イリスとお花畑
※ふれあい合同演習編のイリス視点に入ります(/・ω・)/
※途中暴力的描写がありますが血は流れません
????『だって、プロだから!!』
イリス「このセリフの主は、読めば大体わかるわね」
―――思えば、そう言うこともあったっけ。今年のふれあい合同演習でも人質役を申し付けられた私は、出されたおつまみとお茶に手を付けながら静かにしていたのだが。
キーキー喚く声に思わずその声の主に目を向けた。
「ちょっと、アンタ静かにできないわけ?」
さすがの私も困惑するわよ。全くもう。
「何よっ!一人だけ自由の身でお菓子とお茶なんて、卑怯じゃない!」
いや、お菓子って言うかイカのくんさき何だけど。おつまみなんだけど。お茶も高級品じゃなくって普通の麦茶。普段辺境伯家で食べているものに比べたら質素なことこの上ない。お茶は不味いがまぁ、水分補給にこしたことはない。
前に意地を張って不味いお茶を飲まなかったら、脱水症状で人質の途中で医療班のテントに運び込まれたのよね。あれは恥ずかしかった。みんな戦闘を一時中断して担架で運ばれる私をガン見してたんだものっ!!
それ以来、水分はしっかりとるようになった。トイレも仮設とは言え衛生的だから問題ないし。
それに塩分もとれるし、くんさきは普通にうまい。
「私にも、私にも寄越しなさいよぉっ!!」
「嫌よ。何で私がアンタに?」
「私を誰だと思ってるの!?フローリア公爵令嬢のソフィアンナよ!?」
知ってるわよ、幼馴染みだもの。私よりも1歳年下。フィアナがウチのパーティーなどに参加しなくなってからは自然とコイツの遊びの相手をさせられることが多かった。
一番多かったのが、“ほしい”“ほしい”コールだった。私のアクセサリーが欲しい、ドレスがずるい、バッグが欲しいなど。あげなければ泣きだし私が悪者にされるし。
それに王都を訪れて、子供同士のお茶会に参加した時、あのバカ・・・じゃなかった。カイム王子殿下と一緒にいた時に、王子が渡せと強要してきてさすがに王子相手じゃかなわないからとアクセサリーを泣く泣く手渡した。
コイツのたちが悪いのは、親や大人がいないところで奪うのよ。大人がくれば王子や高貴なお家の令息がいることをいいことに泣いて大人を味方に付けるのよ。
お茶会帰りにお兄さまが迎えに来てくれて、私のお気に入りのアクセサリーを付けていないことに“どうしたの?”と声をかけてきたけれど、さすがに王子に言われてソフィにとられたとは言えなかった。
それ以来、あんまり人間側の社交には出てない。実家の主催パーティーには出席するけれど、それ以外は付き合いのあるフローリア公爵家だけね。まぁ、そこでソフィと顔を合わせるのは嫌だったけどフローリア公爵夫妻はお忙しい方だからあまりパーティーなどは主催しなかったのよね。むしろ呼ばれることの方が多い。それが唯一の救いでもあった。
けど、私は人間側の社交を放っぽっている間に、どうにも今までのツケが回ってきたみたいね。あんなに着飾ってきゃっきゃうふふと嘲笑うように微笑んでいたソフィは。
地べたに這いずってこちらを見上げている。更に片足の足首をを鎖で繋がれおり、それは部屋の隅の杭に繋がっている。それも貧相な汚れだらけのワンピースを着て、髪は傷んでぼさぼさ。社交界の妖精姫とか言われてた頃の面影は全くないわね。
いや、私的には妖精姫と言うよりも小賢しい泥棒姫だったけど。
「アンタだけずるい!アンタだけずるい!こんな片田舎の田舎娘のくせに!」
いや、アンタの領地すぐ隣でしょうが。国として重要な“境界”近くに領地を持つ辺境伯家と公爵家は、国としても重用される地位にある。そして、確かに畑や山野は多いものの王国内有数の農業地帯。魔物は出るが普段から鍛えているし、ローゼンクロス辺境伯家と交流も欠かしていないのでもしもの時は吸血鬼側の援助も受けられる。国境警備隊だって、吸血鬼の土地との境界があるおかげで他国を牽制できる。
国の重要基点だって、わかってるのかしら?
