ふれあい合同演習
※みなさまへのお詫び※
ベラ「イリスちゃん。何と驚くべきことに、作者がイリスちゃんだと思って書いていたら間違って“エリス”ちゃんって書いていたそうなの」
イリス「げほぁっ」
ベラ「あらあら、イリスちゃんったらどうしたのかしら」
ルック「実は昔から“エリス”と間違われるのがトラウマなんだよ」
ベラ「あらまぁ」
すまぬ、イリス。<(_ _)>
みなさま本当にすみませんm(__)m
―――さて、今年もふれあい合同演習がやってきた。
フローリア公爵家のご家族はブリックウォール辺境伯家にお招きし、専用モニタールームでご覧いただくことにして。
「ベラ!やっと戻ってきてくれたんだね!ぼくは、ぼくはぁ~~~っ!」
「あらあら、相変わらずの甘えっ子ね。長男なのだからもう少ししっかりしなさいな」
何故かフィアの姉・ベラドンナ夫人に対し、その夫のブリックウォール辺境伯令息・ルック殿が号泣して抱き着いていた。
「この度は息子がご迷惑を。ごめんね、エステルちゃん」
「本当に済まなかったな、エルド」
「いいえ~、いつもルックくんにはとてもお世話になっているもの。いつもウチの娘をありがとう」
「済まない何てことはないよ。急遽見学させてもらうことになったのだから」
フローリア公爵夫妻とブリックウォール辺境伯夫妻の会話に若干噛み合わない部分があるのは気のせいだろうか。
そしてこの場にはもうひとり。
「あぁ、そしてあちらがローゼンクロス辺境伯だ」
そう、ブリックウォール辺境伯が示したのは、少し離れたところに立つ仮面の辺境伯マティ兄さんとルシウス兄さんだった。
「済まない。少し事情があって離れたところにいるのだが」
「いや、セシナくんから事情は聞いているから気にしないでくれ」
うん、フローリア公爵夫妻にも事前にマティ兄さんが女性アレルギーの旨は話してある。エステル夫人に会うのが今日初めてのため、万全を期して少し離れたところで一度会い、今後のお隣さん付き合いのために徐々に慣らしていくつもりだ。
因みにマティ兄さんにとって毒になるであろうソフィアンナは既に某所に“設置”済み。マティ兄さんは本部でブリックウォール辺境伯と共に指揮に当たるので直接彼女と会うこともない。もちろんもうひとりの人質役も待機済み。さて、ここからふれあい合同演習が始まるのだ。
「それじゃぁ、俺たちも行こうか」
「はい、セシナさま」
フィアの手を取ればフィアがコクリと頷く。
「フィア、気を付けるんだぞ」
「がんばってね」
夫妻の言葉にフィアも真剣な表情で頷いた。
「お姉さまは前線で指揮をとるから一緒にいてあげられなくてごめんね」
と、微笑むベラドンナ夫人。およそ戦闘向きな感じには見えないのだが、彼女は人質奪還の実働部隊として矢面に立つらしい。因みに夫は司令部。なんでも夫よりも彼女が最前線に立った方が味方の士気が上がるのだとかなんだとか。
まぁ、俺は今回後方担当なのでそっちに専念しよう。
フィアとともに医療班の元にやってきた俺は、早速現場を取り纏める女医長と合流した。彼女はブリックウォール辺境伯家の侍医件ヒーリング魔法使いで、彼女の他にもヒーリング魔法使いや後方支援担当がおり、俺たち吸血鬼組からも出している。なお、本番は血の匂いが充満するため基本は伴侶を持つ者が条件だ。俺はフィアと婚約し、吸血鬼にとっては婚約者であろうと家に入れば伴侶同然なので俺にも許可が出た。というかフィアのためにもぎ取った。
因みに主力全員こちらに来るわけにはいかないので、今回はゼン兄さんが領地でお留守番中である。
―――そしてふれあい合同演習というかわいらしい名前に似合わぬ合同演習が幕を開ければ、早速負傷者が医療班のテントにやってくる。
「序盤からやっちまったぁ~」
と言ってやった来たのはブリックウォール辺境伯家の騎士。脇腹には矢が刺さっているが無論本物ではない。例え衣類だろうと鎧だろうと何にでもくっつくゴムパッキンが矢の先端に付いているのだ。
「“軽”!早速回してちょうだい!」
女医長がそう叫ぶと、フィアが重症度“軽”の札を騎士に付ける。
「え、これ“軽”なの?」
「当たり前でしょ!吸血鬼との闘争でそれくらいは軽!かすり傷!」
※あくまでもこの世界と女医長の基準なので深く考えないでねっ☆
「姐さん先生厳しすぎるわぁっ!俺このお嬢ちゃんみたいな優しそうな子の方がいいなぁ~」
