夏祭りのシメは花火でしょう!
花火が見える場所まで、手を繋いで歩く。
いつ以来だろうも小学校の頃は、おとうさんと自然と手を繋いで歩いてた。
あれかな、おとうさんに本気で告白してからかな。
手を繋いだりしなくなった。お風呂や寝る場所も別々になったな。寂しかったけど、ちょっと距離おきたかったからちょうど良かった。
でもあれ、本気だったんだけどな。冗談にされてるけど。
それで、最近というか、魔法少女になったくらいから、また仲良くなれてる。
まぁ、一緒に寝たり、お風呂に入ったりってのは、流石に無いけど。ご飯作ったり、テレビとか一緒に見たり。買い物とかも一緒に行く。
遊園地には、また一緒に行って、ジェットコースターとお化け屋敷で泣かせたいな。と思う。
単に遊びに行くってのは、告白から行ってない。
今日が、久しぶりで、張り切って浴衣着ようとして失敗しちゃった。
でも、おとうさんに浴衣着せてもらって、髪も纏めてくれた。嬉しかった。
お母さんとおとうさんの写真ももらえたし。
災い転じて福と成すって感じ?
舞達には、お父さんといっしょに何かするなんて、信じられないって言われるけど。
「でも、莉乃パパだしなぁ」
だって、舞のお父さんも、背が高くてカッコいいんじゃ?
……ダメらしい。
楽しいよ。いっしょに色々するの。
で、今、自然と手を繋いで歩く。
昔のように、親子で、恋人繋ぎではないけれど。
暖かさと安心感を感じる。つまずかないようにしっかりと、でも痛くないよう優しく。
「俺、モテねえから、イケメンの気持ちわかんねぇ」
ドラマ見てた時、言ってたけど。
私の友達全員を虜にしておいてよく言う。
でも、おとうさんの武器は、この暖かさ。やさしさ。
そそっかしいけど、人間が大きいって言うのかな。
でないと、私を引き取って育てたりしないよね。
「ありがとう。」
って言葉は、花火に消された。
挨拶とお礼をきちんと言える人になりなさい。
おとうさんが、一番言ってたこと。
お礼なんか、言っても言っても言い尽くせないよ。
「この辺で見えるな?」
おとうさんが問いかけてくる。
「うん。」
二人で空を見上げる。花火があがる。きれいっ。
隣を見ると、おとうさんの顔。花火の明かりが当たって、いつもと違って見える。
やっぱ、この人、好きだなぁ。
おとうさんが、私が見つめてるのに気付いて、こっちを見る。
「おっ、なんか付いてるか?たこ焼きの青のりとか?」
「ううん。大丈夫だよ。なんでもない。」
「あ、手か?なんか昔みたいに繋いじゃってたな。もういいか?」
手をはなそうと力を抜いてくる。
イヤだな。離されかけた手を、私から握り直す。
指を絡めて、恋人繋ぎみたくした。
「えっ、」
おとうさんもちょっとビックリしたようだったけど。
「いい、もちょっとこのままで。」
顔を見てるのが恥ずかしくなって、花火を見ながら言う。
「ま、莉乃が良いなら、良いか。」
「うん。」
おとうさんもなんだか嬉しそうだよ。
うん、私が良いなら、いいの!
心で強く思う。
バババババっ!
連続して花火があがる。すごくきれい!
手は繋いだまま。
浴衣に馴れてない下駄。立っているのも疲れてきたな。
「そろそろ終わりかな。」
「うん。」
バーンっと今までで一番大きな花火があがる。
もう、終わりか…
もう少し、このままでいたかったけどな。
「じゃあ、帰ろうか。」
「うん。」
さっきから私、うん。ってしか言ってない気がする。
でも、繋がれた手が、暖かくて、嬉しくて、はずかしくて。
うーん。何も言えねぇ!
ぢゃなくて。
とか思ってたら、足の指が、痛くなってきた。
いや、ずっと擦れてたんだけど、嬉しくて、痛くなかったの。
ん、痛み感じなかったのかな。
「お、おとうさんっ。ちょっと。」
「ん、どうした?」
立ち止まって聞いてくれる。
「足の指が…」
近くのベンチまで連れていってくれて、足を見てくれる。
「うーん。下駄に指が擦れてるな。痛いだろ。歩けるか?」
「ん、たぶん、大丈夫かな。」
大丈夫じゃないかもだけど。
家までは、1kmくらい。何とかなるよ。
「しゃあないな。ほらっ!」
おとうさんは、学生のころ関西にいたらしくて、たまに出る関西弁。
機嫌が良いときにでるみたい。
私の前に座って、背中を私に向ける。
「小学校の時以来だけど、家まですぐだし、おぶってやるよ。」
「えっ、でも、重くなってるよ。」
「大丈夫だって、ほれっ!」
あ、でも、関西弁でてた…
機嫌がいい?ってことは、おんぶしたいのかな?
「ありがと、じゃあ、お願いします。」
「おう。任せとけ!」
おとうさんの背中に乗っかる。
あ、これだと、胸が…
「あ、も、ちょっとしっかりと、つかまってくれると楽かな。」
おとうさんが苦しそうに言う。
そっか、中途半端につかまると、負担かかるのかな?
もう、良いや。ぎゅっと、首に手を回して掴まる。
これだと、小学生の時は当たらなかったものが、あたっちゃう。
でも、いいや。おとうさんだし…
「重い?大丈夫?」
おとうさんに聞いてみる。
「うん。でも、軽いもんだ。それに…」
ん、なんか言おうとした。
「莉乃が大きくなっていくのが、俺の幸せなんだし…」
あ、そういうことか。やっぱ親だもんね。
当たっているモノの感触で成長感じている訳じゃないよね。
でも、浴衣着せてもらっている時、さりげなくチェックしてくれていたことを、私は知っているよ!
大きな背中。あたたかい。凄い安心感。
小学生の頃は、疲れて歩けないって言ったらよくおんぶしてくれた。
その時と同じ安心感。至福な感じ。
私は、お母さんがいなくても、大丈夫なんだって思わせてくれる。おとうさんがいるから…
「ありがとね。」
呟くように言ったけど。
「大丈夫だよ。莉乃の事、大切に思っているから、これくらい。」
うん、おとうさんが優しいの知ってる。
ずっと前から、知ってる。
おとうさんが、エイちゃんだったときから、ずっと優しかった。
そうだよ。私、エイちゃんがお父さんだったら良いのにってずっと思ってたんだよ。
お母さんの事。思い出して辛かったけど。
おとうさんが、エイちゃんだった時の事も思い出せたよ。
エイちゃんが、おとうさんになってくれて本当に良かった。
でも、もしエイちゃんが叔父さんのままだったら。
私の初恋は、また違った展開だったのかなぁ。
真面目だから、姉の娘とは付き合ってくれなかったかなぁ?
あ、でも、おとうさんのお母さんへの恋が実って、本当にお義父さんになっていた可能性もアリか。
「どうしたんだ?黙って。」
おとうさんに聞かれた。妄想でずっと黙ってたみたい。
「だから、ありがとうって。」
「莉乃はまだ軽いもんだし、大丈夫だって」
「いや、違ってて…」
「ん、どうした?」
「うんんっ。なんでもないっ!」
ちゃんと、ありがとうは言ったからね。
おんぶしてくれた事もだけど、私の事、本当に大切に思ってくれている事、わかったから。
もう一度は、もうしつこいだろうから心で。
ありがとう。
大好きだよ!
ってのは、まだ言ってあげないよっ。
不定期の投稿でスミマセン。
これからも、不定期投稿になりそうです。