しかもベラお義姉さまに聞いた話では近々公爵家から除籍されて平民降下になるって話じゃなかったかしら。それでよくそんな物言いができるものね。そしてコイツがビービー五月蠅いものだから。
「おいっ!五月蠅いぞ!」
人質役を命じられて幾星霜。しっかりと人質役をこなすことで私の要求もちょっとは通るようになってきたこの頃。ここの人質担当は女性騎士たちが務めている。無論、彼女たちも吸血鬼である。
外には男性吸血鬼の騎士たちもいるし、今年のボスはルシウスさまらしい。
ドゴッ!
ゲシッ!
「ぎゃふっ、ふげぇっ」
鈍い音が響く。ソフィは犯人グループ役を務める女性騎士たちにぼっこぼこに蹴られていた。無論、血が出ない程度に。だから打撲痕ができたり、関節を外されるくらいのやつにされるが。
そう言えば昔、“ここに未婚の若い男のひと、いる!?”と、見張り役の騎士(※犯人グループ役)に聞いたら肩を脱臼させられて、泣いた。その時も戦闘中断の衆人環視の中担架で運ばれて医療班のテントで治療を受けたけど。あれ、絶対骨やってた。骨やってたと思うんだけど。
「い、いだいぃよぉ~っ!」
ソフィは急に幼子のように泣き出した。
「五月蠅いぞ!黙れ!」
「人間ごときがごちゃごちゃとうるせぇなぁっ!」
※女性騎士たちのセリフ
※敢えて荒々しい口調にしています
「やめてぇっ!私を誰だと思ってるのぉっ!?」
「あん?子どもを殴って叩いて蹴った最低な女だろぉがぁ?」
女性騎士A、キレイな顔して表情がパネェわ。
「それでなんだっけぇ?ちょぉだいちょぉだいって泣いて、ひとのもの散々盗んだんだろぉ~?」
と、女性騎士B。それは事実ね。てことは子どもに暴力を振るったってのも事実?泥棒だけじゃなくって虐待までしてたなんて最低ね。
それよか、婚約者を横恋慕するとかバカげてるし。吸血鬼の旦那さま募集中の私としては引くわぁ。まぁ、私自身、美人局に引っかかってその疑惑を持たれた過去はあるけれど。
「な、な、そんなことするはずないじゃないっ!」
「こうやって」
ゲシッ
「ぐはぁっ」
「ほぅ~ら」
がごっ
「げはっ」
騎士のお姉さま方すごい。嗚咽は漏らさせても血を吐かない程度にやってくれるのね。プロだわ。
「あと、何だっけ。宝飾品やドレス、それから婚約者も盗んだんだってねぇ」
「でもこんな貧相な服しかないみたい」
「そ、それは、盗られた、からっ!」
いや、それも盗ったものだろうに。
「代わりにこの髪をいただきましょぉ?」
女性騎士A、大鎌でソフィの髪をバッサリ切り落とす。
「イヤアアアァァァァァッッ!!!私の美しい髪があああぁぁぁ!!!」
そしてそのパッサパサの傷んだ髪を上から降りまけば、ソフィが絶叫した。どこが美しいのよ、その髪。
「そうねぇ、代わりにこの服をいただきましょぉかぁ?」
女性騎士B、無理矢理ソフィのスカートをビリビリ破り捨てる。大丈夫。パンツは見えてない。あれぞプロの技ね。
「やめて、やめてえええぇぇぇぇぇっっ!!!」
「ショタっ子泣かした罪は重ぇぞコラァッッ!!」
「団ちょ・・・違ったボスから徹底的にやっていいって言われてっからなぁっ!ひっひっひっ!」
・・・それ、何か別の次元の怨みが入っているんじゃないかしら?
セシナ(※注※主人公)「うぐ・・・っ、まさかイリスが数少ないツッコミ担当だったなんてっ!」
イリス「何で泣いてんのよ、アンタ」




