204 蝟集
「いいね」ありがとうございます!
フォスターは両親と結婚式の料理の打ち合わせをした。水の都から来る客がいることもあり、地元の祝い事で食べられている料理を作ることになった。都の人間には目新しく映るだろうとの考えだ。
給仕も全てこの家族で行う予定である。ただしリューナは除いて。目が見えないからだ。
「その分、お料理のお手伝い頑張るね」
本人はやる気満々である。当日食べるのが楽しみで仕方ないらしい。皮むき等の地道な下拵えを頑張っていた。
時停石があるので料理は予め作り置きが出来る。出来た物を置いておく場所や持ち運びのほうが問題だった。自宅で作って持って行くとなると神殿まで長い階段があるからだ。格納石に仕舞って持って行くにも容れ物がたくさん必要である。そのため、神殿の台所を借りることになった。
そして今フォスターたち家族四人は神殿の台所で準備中である。結婚式は明後日だ。台所を占領してしまうので、その間の食事も請け負うことになった。フォスターは思い切り趣味の料理が出来るとあってとても満足していた。
リューナの様子も落ち着いてきた。家にいて危険から離れたこと、家族水入らずで過ごせること、フォスターの隠し事に対して自分で納得出来たことが大きかったようだ。
セレインは久々の帰郷で父親のマフティロにさんざん構われた後、町の人々の健康診断をしていた。時々休憩と称して料理の準備の様子を見に来る。
家族にリューナのことを聞いたのか、何か言いたげにフォスターの顔を見てからリューナへ視線を向けていたが、気がつかないふりをした。リューナがこの場にいるのにセレインと神の子の話など出来ないからだ。
カイルはファイスールとテレクエルの双子を盾に乗せて遊ばせていた。盾の乗り物はこの二人にも評判が良かった。
また、二人とも反力石を使ったことが無かったようで、暇なこともあり宙に浮いて遊んだりもした。
「あまり高く浮かぶと危険だよ」
「理力が無くなって落下死するっていうんだろ?」
「自分の理力量くらい把握してるよー。これでも大神官候補だよー?」
「まあ、それならいいのかな……?」
「どこまで高く上がれるかやってみたいよねー」
「それは神様の怒りを買うからやめておけって言われてるよ」
カイルは双子に釘を差した。
「……って言われたんだけど、そうなのー?」
ファイスールは通常の昼食の配膳を始めようとしていたフォスターのところへやって来て質問した。
「そう言われてきたけど」
「誰も確かめてはいない?」
隣にいるテレクエルも質問してきた。
「まあ、それを実際やって理力が途中で無くなったら絶対落ちて死ぬから。誰もやらないよ。せいぜい町を見渡せる高さより少し上くらいまでかな。山脈の向こうの海を見ようとしたりするし」
「少しだけ残るようにして、ぎりぎりで反力石から手を離して地面直前……までいかなくても屋根くらいの高さでまた石に触ればよくないー?」
「将来の要人にそんなことさせられないだろ」
「今の要人もやりたがると思うけどねー」
「母さんならやるね」
「リジェンダさん……やりそう……」
水の都の大神官という要人でありながら、好奇心で動くような性格のリジェンダを思い浮かべた。
「どこまで高く行けるか気になってるんだ」
「リューナちゃんは神の子だけあって理力量が桁違いじゃーん?」
「ちょっと試してみてもらえないかなって」
「リューナに?」
一瞬考えて猛反対した。
「だ……駄目だ! 危ないのもあるけど、そのまま神の世界に行って戻って来なくなったらどうするんだ!」
「あー。そういうこともありえるのかー……」
「……考えが足りなかったね。ごめん。やらないから安心して」
双子から素直に謝られ、フォスターはムキになってしまったことを少し恥ずかしく思った。
「じゃあ、僕らが試してみるねー」
「落ちても受け止められるように途中の高さで片方は待機するよ」
「それもどうかと思うけど」
「母さんがやるよりいいでしょー?」
「まあ、確かに」
それにリューナで試されるよりはましである。
「リジェンダさんといえば、なんとなくこっちから連絡するのは気が引けてさ。水の都から離れてから話してないんだけど、そろそろ捜査に何か進展あったんじゃないかと思うんだ。何か聞いてる?」
