有紗は性獣③
新幹線を降り、そこからはバスを少し乗ると、そうしてようやく草津温泉まで俺達は辿り着いた。
よくテレビやネットなどで見たことがある、所謂〝湯畑〟というのを目の前にした有紗先輩は、自分が想像すらしていなかったはしゃぎっぷりを見せた。この温泉デートを企画したのは有紗先輩だが、このはしゃぎっぷりを見ると、相当ここに来たかったことが分かった。
草津温泉の湯畑から発せられる硫黄の匂いはまさに、温泉街に来た! といった感じで、勿論小さい頃からここの事は知ってはいたものの、初めて来た俺としても、沢山目にしてきた光景が実際に目の前に広がっていることに興奮を覚えた。
「ねぇ大翔知ってる? 草津温泉にはね、沢山の源泉があるんだけど、その中でも特に名高い源泉は六つあるの。沢山ある源泉は合計で毎分三万リットルを超えて、日本一の湧出量を誇るんだって」
「へぇ~詳しいっすね」
そう言うと、有紗先輩はニヒヒと笑ってみせた。有紗先輩はここに来る前に相当情報をチェックしてきたらしい。
俺達はとりあえず、その湯畑をぐるっと一周した。湯畑は十分くらいで一周することができた。湯畑をぐるっと一周した後は、有紗先輩が何かお目当てのお店があるらしく、俺はそのお店に連れて行かれた。そのお店は食べ物を、饅頭を売っているお店だった。俺達はその饅頭屋で『三色あんまんじゅう』という饅頭を二つ買った。
饅頭屋を出た俺達は、近くのベンチに座る。俺は早速、手に持っている熱々の三色あんまんじゅうを食べようとした。が、有紗先輩が「ちょっと待って」と言ってきた。
俺は有紗先輩の方を向くと、有紗先輩は俺に向かって、自分の持っている三色あんまんじゅうを差し出していた。
「はい、あーん」
俺は、有紗先輩にされるがままに有紗先輩の三色あんまんじゅうを頬張った。それは食べたというより、口の中に押し込まれたと言った方がいいような有様だったが、三色あんまんじゅうのお味自体は最高に美味しいものだった。こういうとき、美味しい、以外の感想が出てこねぇ自分が嫌になる。
そのとき、俺は思いついた。有紗先輩に反撃しようと思った。だから、俺も言った。
「有紗先輩。はい、あーん」
すると、有紗先輩は大きく口を開けて俺の方に顔を向けてきた。そして俺は、そんな有紗先輩の口の中に三色あんまんじゅうを突っ込んだ。すると有紗先輩は、最初は熱々の三色あんまんじゅうに顔をしかめていたものの、顔の小ささに比べて意外と口が大きいのか、俺なんかよりもさっと楽に三色あんまんじゅうを頬張った。熱々なのに、よくやりおる。
「私ねー、熱いの平気よ。辛いのも好き。……なにその顔。まさか、私をからかえると本気で思ったの?」
まるで全てを見透かしてきているみたいにしたり顔で言ってきた有紗先輩に、俺はムスッとした。
「まぁ……ハフハフする有紗先輩が見たかったっつうか、からかいたかったっつうか……」
すると、有紗先輩は腹を抱えて笑いはじめた。
そんなに面白いこと言ったか? と思ったが、有紗先輩にはそれがツボに入ったようで、腹を抱えて笑いながら俺の肩まで叩いてきた。
「じゃ、じゃあさ、そんなに私のハフハフ顔が見たいんだったら、ハフハフ顔、見せてあげようか?」
「いやいいっす! なんか手のひらの上で踊らされてる感じがするんで!」
俺を小馬鹿にするような口調で言ってきた有紗先輩に俺がそう反応すると、有紗先輩は「そっかぁ」と、少し残念そうにしながら笑みを浮かべてきた。
三色あんまんじゅうを食べ終えた俺達は、一度今回泊まる旅館に行くことにした。まだ時間は午後の一時頃なので、チェックインまでには少し時間があったが、荷物を預けに行くことにした。
旅館は草津温泉のすぐ近くにあり、歩いていける距離にあった。旅館に辿り着き、中に入ると、俺達は思わず「「おお~」」と声を漏らした。旅館は、誰もが想像するような昔ながらの旅館だった。荷物を預けた俺達は、再度草津温泉へと戻った。
再度草津温泉に来た俺達は、それから、さっきは入らなかったお店などに入ったりしてチェックインまでの時間を潰した。お店を見飽きた後は、足湯に浸かってずっと他愛もないことを駄弁って時間を過ごした。
チェックインの時間になると、俺達は旅館まで戻り、預けていた荷物を受け取るとチェックインを済ませた。そうして俺は、有紗先輩と一夜を共にする一部屋に案内をされた。まぁ……夢か現実かも分からない自衛隊が来なきゃの話だが。
部屋の中に入ると、有紗先輩は急いで靴を脱ぎ捨てて、襖も勢いよく開けて部屋の中を走って見て回り始めた。その姿はまるで小学生のやることみたいに思えたが、有紗先輩は小学生の心もまだ残してる人間のようだった。
有紗先輩のドタドタと走り回る音が部屋中に響き渡る中、俺はゆっくりと部屋の中に入ると、スーツケースを部屋の隅に置いた。それから、腕を上へ伸ばして伸びをした。有紗先輩は全部の部屋の調査が終わったのか、居間に戻ってきた。
「トイレすっごく綺麗だよ!」
「よかったっすね」
「ほら、大翔来て!」
俺は有紗先輩に手を引っ張られ、どこかへと連れて行かれた。連れて行かれた先は、部屋付きの露天風呂だった。露天風呂は、高い壁に阻まれ遠くの風景などは全く見えないが、その分よりプライベートな空間となっていた。脱衣所のドアから顔だけ出して露天風呂を見ていた俺は、そのとき、有紗先輩に後ろから肩をトントンと叩かれた。
「なんすか?」
背後を振り返りながらそう言うと、振り返った先にいた有紗先輩は……服を脱いで下着姿になっていた。有紗先輩のランジェリー姿が目に飛び込んできた俺は、一瞬にして脳味噌が撃ち抜かれたような感覚に襲われた。
「さて……じゃあ、一緒に入ろうか」