そして、騎士に付き添って治療師の元へ行こうとすれば、そう騎士がニカっと笑ってフィアに顔を近づけ・・・
「オイ、コラ。より実践向けの怪我にしてやろうか?」
俺が騎士の方をぐぐっと吸血鬼パワーで鷲掴みにする。
「ぎえええぇぇぇっっ!!?出来心ですぅっ!実は嫁さんいますぅっ!!」
「じゃぁ、後で奥さんに連絡するからな」
「ひええぇぇぇっ!!お許しをぉっ!ローゼンクロス辺境伯一家5人兄弟の最後の良心・セシナさまに目を付けられたらやっていけませんよぉ~~~っ!!!」
いや、何だ最後の良心って。兄どもが変態なのは重々承知だけども。人間の土地でどんな噂が広まってんだ。オイ。
「ほらほら、これからどんどん患者が来るんだから!実践訓練だと思って真剣にやること!」
と、治療師のひとりがやってくる。まぁ、さすがにふざけ過ぎたか。肩への圧はふざけずに真剣に込めたけど。
「ひいいぃぃっ!?カミさぁんっ!?」
え?マジで?奥さん医療班だったのか。よくそんな場でナンパしたな、コイツ。
「うおらぁっ!治療してやるからとっとと来いやぁっ!ベラさまの妹ちゃんナンパするなんてえぇ度胸だなナァッ!?」
「どぎゃ―――っすっ!!」
恐怖の悲鳴と共に、俺たち医療班の仕事が幕を開けた。
―――
「毒裂傷!“重”!」
女医長の声と共に、俺と男性スタッフが担架に患者を乗せフィアが札を付ける。そして治療師の元へと担架で運んでいく。
その他にも・・・
「包帯追加!」
「こっちお水が足りないわ!」
治療師たちの声に、フィアは物資もせっせと運んでいく。
無論、担ぎ込まれてくる患者はほとんどが実際の大怪我ではなく、本来負うべきはずの症状が分かるものを付けてくる。
あるものは毒マークが付いたシール、あるものは背中に赤いインクで魔動弾を撃たれた痕を付けてきて、あるものは全身インク塗れ・・・
「あ‶?お前ナメてんの?本気でやってないなら鍛え直すけど?」
「ひいいぃぃっ!ごめんなさいセシナさまああぁぁぁっっ!!!」
序盤は人間側の負傷者が多かったが、徐々にローゼンクロス辺境伯家の吸血鬼側の負傷者も増えてくる。敵役のルシウス兄さんもさすがは騎士団長。訓練とは言え外ではかなりやり合っていそうだ。
そしてたまに擦り傷作った本物の患者も来て、治療師が魔法で治療していく。
医療班の仕事はどんどん増えていく。まるで大規模魔物討伐並みになっていく。
俺たち医療班の仕事が終了し、みんなで外に終了を伝えに入ったころには無事救出された人質役のイリスが膨れながらブリックウォール辺境伯の騎士たちに連れられており、その横でベラドンナ夫人が微笑んでいるほか、他のみなも無事に陣を解体して集合していた。
俺たち医療班の仕事の終わりと同時に、ブリックウォール辺境伯とマティ兄さん、そしてフローリア公爵が演習の終了を告げる。さて、この後は本物の親睦会なのだが。
「あの、セシナさま」
「どうした?フィア。どこか具合でも・・・」
「い、いいえ!その、訓練とは言えとても大変でしたがまだまだ元気です!けど・・・」
一体どうしたんだ?何か心配事でも・・・。
「イリスさんの姿があるのに、ソフィの姿が見えなくて」
「あぁ、そうか・・・」
みんなもういない存在として特に気にしていない中、フィアだけはそのことを気にしてくれたらしい。あの女がそのありがたみを理解できていれば、今回のようなことにはならなかっただろうに。
よく視える吸血鬼の夜目に映った視線の端で、こっそりベラドンナ夫人が親睦会会場を抜け出すのを見やりながら・・・
「元々は謹慎を言い渡されていた身だ。恐らく公爵が終了後速やかに別邸へ運んだんだろう」
「そう・・・そうですよね。私の考えすぎでした」
―――それはあながち間違いではないかもしれないが。フィアに伝える必要はないだろう。優しいフィアはきっと、あんな女の末路でさえ悲しむのだろうから。
「これから演習後の恒例バーベキューをするんだ。だから俺たちもお肉がなくならないうちに行こうか」
「バーベキューですか?聞いたことはありますが、初めてです!」
そりゃぁ、貴族令嬢からしたら縁の遠いものかもしれない。騎士所帯に属していたらまた違ったかもしれないが。そう言ったご令嬢も少ないからなぁ。
「おいしいものがたくさんあるぞ」
「楽しみです!」
にこりと微笑むフィアの手をとり、早速俺とフィアもマティ兄さんや公爵たちが待つバーベキュー用の席に混ざりに行ったのだった。




