有紗は性獣④
俺はその有紗先輩の言葉に、身体が硬直した。頭はフリーズして、でも下半身だけは正直に熱を帯びはじめていた。
「はい、バンザーイ」
俺は気づいたらバンザイをしていた。そして、有紗先輩に上の服を脱がされていた。
「じゃあ、タイミングよくいくよ~。はいっ、ジャンプ!」
俺は気がついたらジャンプをしていた。そして、有紗先輩にズボンを脱がされていた。
俺はハッと意識を取り戻すと、有紗先輩に手を引かれて露天風呂に入っていた。
勿論俺達は互いに全裸になっていて、俺はそのことに急に恥ずかしさを覚えはじめたが、有紗先輩は恥ずかしさなど微塵も感じていないのか、何食わぬ顔で椅子に座り、身体を洗いはじめようとしていた。
ってか俺、有紗先輩の全裸見るの初めてじゃね……?
………………。ぜ、ぜ、ぜ、ぜ、ぜぜぜぜ全裸!?
俺は、目の前の、椅子に座って身体を洗い始めた有紗先輩が、全裸だという事実を改めて認識してしまい、混乱しはじめた。
俺はどうしようかと思った。目の前の有紗先輩は全裸で、何食わぬ顔で身体を洗っている。俺は、その隣りで身体を普通に洗うべきなのだろうが、そんなこと……できるはずがねぇ。すると、有紗先輩が俺の方を振り返ってきた。するとそこで、俺は初めて、有紗先輩のおっぱいを見た。有紗先輩のおっぱいは、絵画に描かれているような綺麗なおっぱいだった。綺麗すぎてイヤらしさもそんなに感じない。でも、でも。
お、お、お、お、おっぱいだ。有紗先輩の……本物のおっぱいだ! やばい、やばい、本物だ。本物っぱいだ。あぁ、どうしよう。どうしよう……。
俺は、下半身に全身の血液が集まってか、意識が霞んでいく感覚を覚えた。頭がぼーっとして、今にも倒れそうになった。興奮で、何も考えられない。
そうして俺は、一度、意識が完全に途絶えた――
………………。
意識を取り戻したとき、俺は、有紗先輩と一緒に湯船に浸かっていた。
有紗先輩は、俺の方をじっと見てきていた。表情から察するに、俺は結構長い時間意識が飛んでいたらしい。いや、実際には意識が飛んだわけではないだろうが、過度な緊張で俺はこの湯船に浸かるまでの事を全く覚えていない。
「ねぇ……大丈夫? 話しかけても全っ然何も応えてくれなくてちょっと心配になっちゃった」
俺はその場に座り直しながら言った。
「ちょっと緊張しちゃって、意識が飛んでました。でも大丈夫っす」
「まぁ、大丈夫ならいいんだけど」
すると、その言葉を皮切りに、俺達の間には絶妙な空気感が流れはじめた。
それは、お互いに意識をした結果だった。このタイミングで、俺達は互いに互いを意識してしてしまった。気づかなかった方がいいことに気づいてしまったのだ。異性と一緒に温泉に浸かっている、その事実が俺達の調子を酷く狂わせた。
俺は、隣りで湯に浸かっている有紗先輩を、視線を少し横にずらして視界の端からも排除した。有紗先輩の姿が一欠片でも視線に入ったら、もう自分がどうなってしまうか分からないからだ。ただ、それは有紗先輩も同じようだということが肌感覚で分かる。有紗先輩も、俺のことを意図的に視界から排除しているような雰囲気が隣りから伝わってきた。
急に俺達は無言になったことによって、より一層言葉を挟むタイミングというのを見失ってしまった。
そして勿論当たり前だが、俺は完全に勃起していた。
こんな場面で勃起しないわけがなかった。湯は透明であるため、見ようと思えば有紗先輩からも俺が勃起していることなんて絶対に見える。というか、もう見られてるかもしれない。
絶対に見られたくねぇ~! と思いながらも、もう既に絶対見られてるだろうなとも思った。 そのときだった。有紗先輩の左手が、俺の右の太ももにきた。
俺はビクッとした。勃起しているからか、俺の下半身はいつも以上に過敏になっていた。
「……っ! 有紗先輩、そこは――」
「黙って。女が自分から行ってるときに言葉を挟まないで」
次の瞬間、俺は、有紗先輩にチンコを握られた。
俺の頭の中は未曾有の大混乱に陥った。なんでそんなことをするのか、なんでそんなに躊躇いなく握ってくるのか、疑問で頭がパンクしそうになった。
俺は、有紗先輩に握られただけで射精しそうになっていた。俺はチンコから我慢汁が出るのが分かった。有紗先輩の手が柔らかいことは手を繋いだこともあるから分かっていたが、自分がこれまで自分で握ってきた感触とは明らかに違う、まるで柔らかいシルクの布で触られているみたいな、そんな耐え難い快楽が俺の身に襲ってきた。
俺は息が絶え絶えになり、言葉も出せない。俺は火照る頭で何も考えられなくなる中、有紗先輩を見た。有紗先輩は、無表情で俺のチンコをオモチャのように乱雑に触り続けていた。
有紗先輩のチンコを触る手つきは明らかに手練れのものだった。これが初めてではないと思った。じゃあ誰にしたんだろうなと俺は思った。有紗先輩にも、初めてチンコに触ってどうすればいいのか分からないときとかあったんだろうか。いや、有紗先輩は淫魔だから、そんなことはなく最初から自然と、本能で男を弄ぶことができたんだろうな。
俺は、耐え難い快楽に身が壊れる危惧を抱いた。有紗先輩はただの上下運動だけに留まらず、乱雑に触ったり、時には丁寧に、時には先っぽだけを触ってみたりと、身体のツボを刺激するように俺のチンコを刺激していた。
でも、そうしてすぐに絶頂に達しそうになった途端に、有紗先輩からの刺激は弱まりをみせた。
駄目だ、イけない。有紗先輩が、イかせてくれない……っ!
