【後日譚】イリスとリオ
※誤字修正しました<(_ _)>
※解説追記しました(`・ω・´)ゞ
「イリス。また縁談が破談になったのか」
「そうよ。言わないでよ。恥ずかしいから」
ここはブリックウォール辺境伯領の領主邸。
そこでブリックウォール辺境伯令嬢のイリスとその騎士・リオが向かい合っていた。
「もう、諦めろ」
リオはイリスへの距離を詰める。
「何でよっ!別にいいじゃない夢を追っかけたって!お家のためになる範囲で選んでるんだから!」
「それはローゼンクロス辺境伯の派閥の貴族か」
「そうよ」
「そうか、なら、なおさら諦めるべきだ」
リオは強い口調でイリスに告げる。
「まさか、ローゼンクロス辺境伯家からの圧力がかかっているってこと?」
「違うな」
「じゃぁ、何でよ」
「俺がローゼンクロス辺境伯家にお願いして、お前の縁談を全て潰すように根回ししてもらっている」
「・・・は?」
「だから、お前は俺以外とは結婚できない運命なんだ」
「はぁっ!?どう言うことよ、それ!私一応貴族令嬢よ!?しかも辺境伯令嬢!リオは平民だから、け、けけけ、結婚できないじゃないっ!!」
「じゃぁ、俺が平民じゃなければ結婚できるのか」
「それは、その。それに値するものがあれば、お父さまもお許しくださると思うけど。やっぱり無理よ!こんな身分差!」
「じゃぁ、身分差がなければいいと?」
「だからそう言うことじゃなくて!」
「イリスは俺のことを好きじゃないのか!」
「うええぇぇっ!?言えるわけないじゃない、そんなこと!」
「俺は言える!好きだ!イリス!!」
「はああぁぁぁぁっっ!!?だから無理って言ってるじゃなあああぁぁいっっ!!!」
そしてイリスは急いで屋敷を飛び出した。
―――
イリスが華麗に走り去り、リオもその後を追う。
「くっ!イリス!逃げ足だけは相変わらず早い!吸血鬼の血が流れている以上、追いつくのは余裕だが。たま、来い!」
リオがパートナーである魔獣の名を呼べば。
『わふ~っ』
(どうかした~?)
自身とお揃いの漆黒の毛並みを持つ2本のしっぽともっふもふボディを持つ大きなわふたん・魔狼がその傍らに降り立つ。
「よし、イリスを追うぞっ!」
『わふ?』
(また喧嘩でもした?)
「イリスを嫁にする!」
『わふ―――っ!!!』
(おっしぇあぁぁ―――っ!任せろ、イリスお嬢が遂にマスターのお嫁になるーっ!!!)
リオは素早く魔狼・たまに跨り、たまは勢いよく地面を蹴って駆けだした。
―――
「いやあぁぁぁぁぁ―――っっ!!?何で!?何でたまに乗って追いかけてくんのよ、あいつ―――っっ!!!」
「イリス―――っっ!!!」
「しかも追いつけるくせに私の脚に合わせてスピード操作しよるしムカつくううぅぅ―――っっ!!!」
そんな光景を見たブリックウォール辺境伯家の騎士たちは語る。
『あぁ、またやってるよ。ウチのお嬢さま』
『痴話げんか好きだなぁー』
『でさ、リオとお嬢はいつくっつくんだよ』
『辺境伯さまに似てイリスさまはツンデレだからなぁ~』
そして。
「遂に追い詰めたぞ」
「くぅぅっ、卑怯よ!」
イリスは遂に行き止まりに追い詰められていた。
「俺と結婚するか、しないのか!」
「あのねぇ。一応確認だけど、駆け落ちとか絶対やだかんねっ!?お父さまとお母さまに迷惑がかかるし、それにウチの末っ子の弟のロナも情緒不安定になるでしょーがっ!」
「無類の姉ヲタ・ロナさまには、事前に許可は得ている」
「何ですってぇっ!?姉性分が枯渇すると発作を起こすほどに病的なロナが、何故っ!!」
「ふんっ、この屋敷で小さな頃から世話になっているんだ。とっくの昔に協定は結んである」
「んなっ、どういうこと!?」
「ロナさまには、イリスのツンデレを余すことなく提供し、報告差し上げている。その成果を評価され、俺ならばイリスと結婚しても許すと言われた」
「はああぁぁぁ―――っっ!!?ロナの裏切り者おおぉぉ―――っ!!!姉厨のくせに姉を裏切りおったぁっ!」
「いえ、裏切ってなどおりますまい。ロナさまは姉を愛するが故、姉をいかに愛するかを常に考え選択できるお方ですから」
「んなっ!でも、ロナは百歩譲ったとしてお父さまは!?お父さまはどうなのよ!リオとの結婚なんて絶対反対するわよ!」
「いや。俺がこの家に婿に入れば、永続的にたまがここに常駐するし。俺はローゼンクロス辺境伯家で魔獣の訓練にも一緒に参加させてもらっていることもあって、こちらにも魔獣使いと魔獣のバディを派遣してもらっているしな。そのコネクションが産まれるから、辺境伯さまは割とノリノリだぞ。それに吸血鬼の習性もしっかりと理解してくださっている。さすがはローゼンクロス辺境伯家と長い付き合いのある家系なだけはある」
「まぁ、お父さま自体はフローリア公爵家の出身で婿だけども。でもあちらも森やら山やらが間にあるとは言え隣接してるしね。吸血鬼に関してだってよく理解してると思うけど、その習性のなにを理解しているのよ」
「俺が、如何にイリスの血に執着しているかだ」
「は?」
「イリスが調子に乗って転んでひざから血を出した10歳の6月8日午後2時8分28秒。思わず飲みたいとそそられた」
