淫魔と自衛隊③
その日は水族館でのデートだけで一日が終わった。
有紗先輩の水の生き物へ対する執着は凄かった。俺は有紗先輩と長い時間一緒に居られたことが何よりも幸福だったが、有紗先輩は魚をずっと眺めていることが幸福なようだった。
俺達は帰路についた。その帰りの電車の中で、俺は有紗先輩になんでそんなに水の生き物が好きなのかを訊いてみた。すると、こんな答えが返ってきた。
「私に似ているから、かな。私は今まで生きてきて、何か自分の意志で物事を選択したり、人生を動かしてきたという感覚がないの。でも、好きなものは好きと言えるし嫌いなものは嫌いと言える。でも、自分に対して自由意志というのを感じたことがない。……私からしたらね、水の生き物もそんな私と同じに思えるの。だって、お魚さん達って、特にクラゲとかは、ただ潮の流れに身を任せて漂っているだけに見えるじゃん。私も、心はずっと宙ぶらりん」
そう言った有紗先輩は眠たいのか、どこかぼーっとした目つきをしていた。そんな有紗先輩もまた愛らしかった。
最寄り駅に着いたのは夜の七時頃だった。
俺達は駅の外に出ると、顔を見合わせた。俺は正直言って有紗先輩とまだ一緒に居たかった。だけどもう空は暗いし、女の子を一人でこんな真っ暗な中帰らせるというのもあまりいいものではない。だから俺は、有紗先輩と顔を見合わせながらも何も言えずにいた。
「どう? 楽しかった?」
有紗先輩の言葉に、俺は顔を上げる。
「はい! めっちゃ楽しかったです!」
「そう、それはよかった。大翔君はさ、私が前に言ったこと覚えてる?」
「……なんですか?」
「『一生忘れられないセックスにしてあげる。これからの時間は全て、それまでの前戯だよ――』私は、夜の学校で自殺しようとした君を引き留めて、そう言った。……どう? 私とセックスする気になった?」
その言葉に、俺の下半身は素直に反応した。
俺はその言葉に、脳味噌をぶち抜かれたような衝撃を感じた。
そうだ、有紗先輩は確かにそんなことを言っていた。俺は俺自身がどうしたいかを、自分の心に焦点を合わせながら考えた。だけど、俺の浅い思考で考えることなんかしなくても、もう既に俺の中での答えは出ているようだった。今の俺は、その言葉を有紗先輩に言われた時のような胸のモヤモヤや迷いというのは、全く無くなっていた。
だから、俺は自分の気持ちに素直になって、ハッキリとした気持ちを正直に伝えた。
「したくなりました! 有紗先輩……セックスしましょう!」
有紗先輩は、女神様のような柔らかい笑みを浮かべた。
そんな笑みにつられて俺も自然と笑みが溢れた。その俺の笑みにはハッキリとした下心が含まれていることは自分でも分かっていたが、こんな綺麗な女性を目の前にして下心を抱かない方が失礼まである。
「ふふっ、ありがとう。やっと決心してくれたね。じゃあ早速なんだけどさ……家来る?」
「……え?」
俺の下半身が強く反応した。
「言ってなかったけど、私ね、一人暮らししているの。だから、いつ来てもらっても構わないんだけど、その……今日、しちゃう?」
有紗先輩は俯く俺を下から潜り込むように見てきた。上目遣いで見てくる有紗先輩に、俺は自分でも気づかないうちに勃起していた。
俺は何故だか迷いを抱いた。実際にそういう時が目の前にまで訪れると、なんか怖くて怖くて堪らなくなる。でも頭の中はヤることでいっぱいだった。有紗先輩を今すぐにでも汚したくて、犯したくて、自分のものにしてしまいたかった。
だけど、一回本当に有紗先輩とセックスをしてしまったら、それから先、有紗先輩は俺のことを相手してくれるのだろうか……? 一回味わったから、もういいやって、そうはならないだろうか? ……いや、そんなこと考えても無駄だ。ヤリたい。
「有紗先輩……。今から……しませんか?」
俺がそう言うと、有紗先輩はニンマリとした笑みで言ってきた。
「いいよ」




