もっふもふ
※お待たせしました(`・ω・´)ゞ
※もっふもふ回。もっふもふ回です。
「ここが、ウチの辺境伯領で魔物の育成を行っているところだよ」
「わぁ、近いのですね!」
―――本日、俺とフィアは魔物を飼育しているブリーダーたちがいる区画にやってきた。
「まぁ、屋敷にほど近い方が移動にも便利なんだ。馬車用の魔獣馬とかもいるし」
「馬車を曳いているお馬さんも元々は魔物なんですよね」
空飛ぶ馬車は馬車自体も魔道具だが、馬自身も飛翔することができる。背中に翼があるわけではなく、足元についている雲のような羽根で宙を駆けるのだ。あくまでも魔法の世界の話なので、物理的な面での理論で考えてはならない。ここ、大事。
「そうだな。魔物の中でも俺たち吸血鬼が飼育している魔物は特別に“魔獣”と呼ぶんだ」
「吸血鬼・・・人間の区域には魔獣はなかなかいませんね。それは人間には難しいからなのでしょうか」
「まぁ、不可能ではないんだろうけど。俺たちの血や魔力に従うようなものだから」
吸血鬼が飼う魔獣と言うのは、特別で。その昔人間たちもマネしようとしたのだが、魔物を従わせることはできなかった。魔獣は人間には懐かない。
「けど、俺たち吸血鬼の血を引くものが命じて躾すれば、人間にも従うようになる」
昔混血の子どもたちを攫って駒にしようとした人間たちも、魔獣の飼育に手を出そうとしたことがあるらしい。けれど、失敗に終わったそうだ。どうしてかはわからない。
「あのっ、ではセシナさまがなでなでしていい?と聞けば私もなでなでできるのでしょうか!?」
え?なでなでしたいの?
「例えば、どの子?」
「あのおっきいネコちゃん」
え?おっきいネコ?
『な‶―――』
ずもぉ―――。
うわっ、でかっ。確かここのマスコット魔獣だったか。突然変異ででっかくなった魔獣だった気がする。元々は普通のネコと同じサイズで、真っ白毛並みに丸っこいボディのネコである。
「あれをなでなでしたいのか?」
「はい、もこもこでかわいいです!」
ヤバい。フィアの目がめちゃくちゃキラキラしているっ!眩しいっ!吸血鬼は別に陽の光が苦手でも弱点でもないのだが。これには何故か抗えない。これも吸血鬼の血のせいなのか?(※多分違う)
「あの、この魔獣は触れるのか?」
案内人のブリーダーに声を掛ければ。
「えぇ、セシナさまなら“ぽち”も気を許すでしょう」
「“ぽち”なのか?」
「“ぽち”ですよ」
何だろう。ネコに“ぽち”?何だか違和感を感じるのは気のせいか。
どこか犬的な何かを感じるような。
「いや、触るのはフィアで」
「えっ、人間のフィアナさまですか。それは難しいかもしれませんね、訓練しないと」
マスコットキャラだが、目立つだけでぽちは気難しいキャラなのだろうか。一躍アイドルに慣れそうなほど愛らしい顔はしているのだが。ただ、でかいので見上げると迫力がすごいだけで。
「そうですか、仕方ないですよね」
フィアが残念そうな表情で頷く。
「まぁ、小さいのなら割と触れると思うし」
大きい魔獣もいれば、小さい魔獣もいる。
「えぇ、人懐っこい魔獣も多いので」
と、ブリーダーの青年。
「では、手をふるだけならいいでしょうか」
「構いませんよ」
「ありがとうございますっ!」
フィアの眩しい笑顔を受けた青年は。
「はぅあっ」
頬を赤らめて・・・
ギロッ
一応牽制しておかないと。
「すんません、セシナさまっ!!」
そして騎士の礼をし出す青年。まぁ、所属は騎士団の魔獣部隊の一員だからな。
「・・・?」
フィアが不思議そうに首を傾げていたので、ぽむぽむと頭を撫でてやる。安心したらしいフィアがぽちに向かって手を振ると。
「ぽちちゃん、こんにちは」
「な~~~っ♡」
何だ、あれ。何かしっぽふってないか?ネコなのに、犬みたいな反応をして頬を赤らめているんだが。だから、ぽちなのか!?犬っぽい反応をするからぽちなのか!!
これは、まさか。
まずは俺が近づく。
「ぽち、フィアに触らさせてくれるか?」
「な~っ!」
(もち、いいわんっ!)
マジで?ぽちのOK出たし。
「(因みに、噛んだりしたらただじゃおかないから)」
一応警告はしておこう。
「なななななっ!!!」
(もちっす、セシナさまぁっ!!)
―――よし。
「フィア、こっちへおいで」
「いいのですか?」
「あぁ、もちろん」
フィアがドキドキしながらこちらへ近づいて来て、俺の隣に並ぶ。
「ほら、撫でてみて」
「よいのですか?」
「ぽちもそう言っているから」
「・・・っ!嬉しいです、ぽちちゃん」
「な~~~っ♡」
何かちょっと・・・気に入らないな。
―――噛むなよ?
ゴゴゴゴゴ・・・
「ななっ!!」
(もちっすわん、ボス!!)
「では、ぽちちゃん。なでなでしますね」
そう言って、フィアはぽちのふかふかの首元に手を伸ばす。いや、首ないけど。思いっきりまるまるとしているから、首と胴体の分かれ目がわからんっ!!
