三十路女、獣族に会う。その5
デッキに横たわるように、伏せっている犬を抱き上げようと、手を伸ばした瞬間。
ガブッ!
「、、っ!」
噛まれたー!
グゥルルルっと、こちらをメチャクチャ警戒している。
次の瞬間、眼を見開いているような感じで、急に唸り声を止めた。
「大丈夫だよー?怖くないよー。」
そして、なぜかいきなりおとなしくなった犬を抱き上げで、部屋に入った。一通りこの部屋の設備みたいなものを聞いているから、まず浴室に向かった。
「偉いねー!いい子だねー!」
あれから、全く威嚇しなくなっておとなしくされるがままになっている。
泥もついてたから、湯船のお湯をかけてあげる。
犬用ではないけれど、身体を洗う洗剤で丁寧に優しく洗っていると、血が付いてるのは、この犬の血では無いようだった。
「怪我してるわけじゃ無かったんだねー」
後ろの脚を持って洗っていると、あからさまにビクッとなった。
「君、男の子なんだねー」
そのまま構わず、全身をくまなく洗ってゆすぐと綺麗な黒い毛並みが現れた。
タオルで拭いてあげてると気持ち良さそうに眼を細めている。
余談だけど、このタオル、不思議な事に身体を拭きあげると濡れた髪もすぐに乾く特性を持っている。ドライヤー要らず!
「偉かったね、お腹空いてない?」
たしか、小さなキッチンもどきがあって、飲物もあったはず、、、
「水しか無いけど、、、」
犬は私の動きをジーーっと見ながら、水を飲み始めた。
狼みたいな犬だなー、、、って、獣族なのかな、、、
水を飲み終わったのか、私の側まで来て足下にもたれ掛かるように横になった。
「眠いの?おいで、布団で寝よう?」
そう言って、抱き上げで布団に入った。
頭を撫でて、普通の犬よりとんがった耳を撫ぜながら、その眼を見た。
同じ、深い青、、、
とろんとした眼を見つめ、無意識のうちにおでこのあたりに、チュっとキスをした。
「お疲れ様。ゆっくり休もうね。」
なぜか、そんな言葉が口から出た。




