ベラドンナと同志
―――そして遂に、遂に私、ベラドンナの1番目の妹・フィアが里帰りすることが決まったの!婚約者だと言うセシナさまにエスコートされて幸せそうな微笑みを浮かべるフィア。
私に飛びついて来てくれたフィア。あぁ、フィア成分を摂取できるのは久々ね。それに何だかセシナさまともとても仲睦まじそうじゃない。
ソフィが奪ったフィアの持ち物をお兄さまやお父さまたちと整理している間、私はイオちゃんと戯れていたわ。そしてその整理が終わったと言うことで、みんなでサロンでお茶をすることになったの。
そんな折、私はお兄さまに呼ばれたわ。そしてソフィがイオちゃんにしていたことを聞かされたの。
「あらまぁ、そんなことが」
確かに、私にも思い当たることがあったわ。イオちゃんがソフィの話をしないのも、ソフィがいなくても何も問わないのも。それが原因なのかしら。
「もう父上はソフィが何と言おうと修験院に放り込む気らしいな。実際、その話を父上と母上から告げられてもソフィは何で何でと暴れるばかり。自分が本気でルシウス殿に嫁ぐことを信じて疑わないんだ」
「修験院のことは、元近衛騎士団長のお父さまらしいわ。でも・・・」
「何か心配事が?」
「確かにあそこは厳しいところで有名だけれど、男性が多いでしょ?あの子また勘違いを起こすんじゃないかしら。逆ハー的な」
「えぇっ!?さすがに苦行を積んでるひとたちだよ?俺も体験と銘打って放り込まれて、あそこに放り込まれたくなければ怠けるなって言われたけど。あそこ本当に厳しいよ?」
そう言えば、お兄さまもかつてあそこで体験修業したことあったっけ。お父さまも以前苦行を積んだことがあるそうな。尤もお父さまは問題なんて起こしておらず己を高めるために足を踏み入れたのだそうだけど。因みに近衛騎士隊の最終入団テストはあそこで行われるそうよ。みんなあそこで一生を終えたくないからこそ清く正しく頑張るのだそうだけど。
「本気でお父さまに考えさせてみてもいいかも。吸血鬼側の修道院」
「あのさ、ベラ」
「ん?何かしらお兄さま」
「その、ベラの言う吸血鬼側の修道院ってどう言うところなんだ?俺たち人間の土地にある修道院とは違うん、だよな?周りに一緒に住むのは女性か?」
「えぇ。女性同士よ」
「それなら、ベラが言う逆ハーの心配もないけれど」
「そうねぇ」
妖艶に微笑む私にお兄さまがビクッと怯んだのだけど。
「早めにお兄さまへの縁談も薦めるわね」
「あ、う、うん?」
―――さて、私もちょっとばかり考えなくてはならないことも増えたわけで。夕飯までの間、イオちゃんは久々にお兄さまと兄弟水入らずだし。お父さまとお母さまは代官のジェイドとお仕事のお話をしているわ。
私は何をしようかしら。ソフィの様子を見に行く?う~ん。せっかくフィア成分を得られたのに吸い取られそうだからやめようかしら。
そうだわっ!せっかくだからフィアがセシナさまとどんな感じでイチャイチャしているのかをチェックしなくてはね。姉として妹をあらゆる脅威から守ることは大切だもの。まぁ、あの狂血王子ではあるまいし、長老たちもこれで安心だと言っていたから心配はしていないのだけど。
ふたりは書庫にいたわ。ふふっ、フィアらしいわね。書庫に用意しているソファに腰掛けて本を広げてお話をしているみたいね。
『これは私が小さな頃から好きな絵本なんです』
ぐはっ。フィアかかわいいっ!まさかの思いでの絵本チョイスですって!?
『へぇ、人間の土地の絵本は絵がかわいらしいな』
『吸血鬼の土地は違うのですか?』
『ん~、昔ゼン兄さんと一緒に読んだのは人体の不思議や、魔物の生態って言う絵本だったかな』
それは単なる人体図鑑や魔物図鑑じゃないのかしら?それ、絶対解剖厨のゼンさまの趣味よね。
『私も、魔物の本は読んだことがあります。恐い魔物もいますが、ふわふわでかわいい子もいて』
『あぁ、吸血鬼の土地にもそう言うのはいるよ。ただ、飼いならされていない野性の魔物は気が荒いから近づかない方がいい。今度ブリーダーの元の見に行こうか』
『はい、セシナさま!』
んなっ!華麗にデートの約束まで取り付けるとは。しかも内向的で恥ずかしがり屋なフィアが、喜びを表情に出しながら快諾しているだなんてっ!やっぱり長老たちの見立ては最高だったわっ!ぐっと拳を握り絞めていれば。不意に後ろに何か気配を感じた。
「だぁれ?」
「・・・何のつもりだ」
彼は。
そう、セシナさまとフィアにこちらまで付いて来た。
「ジルさま、でしたわね」
「すまないが、名前は忘れた」
素直ね、このひと。
「ベラドンナです。どうぞ“ベラ”と」
「・・・ここで何をしている」
「あなたこそ、ここで何をしているの?」
そこまで問い、私たちは互いの目をじっと見つめ合った。そして気が付いた時には・・・
ガシッ
私たちはお互いに手を握り合っていた。
「今後は情報の共有を求めるわ」
「その見返りは」
「私の妹日誌のフィアの段を定期的に模写して送りましょう。それに載っているフィアの喜ぶもろもろのことをそれとなくセシナさまに流せばフィアも喜ぶことこの上なし!」
「それはいい。取引成立だ」
「えぇ」
何故か他人と言う気がしないこの方。
種類は違えど何故だか同志、そんな気がした。
そんな私たちふたりに書庫の中でのふたりの会話が聞こえてきた。
『あの、何だか外にお姉さまの長い淡い金色の髪が見えた気がしたのですが』
『あぁ、俺もジル兄さんが外にいる気がしてならない』
『大丈夫ですよ。取るに足らない妄想に関わるお話をされているだけなので』
ここで聞こえてきた第3者の声は、フィアのメイドだと言うエリンちゃんね。
『妄想、ですか?』
『馬が合ったんだろ。兄と姉同士が仲良くしてくれるのはいいことだしな』
『それもそうですね、セシナさま』
嬉しそうに微笑むフィアの頭を優しく撫でるセシナさま。
ぐはっ。
「ウチのフィアがかわいいわ」
「ウチのセシナたん尊い」
私たちは種の垣根を超え、お互いに頷き合ったのであった。
※これにてベラお姉さま回想は一旦終了となります※
※楽しくてつい長くなってしまいました※
※次回はセシナの語りに戻ります※




