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狙われた翼と揺れる翼

 夕暮れの街。


 屋上のフェンスに、小さな雀が止まっている。


 ちゅん。


 ちゅん。


 その前に立つ少女。


 雀宮ちゅな。


「ねえ」


 微笑んで話しかける。


「今日も来てくれたの?」


 雀が首をかしげる。


 ちゅなは優しく笑う。


 その時。


 空気が静かに裂けた。


 ヒュン――


 蒼線。


 ちゅなが顔を上げる。


 空中に。


 蒼い翼の少女。


 セイラ。


 無表情。


 一直線。


 ちゅなの胸が跳ねる。


「……セイラ」


 クロもハクもいない。


 単独。


 静かな空。


 風だけが流れる。


 セイラが降りる。


 屋上に。


 数メートル先。


 瞳がちゅなを固定。


「主核」


 静かな認識。


「単独確認」


 ちゅなの喉が鳴る。


「……来たんだね」


 セイラが言う。


「排除」


 蒼翼が開く。


 刃が形成される。


 一直線の殺意。


 ちゅなは動かない。


 逃げない。


 ただ立つ。


 心臓が速い。


 怖い。


 でも。


 目を逸らさない。


 セイラが消える。


 ヒュン!!


 直線突進。


 刃が振り下ろされる。


 その瞬間。


 ちゅなが言う。


「悲しい鳥の顔してる」


 時間が止まる。


 刃が止まる。


 ちゅなの目前で。


 数センチ。


 風だけが揺れる。


 セイラの瞳が揺れる。


「……」


 理解不能。


 予測外。


 任務外。


 ちゅなが続ける。


「ずっと」


 小さく。


「寂しい空を飛んでる顔」


 セイラの呼吸がわずかに乱れる。


 刃が震える。


 ちゅなが一歩近づく。


 恐怖を越えて。


「一人で飛ぶとね」


 優しい声。


「寒いよね」


 セイラの瞳に何かが浮かぶ。


 遠い記憶。


 冷たい空。


 孤独な飛行。


 守れなかった何か。


 失った何か。


 刃がさらに止まる。


 ちゅなが言う。


「でもね」


 胸に手を当てる。


「一緒に飛べるよ」


 雀色の光が滲む。


「わたしたちと」


 セイラの心が揺れる。


 任務。


 排除。


 主核。


 だが。


 目の前の光。


 温かい声。


 共鳴の気配。


 翼が震える。


 刃が下ろせない。


 沈黙。


 長い静止。


 そして。


 セイラが後退する。


 刃がほどける。


 蒼翼が揺れる。


 初めて。


 任務が止まる。


「……排除」


 小さく言う。


 だが続かない。


 言葉が切れる。


 ちゅながそっと言う。


「飛べるよ」


 静かに。


「あなたも」


 セイラの瞳が完全に揺れる。


 感情。


 迷い。


 揺らぎ。


 そして。


 蒼翼が開く。


 だが突進しない。


 風が乱れる。


 直線が崩れる。


「……任務」


 かすかに。


「未遂」


 ヒュン――


 蒼線が空へ逃げるように伸びる。


 ちゅなが空を見る。


 胸に手を当てる。


「……揺れた」


 小さく言う。


「翼が」


 雀が鳴く。


 ちゅん。


 風が吹く。


 夕空に蒼線が消える。


 直線は初めて迷った。

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