「詳しくはこっちに来たときに話すってー」
「ちゃんと来れるの?」
「そのために仕事頑張ってるって言ってた」
「しっかり泊まるつもりらしいよー」
関係各所に無理を言ってそうだなと思った。
カイルの母パージェは新婦であるトヴィカの衣装の最終チェックをしている。パージェはここでの結婚式が決まったことを知り、やる気満々だったそうだ。新郎のコーシェルの衣装ももちろんチェックしているが、女性の衣装のほうが楽しくやる気も出るらしい。
パージェの夫でカイルの父であるクワインは神殿に来ていなかったが、カイルの妹弟は神殿内の学校にいる。昼食はクワインも呼んでカイル達家族も含んだ三家族と双子の総勢十八人という大人数でとることになった。とても賑やかである。
昼食は具材を真ん中に置き、それをパンに挟んだり乗せたり、それぞれが好きなものを取って食べる形式にした。
ゆで卵を切ったもの、ハム、ベーコン、腸詰を焼いたもの、塩漬けの塊肉をほぐしてソースで味をつけたもの、野菜、柔らかくしたバター、柔らかいチーズ、硬いチーズを薄く切ったもの、ヨーグルト、果物、ジャム、甘いクリームが並べられている。パンは丸いものを薄切りにして置いてある。他にも汁物として野菜を裏ごししたスープを用意していた。
「たまごとどかないよう」
「はいはい」
「ぼくいちごとクリームがいいー」
「だーめ。甘いのは最後よ」
「テック、ほらこっちの肉のやつ美味いから食べな」
カイルの妹メイシーと弟テックがそれぞれ欲しいものを要求している。カイルとその両親が幼い子どもたちの面倒をみてやっていた。
コーシェルは新妻トヴィカに世話を焼かれており、弟のウォルシフにからかわれていた。セレインは父親のマフティロが色々勧めてくるのを鬱陶しい様子であしらっている。ニアタは大神官の父ソレムの届かないところにある食材をパンに乗せて渡してやっていた。
リューナの目が見えないこともあり、ジーニェルとホノーラは注文を聞きながら次々と具を乗せたパンを娘の皿へのせていく。そのリューナは腹が減っていたこともあり大喜びで次々と平らげている。フォスターはそれを眺めながら元気になってよかったと考えていた。リューナの食欲があるのは元気になった証拠である。
自分の隠し事がリューナを苦しめていたのかと思うと胸が痛むが、本当のことを話すわけにもいかず、納得してくれたことにほっとする。自分の嘘のつき方がもう少し上手ければリューナに疑われなかったかもしれないとも思った。
「なんかいいねー、こういうのー」
「そうだね。うちじゃやらないもんな」
ファイスールとテレクエルの双子が少し羨むような言葉を口にした。
「そうなんだ。やっぱり大神官の家だけあって形式張った感じなの?」
「んー、使用人をとりまとめてるばあやがうるさくってー」
「大神官の子の行儀作法が出来てないと世間体がって言われてね」
「まあ、そうだろうね」
「母さんは全然うるさくないんだけどねー」
「父さんもね。元々使用人だったから」
「そうなんだ?」
そういえば雑用係をしているようなことを言っていたなと思い出す。喋っているところを見たことがないので口うるさいなどという考えは微塵も無かったが。
「だからこういうの楽しいよー」
「みんなでわいわい食べると普段の食事より美味しく感じるよね」
「じゃあ遠慮しないで食べてくれ。たくさん作ったから」
「リューナちゃんがみんな食べちゃうんじゃないのー?」
「さすがにこんなにたくさんは食べられないよ!」
リューナがむくれて反論した。ファイスールがよくこうして絡むので、すっかり慣れて普通に会話出来るようになっている。
カイルは話に入りたいのだが、そのきっかけが掴めず内心焦っていた。
サンドウィッチの中身を作ってそれぞれ勝手に挟んで食べる昼食をたまに家でやります。
生クリーム泡立てて果物用意すると実質フルーツサンド食べ放題状態で大満足ですよ!
コンビーフとキャベツ刻んでマヨネーズと和えたものが好きなんだけど、主人公の地元には牛がいない設定なので出せませんでした。作中に出てるのはプルドポーク的なものだと思われます。
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