今年もふれあい合同演習の季節がやってきた
※久々の主人公回想やぁ~っ!パチパチパチ。
「ふれあい合同演習・・・ですか?」
引き続き滞在中のフローリア公爵家にて、お茶の時間をもうけてもらった俺はフィアに例の“ふれあい合同演習”についての話を切り出していた。
「そうそう。ブリックウォール辺境伯家とローゼンクロス辺境伯家で毎年合同で行っているんだ。互いの親交を深め、協力し合う精神を磨き、あとは諸外国への牽制だな」
「確か、大おじさまが以前吸血鬼の辺境伯家の方と合同演習をされていると話されていたのですが、きっとそれですね」
「まぁ、他にもいろいろやってるけど、一番大きな催しがそれだから。ブリックウォール辺境伯が言ったのもそれだろう。今年はフローリア公爵たちもこちらに滞在しているから、3家でやらないかと打診を受けたんだよな」
「まぁ、3家で!?」
そうなればますます境界と国境を守る3家の絆が深まる。フィアにバカ王子を押し付けようとした国王陛下夫妻にも下手に手を出せば許さないと言う牽制にもなる。
「そう。だけど急な話だからな。公爵一家は今回は視察で同行することになった」
「そうなのですね」
「それでフィアは・・・俺と一緒に参加してみるか?」
「セシナさまと、ですか?」
「うん。俺は今年、後方支援と医療班担当だから、フィアが経験するにもいい内容だと思うから」
「はいっ!えぇと、ヒーリング魔法などは使えませんが・・・」
「大丈夫。それ以外にもやれることはたくさんある。演習では滅多に起こりえないけれど、もし俺の魔力が足りなくなったらフィアの血を分けてくれ」
「はいっ!」
フィアは気合いを入れたように頷く。血を飲まれることには特に抵抗がないのだろうか。うん、それは俺にだけだよな。そう、思っておくことにしようか。
「それとなんだが、フローリア公爵家からもひとり補充要員を出してもらうことになったんだ」
「補充要員、ですか?」
「そ。その“役回り”なら急遽参加でも問題ないから」
「どのような役回りなのでしょう?誰が参加するのですか?」
「あぁ、公爵夫妻とフィアの兄姉の推薦で、フローリア公爵の3女が務めることになった」
「まぁ、ソフィが?重要な役回りだったら務められるかどうかも分からないけれど・・・」
やはり、フィアは優しいな。弟を人質にされて物を際限なく奪われたのに。
「大丈夫だ。彼女は今回の演習が終われば正式にフローリア公爵家から除籍される」
「えぇ。お父さまもそのつもりで変更はないようです」
フィアは伏し目がちに視線をティーカップに移す。
「だから、手土産代わりに危機管理を学ばせる目的でもいい役回りだったんだ」
「そうなのですね。あの子はこれから平民として生きていかねばなりませんから、少しでも本人のためになることを修めさせてもらえるのはありがたいことです」
あぁ、再び俺の顔を見上げたフィアが今日も尊い。この子は天使か何かなんだろうか。まぁ、フィアが優しい分俺がしっかりすればいいだけの話なのだが。
「それで、役回りとは?」
「あぁ、“人質役”な」
「へ?」
フィアはきょとんとしていた。まぁ、普通はそうだろう。
「あくまでも、役だよ。役。だから危険はないだろう。周りを固める敵役は、ウチのルシウス兄さん率いる部隊だから」
「ルシウスお兄さまが自らなんて、大おじさまたち大丈夫かしら」
まぁ、敵は吸血鬼側の境界を任される辺境伯家の騎士団長だからな。
「ま、だからこそいい演習になるとみんな期待している。それにルシウス兄さん率いる“敵”に対するのはブリックウォール辺境伯率いる精鋭とウチのジル兄さん率いる精鋭のタッグだから。両陣営の協力関係を築きながら存分に“ふれあう”予定だ」
「何だかとても大掛かりになりそうです」
「ははは、確かにな」
本当はルシウス兄さんとジル兄さんの役回りは逆だったのだが。これまでのフローリア公爵家での滞在の報告をローゼンクロス辺境伯家へルシウス兄さん宛てに送ったら、“敵役は是非お兄さんが!”“ぶっちゃけ、人質もう一人追加しても良くない?”と返事が来たので急遽変更となったのであった。