俺の呼吸は不等間隔に荒々しく働き、俺は死を予感した。このまま絶頂を迎えられなかったら、俺は死んでしまう。激しく運動した後乳酸が抜けないと辛いように、射精さねぇと頭が変になっちまう!
俺は、次の瞬間、俺のチンコをマジマジと見ながら刺激を続けている有紗先輩の左肩を掴んだ。すると有紗先輩は一瞬ビクッする素振りを見せた。だがそれ以上にビクッとしたのは俺の方だった。有紗先輩の方を向いてしまったことによって、有紗先輩のおっぱいが、俺の視界全部を埋め尽くしたからだ。俺は有紗先輩の左肩を掴んだまま、一瞬フリーズすると……一体なんのために有紗先輩の左肩を掴んだのか忘れてしまった。何か意図があってそうしたはずだが、なんだったか……。駄目だ、今の俺はおかしくなってる。
そんな間にも、俺のチンコは有紗先輩による刺激を受け続けていた。
俺は、苦悶の表情を浮かべた。もう今となっては、快楽が若干の苦痛へと変わりはじめてもいた。だが、有紗先輩の手は止まらない。俺の脳は、快楽によって破壊され、もう何も考えられなくなっていた。今の俺の思考力は、ミジンコよりも低いんじゃねぇか。
「有紗先輩……もうやめて……。もう、無理。疲れた。終わらせて……」
「なにをしてほしいかちゃんと言ってみなよ」
なに。なにをしてほしいか……。沢山あるけど、今はとりあえずこれしかない。
「イ、イかせてください……」
「よく言えました」
すると次の瞬間、俺のチンコへの刺激が止まった。
それと同時、俺はハッと意識が明瞭になった。俺は、『イかせてください』と無意識的に言葉を漏らしたようだった。そのおかげで、なんとか有紗先輩の執念じみたチンコへの刺激は止まった。なのだが……。
「あ、有紗先輩……俺ェ、イかせてくださいって……言ったんすけど……」
俺の下半身はまだ強烈な熱を帯びていた。まだ、なにも解放されていないし、まだ、なにも清々しくなってない。こういう中途半端に最後までイけてない状況が、一番気持ちが悪かった。俺は刺激される前よりもより一層の悶々としたものを感じていた。
「大翔は、やっぱり優しいね」
有紗先輩は、上に両手を伸ばしながら、リラックスした微笑を浮かべながら言ってきた。
「なんすか。そんなことより早く……」
「でも、今みたいにもう我慢もできないような理性がぶっ飛んでいる状況であっても、私に無理矢理自分の性欲を押しつけようとはしないでしょ?」
「ま、まぁ、そりゃそうっすけど……。で、でも……そんなの当たり前っすよ」
「そうだね、それが当たり前であってほしいよね。でも、実際はそれが当たり前なわけじゃない。私はそれが当たり前じゃない最低な男を何人も知ってる。だから、大翔はすっごく紳士だなって改めて思ったの」
俺はなんだか恥ずかしくなって有紗先輩の反対側を向いた。有紗先輩の微笑むような小さな笑い声が、背後から聞こえてくる。
「さ、のぼせちゃったから出よっか」
「えぇ……。俺早く射精さねぇと苦しいんすけど!」
「まぁまぁ、そう慌てなさんな。それとも……ここで私に自分の性欲をぶつけて、私が今まで見てきたような最低な男の仲間入りでもしちゃう?」
俺は、腹の底から怒りが湧いてきた。駄目だ、早くクールダウンしないとどうにかなっちまう。俺は有紗先輩に「じゃあ俺は先出てるんで」と言うと、身体を拭いて露天風呂から上がった。すると、脱衣所のドアを開けた俺に、背後から有紗先輩の言葉が飛んできた。
「ご飯食べたらしようね! 約束する!」
俺はその言葉に、自分にも聞こえないくらい小さく「フフっ」と、気持ち悪い声を漏らした。