「わぁ、ふわふわ~」
「な~~~っ♡」
喜んでやがるか。まぁ、フィアが撫でているのに喜ばないのもいけ好かないが、これはこれで・・・何だろう?
じ―――・・・
「な、ななな~っっ」
(ひえぇ―――)
ぽちと目一杯触れあった後は、鳥の魔獣のヒナに会いに行くことになった。
「いやぁ、フィアナさまはすごいですねー。あのぽちが一瞬ででろでろにっ!でもセシナさまに脅えていたような気も・・・」
「え?何か言った?」
がしっと青年の肩を掴む。
「い、いいえええぇぇぇ―――っっ!!!」
「あの、どこか具合でも・・・」
優しいフィアが震え上がった青年に声をかけるが。
「大丈夫だよ。これでも辺境伯一家の一員だから緊張しているんだろ。大丈夫大丈夫。ただの団長の弟だから」
「辺境伯一家の一員なだけで“ただの”お方ではないでしょ~がっ!!」
―――と、テンパる青年くんを引きずり、次の場所へ。
「わぁ、もこもこの小鳥ちゃんたちっ!」
小鳥と言っても、スズメくらいのサイズでは決してない。大人が抱っこしてちょうどいいくまちゃんのぬいぐるみくらいの大きさだ。そんなもっこもこな丸っこい鳥たちが、広めのパークの中であちこちおさんぽをしている時間のようだ。
「この子たちは人間のフィアナさまでも大丈夫でしょう。人間のご令嬢が嫁いだ吸血鬼のおうちでも水田で大活躍だそうですよ。吸血鬼がしっかり教えれば、特定の人間の言うことも聞きます」
「水田、ですか?」
「大きくなると、水田のお掃除をしてくれるので人気なんですよ」
「わぁ、賢い子たちなのですね!」
「えぇ、早速どうぞ」
青年の後に続いて俺たちも中へ入れば。
『ぴー』『ぴよぴよ』『ぴっぴっぴ~』
―――もっふり。
「わぁっ、セシナさま!みんなふわっふわでとってもかわいいですっ!」
いや、フィアがかわいい!何あれ!もっふもふ小鳥軍団にすかさず懐かれて小鳥塗れになってるんだけど!!
「わぁ、フィアナさますごいですね。あの子素質あるんじゃないですか?飼育されている魔獣とは言え人間であそこまで魔獣に懐かれるなんて聞いたことないんですけど」
「・・・そーか」
「いくらなんでもアレに嫉妬するのは大人げないかと」
―――ぐっさぁ。
「ほら、次行くぞ、次」
『ぴ―――っっ』
何か小鳥たちから抗議の声が上がったため、3分延長した。
「次は吸血鬼の眷属とも言われていて、昔から一緒に生活することの多い子たちですね」
「どんな子たちでしょうか」
「楽しみか?確かジル兄さんもこっちには出入りしてたっけ」
「えぇ、よく任務で一緒に行動してるんで」
キィっと青年がその区画の扉を開ければ。
『わふー』『わっふっ!』『ぅわっふっ!』
灰色、黒、白、銀色、ダークブラウンなどの様々な毛並みの魔狼たちがいた。見た目は獣の狼とあまり変わらないが、しっぽが2本あり結構でかい。あと魔力帯びてる。
「ん・・・わふわふ。いい。ぐっじょぶ。うへへ」
あぁ、てか、いたのかこのひと。
「ジル兄さん?」
「ん?セシナ。カモン」
ジル兄さんがそのもっふもふわふたんずの中にうもれていた。
「何、カモンって。全く。ジル兄さんもこっちに来てたのか」
「うん、セシナとフィアがデートにくると知って、ここで張っていた」
うん、今日は非番だと言っていたのにストーキングして来ないからおかしいと思ったら。
「あ、あの、セシナさまっ!」
ふぃ、フィアの声!?まずい、目を離したから!!
『わふーっ』
「わぁー、もっふもふです~」
もっふもふ魔狼たちにもふまれているフィアが幸せそうな表情で懐かれまくっていた。
「・・・」
「すごいな。あの子たちが一瞬で懐いたぞ」
やはりフィアにはその才能があるのか・・・?
「さすがに人間で吸血鬼の眷属に一発であそこまで懐かれるとは、ちょっと色々と調査してみます?」
と、青年。
「ほぅ?お前はウチのフィアを実験にでも使う気なのか?」
ずごごご・・・
「ひぃっ!違いますぅ―――っ!!!この通りっ!団長が騎士団内で頒布していたセシナさまのお写真を献上いたしますので!!」
頭を低く垂れて、写真を差し出してきた。
「そう。それなら今の発言は許す」
ルシウス兄さんめ。焼き増ししてばらまいていることは既に調査で掴んでいるんだぞ。これをちらつかせてその件を吐かせよう。
「・・・それ、俺も欲しい」
何故かずいいっとジル兄さんが間に入ってくる。
「いや、あんたもう十分すぎるほど盗撮してるだろ」
「うへへ」
「褒めてないからな」
そして目を離した隙に魔狼たちのもふみどころに混じってるし。
『わっふ~』
まぁ、フィアもわふわふ言って楽しんでいるみたいだし、また来てもいいかもしれないな。




