フローリア公爵夫妻の来訪
※今回は第3者視点の提供でお送りします※
―――ローゼンクロス辺境伯邸
「コホンッ、辺境伯殿」
ローゼンクロス辺境伯辺境伯邸の応接間では辺境伯一家の馬車にて送迎されてきたフローリア公爵夫妻のうち、フローリア公爵そのひとと現辺境伯・マティアスが互いに顔を合わせていた。
因みに、マティアスは現在ノーマスクでその美しすぎる素顔を晒している。
「はい、公爵殿」
そしてその美しすぎる顔で微笑みを返す。
「娘を助けていただいた貴殿らには感謝はしている」
「えぇ、ウチもかわいい義妹を迎えられて感謝しておりますよ」
にこっと微笑むマティアスに、フローリア公爵エルドは「う~ん」と低い声で答える。
「しかし、吸血鬼の婚姻と言うのは・・・こうも急なのか」
無論、エルド自身も吸血鬼側の風習、慣習などにはそれなりに詳しいし、従兄弟のブリックウォール辺境伯とも情報交換はしているので常に最新の情報も掴んでいるつもりではいたのだが。
「婚約も急だったと思いますが」
マティアスが特に歯牙にもかけないように美しくさらりと言い放てば。
「はぁ―――」
エルドが嘆息したのも無理はない。
―――
「遂にフィアの花嫁姿が見れるのね~、もう半分嫁いだようなものだったけれど。本当はね、ベラもトールも来たいといっていたのだけど。ベラは早速ルックくんと一緒に王都に向かわなければならなかったし、トールにはイオを任せてきたから。私たちふたりの立ち合いとなるけど嬉しいわ」
「・・・母さま」
その隣の部屋ではフローリア公爵エステル夫人とその娘のフィアがふたりで久々の母娘の時間を堪能していた。本当は公爵自身もこちらに来たがっていたのだが、その前に辺境伯のマティアスと話すことがあるということで、現在はエステル夫人とフィアのふたりっきり。メイドのエリンも気を遣って席を外している。
「吸血鬼の婚姻の誓いだなんて、両親と兄妹終いくらいしか立ち入れないのよ。光栄だわ」
「そうなの、ですね。人間側だと、ベラお姉さまが嫁がれた時は参列者もたくさんいらっしゃいました」
「そうそう。両家の親戚一同勢ぞろい。誓いの儀式が終わったらその後は友人知人たちへのお披露目に、結婚披露パーティーよね」
「はい。人間の土地・・・貴族や王族ではそうですが、吸血鬼の場合は誓いの儀式の後はそのままお部屋に行っていいそうです。私、貴族令嬢らしくないかもしれないけれど、パーティーなどひと前があまり得意ではないので・・・」
「そうね。貴族令嬢として随分と無理をさせちゃってごめんね」
「そんな、母さまは必要なことをしてくださったのです」
「ありがとう。フィアは優しいわ。だからこそ、フィアが幸せそうな表情をしているところへお嫁に出せてよかった」
「はい、セシナさまもお優しいですから」
「そうね」
「お部屋に入った後も、すぐ寝ていいのだと仰ってくれましたし」
「・・・フィア。フィアには随分と淑女教育などもしてきたと思うのだけど」
「はい、母さま。何か足りなかったでしょうか」
「・・・危機感?」
「え?」
「あのね。そのお部屋って言うのは夫婦2人の寝室ってことではないかしら?」
「・・・へ?」
ぽっ
フィアの頬がぽっと桃色に染まる。
「まぁ、ほぼ内縁のような状態だったけれど、セシナくんもちゃんと契りを結ぶまでは待ってくれたのかしらね」
「・・・その、夫婦、のお部屋って何をするのですか!?母さま!!」
「一緒に並んで寝るんじゃない?」
「はぅっ!」
ぼっ
その母の言葉にフィアは頬を真っ赤に染めて、口元を両手で塞ぐ。
しかしそんなフィアには母助け舟を出す。
「あなたたち並んで一緒に座らないの?」
「すっ、座ります!」
「その背を倒して脚を伸ばしただけよ」
「あ、それなら大丈夫ですねっ!」
「・・・(本当に大丈夫かしら)」
エステル夫人が一抹の不安を覚えたのは、言うまでもない。