「いや、何で秒数まで記憶してんのよ」
「イリスが料理を作るんだと言って包丁で指を切って血を出した12歳の11月22日午後17時58分29秒。その血を嘗めてやはりその血を自分のものにしようと決めた」
「え?確かに消毒とか言ってたけど、アンタそんなこと考えてたの?」
「あと、イリスがやっぱり剣をやりたいと言って無理矢理剣を持とうとして指を切って血を出した13歳の6月7日の・・・」
「いや、もういい!その後やっぱりアンタが消毒とか言って私の指を嘗めてたけど!まさか、それも!?」
「そうだ。俺は、お前の血を誰にも渡したくない。だからお前を嫁にもらうと決めていた。俺の吸血鬼の血が、お前を逃がさない」
「え‶」
「俺と結婚してくれ。じゃないと俺は・・・イリスを監禁しなくちゃいけなくなる。既に辺境伯さまには許可をとって、イリスの監禁用の部屋は用意している。このままイリスの血が他の吸血鬼に渡るなんて考えられないし」
「え?何その監禁用の部屋って。私、監禁されるの?」
「安心して。ふれあい合同演習の時はしっかり毎年人質役をやらせてあげる。それと助けに来る騎士も俺」
「その問題はどうっでもいいわぁっ!てかどっちにしろ監禁じゃないのっ!」
「さぁ、俺と結婚するか、監禁か」
「うぐぐ・・・お、お母さまは?一応、お母さまはブリックウォール辺境伯家の直系の娘よ?お義父さんがツンデレってもお母さまにはかなわないはずよ」
「辺境伯夫人はノリノリだ。元より先代ローゼンクロス辺境伯夫人軍団とはマブダチらしいぞ」
「んぐあああぁぁ―――っ!!セシナ一族めぇ―――っ!!!」
「何故いちいちセシナさまに怒りをぶつけるんだ。セシナさまは俺にいろいろな技を仕込んでくれた」
「例えばどんな?」
「いかにイリスに気付かれずにその背後に忍び寄り盗視盗撮するか、影に紛れて付け回すか、イリスの周りに忍び寄る不埒な男どもを屠るかまでみっちりと」
「あんにゃろおおぉぉぉ―――っ!やっぱり元凶はアイツじゃないのっ!てか、アイツ絶対腹黒よねっ!?」
「イリス。セシナさまは素晴らしいお方だが、今は俺が目の前にいるんだ。俺のことだけ考えて、俺を選んで」
「その。じゃぁ、吸血鬼の習性だけじゃなくって、辺境伯令嬢の私に相応しいだけの実績を示しなさいよ!」
「示せればいいのか」
「ま、まぁ。それなら仕方がないというかなんというか」
「では。まずブリックウォール辺境伯家専属騎士団ベスト3の実力に入った。因みに首位は団長、次席は副団長。俺は将来の副団長ポストに内定している」
「んなっ!?いつの間に!?」
「また、吸血鬼の王とローゼンクロス辺境伯騎士団長からもその腕と長年のふれあい合同演習での活躍を評価され、吸血鬼の王から将来が期待される騎士としての勲章をもらった」
「そんなの聞いてないんですけど!?てか、人間側の所属なのにいいの!?」
「そこに住んでいようと、同族は同族だからいいと声をかけてもらえた。それに吸血鬼の派閥としては、俺はブリックウォール辺境伯家と共にローゼンクロス辺境伯家に入っている。だから問題ない。吸血鬼の自治区との関係性も強化できるし、ローゼンクロス辺境伯家の騎士としても更なる活躍が見込め、将来を約束された俺が辺境伯令嬢の夫に相応しくないとでも?」
「うぐぐ。その、えっと・・・まぁ、お父さまもお母さまも納得できる内容なら、別に結婚してあげなくもないんだからねっ!」
イリスは目を背けつつもそう吐き捨てた。
「そうか、イリス。嬉しい」
「え?」
イリスが顔を上げると、リオが満面の笑みを浮かべていた。
「ほら、乗って」
リオが差し出す手を、恐る恐るとったイリスはあっという間にたまの上に引き寄せられ、リオの前に座らされる。
『わふー』
(うぇーい。イリスちゃんがマスターの嫁ー)
たまはリオとイリスを乗せて踵を返して再び駆けだした。
「さぁ、早速辺境伯さまに報告をして、今日誓いの儀式をしよう!」
「ちょっと、早すぎない?」
「いや、今すぐに、イリスを手に入れたという証明が欲しいんだ」
リオの腕が、イリスの体を包み込む。
「ちょっ!?リオったらっ!そ、その代わり、へ、変な監禁部屋は解体してよねっ」
「え?しないよ?」
「でも、結婚するなら監禁はなしでしょ?」
「吸血鬼の蜜月、知らないわけじゃないよね」
「そりゃ、知ってるけど・・・って、えっ!?まさかそれに使う部屋!?」
「そうだよ。俺とイリスの夫婦の寝室。ちゃんとイリスの好みに合わせてふかふかのベッドもくまちゃんぬいぐるみもしっかり揃えているから安心して♡」
「えええぇえぇぇっ!?ちょっと、聞いてない!何それ!お、降ろしっ」
「無理」
「・・・」
「一緒に、楽しく過ごそう?」
「ひぇっ」
―――その後誓いの儀式を颯爽と終えたリオとイリスは、吸血鬼の蜜月をたっぷり1か月、夫婦の愛の寝室で過ごしたそうな。
因みにその模様は定期的にロナに報告が行っていたことはイリスはまだ知らない。そして、リオの類まれなる溺愛にツンツンしている暇もなくなるとは、まだ誰も知る由もないのであった。
※ロナについてイリスのセリフに解説を追記しました




