イリスと騎士
―――引き続き、人質役をこなす私・イリス。
さて、お昼ご飯はローゼンクロス辺境伯一家の騎士隊で食べられているご飯ね。
言うことを聞かないと碌なご飯が出ないけれど、いい子にしていればしっかりとしたご飯が出るのよね。最初の頃は暴れてばっかりだったから、カビの生えたパンをだされて空腹が酷く出泣く泣く食べたけれど、見事にお腹を壊して戦闘は一時中断、担架に乗せられ衆人環視の中医療班のテントに運ばれてからは、なるべく言うことを聞いて大人しくすることで食事グレードを上げてきたのよ。
騎士隊のご飯と言っても結構おいしい。吸血鬼側の騎士には女性も男性と同じくらい多くいるのもあるけれど。
専用プレートの上には、普通においしいロールパン2つとマカロニサラダ、ハンバーグ&パスタ、ブロッコリーサラダといり卵が載せられており、今回は何とカップにスープがいれられている。
あぁ、おいしい。このコンソメスープ。野菜やベーコンもちゃんと入っているわね。
「ちょっとぉっ!?どぉいうこと!?何で私のご飯がこれなのよ!?」
「いいからとっとと食え!騒ぐならメシ抜きだ!」
と、女性騎士A。
ソフィは暴れるため両手首を後ろで手錠によって拘束されており、両脚も鎖につながれているのでまさに芋虫状態だ。
そんな状況で、ソフィの前にはカッチカチのパンと、獣用の水飲み皿が置かれその中に水が注がれている。
因みに、カビの生えたパンは私がお腹を壊したおかげで使用禁止になったらしい。良かったわね、私のおかげで最低ランクの食事がカッチカチのパンよ。
「これでどうやって食べろって言うのよ!これを外しなさいよ!」
なおもソフィはがみがみと騒ぐ。
「おらぁっ!こうやって食うんだよっ!」
と、女性騎士Bに頭を押さえられて水飲みに顔を突っ込まされるソフィ。
「あぶぶぶっ、何すんのよっ!」
頭を押さえる手を外されたソフィはずぶりと顔を起こすが、その瞬間バシャンと水を掛けられる。
「きゃああぁぁぁっっ!」
「脱水症状になられちゃ困るからな!」
「おらっ!水だぁっ!!」
女性騎士たちがバケツでソフィに水を掛けていく。因みに最低ランクの飲み物があれ。私が脱水症状で運ばれたおかげで、適度な水分補給が義務化しているのだ。てか、あれで水分補給できるの?みんな、真似したらダメよ。普通にコップで飲みなさい。
「なんでぇ~、私にもイリスと同じの持って来なさいよぉ~っ!」
なら大人しくすればいいのに。
「ねぇ、ちょぉだいちょぉだい、あんたのちょぉだいちょぉだいちょぉだいちょぉだいよおおおぉぉぉぉっっ!!!」
ちょっ!?こっち見んなっつのっ!この泥棒お化けがっ!
「騒ぐからお前のメシは抜きだ!」
そう言って女性騎士Aはカッチカチのパンを没収していく。
「ちょっとぉっ!ごはん、お腹空いたぁ、あああああぁぁぁぁぁっっ!!!」
「うるせぇっ!」
ドゴッ
最後は女性騎士Bに仰向けにされ、腹を蹴られて気絶した。
―――数時間後、ソフィが目を覚ましまたビービー騒いでいると物々しい足音が近づいてくる。あぁ、そろそろね。私は午後のおやつ・さきいかを口に突っ込み、立ち上がった。
「お嬢、ご無事で」
「なによ、リオ。いっつも呼び捨てのくせに」
「うっせぇっ!こういう台本なんだよっ!」
と、早速食って掛かって来やがったリオが先輩騎士に小突かれる中、私は騎士たちと共に撤収に入る。
「ちょっとぉっ!?私は!?私を助けなさいよぉっ!あんたたち、私を助けに来たんでしょぉっ!?」
あ~もう、鬱陶しい。思わず振り向いたのと同時にリオが告げる。
「勘違いをするな。我々はブリックウォール辺境伯家の騎士。ここにおられるイリスお嬢さまをお助けに参ったまで」
「なら、私も助けなさい!私はフローリア公爵令嬢よ!?私を助けなきゃ、あんたたちの主人があんたたちを罰するわ!」
「バカバカしい」
そう、リオはきっぱりと吐き捨てた。
「あれ、何様なんだ?あれで公爵令嬢とか、笑える」
「言ってやんなよ。ま、どうせ除籍されるんだろ?」
「山に捨てられるとか聞いたけど」
「マジでェ?ウケる」
「は?何?除籍って何、捨てられるって何?」
ソフィは目を見開きながらこちらを見ている。やれやれ、何もわかっていないようね。
「行きましょう、お嬢。あまり聞いていると耳が腐ります」
「リオが騎士らしくて生意気」
「騎士ですよ」
ソフィが泣き喚く中、リオにエスコートされて騎士たちに囲まれながら、今年も安定の衆人環視の中生温かい拍手でみんなに迎えられる。
うぅっ!これが一番恥ずかしいのよぉっ!!
演習終了後のバーベキュー大会の準備が始まる中、リオが不意にそう告げてきた。
「お嬢、手を」
「何よ」
でも手は出してあげた。
するとリオがポケットから何かを出して私の掌に乗っけた。
「・・・これは」
それは白い翼をモチーフにした髪飾り。昔、ソフィによって無理矢理奪われたもの。
「これ、どうして?」
「ベラさまからです」
お義姉さまが、どうして?
「ベラさまの妹君のフィアさまが、あの女に奪われたものを選別している時に見覚えがあったのでとっておいてくださったそうで、ベラさまを通じて渡してくださったのですよ」
「え」
何よ、それ。私、めちゃくちゃバカにしたのに・・・ば、バカみたいじゃないっ!
「つ、つけて。髪に」
「・・・さすがにその年齢では」
「年齢の話じゃないわよっ!」
「はいはい」
リオはそう諦めたように溜息をつくと、私の髪にヘアアクセサリーを飾ってくれた。
そして。
「ご褒美のプリンちょうだい」
「え?もう食べるの?お嬢」
騎士にそう苦笑されながらもいつものこの演習の終わりに食べられるご褒美のプリンを受け取ると、ずかずかとある場所に向かって行った。
「ちょっと!食べなさいよ!フィアナ!」
いきなりのことにフィアナは驚いているようだったが、私からおずおずとプリンを受け取った。
「お前、それがひとに物をあげる態度かよ」
「うるさいわね、セシナは黙ってて!」
呆れたように言ってくるセシナをねめつけていれば。
「ありがとう、イリスさん」
フィアナが不意にお礼を言ってきたのだ。
「んもぅ・・・っ、バカっ」
そう言ってその場を後にする間際。
「ご安心ください。あれはお嬢が好意を持っている相手に発する言葉なのです」
「ちょっとリオ!余計なこと言ってないで早くこっち来~いっ!」
「はいはい」
「もぅっ、バカっ!」
「はいはい」
「リオのバカッ!!」
全くリオはっ!でも、差し出された肉の串はもらうっ!
うん、たまにはいいものね。外でこうしてみんなでわいわい食べるのも。
※これにてイリスちゃんツンデレ感謝祭終了でございますっ(''◇'')ゞ※
(いや、いつの間にそんな感謝祭開催してたんだ・・・)




