあるよ。勿論、淫魔だから、性的なエネルギーを確保しないと死んじゃうから、っていうのもある。だけどそれだけじゃない。正直、ただそれだけならセックスなんてしなくていいもの。口でしてあげて喉から摂取すればいい。それすらも無理だったら、キスするだけでも男の子の性的なエネルギーはむしり取れる。でも……私は、淫魔であるとか関係なく、一人の女のとして、あなたの子供を産みたかったの。だから、セックスしたかった」
自分が全く予想もしなかった答えが返ってきた。俺は考えた。まさか、と思い、訊いた。
「も、もしかして……俺のこと騙したの? キスするだけでもいいんだろ? なに? 自分が俺の子供を産みたかったからセックスが必要だったって? それって、必然じゃないじゃん……」
「確かにセックスは必然な行為じゃないけど、騙してなんてないよ。だって私、大翔に学校裏手に呼び出した時に、言ったじゃん。『私とセックスしてください』って。だから……騙してなんてないよ」
「ま、まぁそうかもしれないけど、もしかして……淫魔でも妊娠ってするの?」
「うん……するよ。だから私はあなたとのセックスを望んだの。あなたの子供が産みたいから」
「さっきの言い方的には、まるでセックスしても妊娠なんてしないみたいに言ってなかった? だから俺はゴム無いけどしようって思ったんだよ?」
すると、有紗は少し黙り始めた。俺に抱き枕のように抱かれている有紗は、先ほどから鼓動を除いて動きは少なかったが、黙り始めたことによってより一層動きを少なくした。鼓動が感じられなければ、死んでいるんじゃないかと思ってしまうほどだ。
「セックスしても淫魔だったら妊娠なんてしないと思った? 残念……します」
俺はその言葉に、思わず有紗を抱き締めることをやめた。そして有紗と反対の方向を向いた。
「なに? そんなに私が妊娠することが嫌なわけ?」
「少なくとも……都合は良くはないな」
「お願い……大翔、私達を棄てないで」
私達――その言葉に、俺は心底胸を打たれた。頭が少し混乱していた。別に有紗が妊娠しても別にいいっちゃいい。なんとかなるだろう。でも、ちょっと、待ってくれ……。急なことで頭が……。
俺は頭の中がグチャグチャになりながらも、こんな態度じゃ駄目だと思い、とりあえず急いで有紗の方を向き直した。そして言った。
「分かった。分かった。……大丈夫、棄てないから。だけどちょっと……考えさせてくれ」
「考えるって、なにを? 何を考えるの?」
「俺達三人のこと」
そのときだった。有紗は、その俺の言葉に呼応するように布団に潜らせていた顔を上げた。布団から上げられた有紗の顔は、口調の厳しさとは裏腹にニンマリとした表情だった。
「……やっぱりさ、大翔は優しいんだね」
「な、何がだよ」
俺は有紗の言葉に少し苛立ちを感じながらそう返した。五回も射精したからだろうが、抗い難い眠気に襲われはじめていた。俺の瞼はもう既に閉じていて、後は時間の問題だ。
「だってさ、自分にとって、少なくとも都合が良いわけではないのに、まだ実際に妊娠したわけでもないのに、三人って言ってくれたりさ……。逃げたりする素振りもなく、お腹の中の子供のことをもう考えてくれてるなんて、やっぱり大翔はかっこいいよ」
「ふぅん……」
駄目だ。もう、意識が保たない……。
「だからさ、本当にあなたの子供が産めたらどれだけいいかって思うとさ、ちょっぴり悲しくなっちゃうんだよね。だって私は……淫魔だから、誰の子供も産めないの……。精子なんて、すぐ死んじゃって排出されちゃうの。女に生まれたのに、好きな男の子の子供も産めないなんて、苦しすぎるよ……。……ってあれ、もう寝ちゃったか」




