ベラドンナの決意
―――さて、引き続き私・ベラドンナ・ブリックウォールは止める騎士やメイドたちの制止を振り切り、愛馬に跨り颯爽と駆けだしたの。行き先はお隣さんであるローゼンクロス辺境伯領よ。
でも、行き先は辺境伯邸ではないの。
私は辺境伯邸の側にある市民会館を訪れたわ。そして。
「みなさん、こんにちは」
にこっと挨拶すると。
「おぉっ!ベラちゃんじゃないか」
「こっち座んなよ」
「また一緒に碁でもしようや」
と、おじいちゃんおばあちゃんになっても相変わらずキレイな吸血鬼の方々と合流したのである。
「どうしたんだい?急に。今日はゲートボール大会の日じゃないぞ?」
「なにさ、いいじゃない。ベラちゃんみたいなかわいい美人さんが来てくれたらこっちも楽しいし」
「実はみなさんに、ご相談があって参りました」
「どうしたんだい?」
「急に改まってしまって」
「ベラちゃんなら気軽に“ばぁば”って呼んでくれていいのにねぇ」
「そうそう」
みなさんの温かいお言葉に感謝ね。でも本題はここからよ。
「ウチのかわいい妹のフィアが、あの狂血王子の婚約者になるかもしれないの」
私はカッと目を見開いた。
「何じゃと!?わしらのかわいいベラちゃんの妹がっ!」
「何と言うっ!」
「しかしのぅ?あの殿下が気に入ってしまったらわしらにも手がだせんわい」
「では、どうすれば・・・っ!」
「まぁまぁ、大丈夫大丈夫。わしらはローゼンクロス辺境伯領に住んでいるからな」
「あの殿下の弱点も知ってるのよ~」
「もしそうなったら、脅していい条件握っちゃいましょっか」
「まぁ、みなさんとっても頼りがいがあるわ!」
さすが先人たちの知恵はすごいわねっ!
「では、任せたわ」
『おぉっ!』
私とおじいちゃんおばあちゃんたちは人間と吸血鬼という種族の壁を乗り越えて、手を取り合ったのであった。
―――私に4回目の衝撃が来たのである。
「ふぃ、フィアが狂血王子に婚約前に拒否されて、結局は元通りジュリアンヌ王女が嫁ぐことになって、更にはフィアはバカ王子の婚約者に逆戻りぃっ!?」
ことは急を要するのか、今回は母が魔法で早文を送ってきたのだ。こうしてはいられない!私は止める夫の手を振り切り、まだトラウマで寝込んでいるイリスちゃんの必死の叫びを無視して馬に飛び乗り、そして颯爽とローゼンクロス辺境伯領の市民会館へ向かったわ。
そこで私を待っていたのは。
「いや、わかりましたから。ウチの誰かが婚約を引き受けるってことでいいですよね。長老方」
「そうじゃそうじゃ!じゃないとばあさんを呼ぶわい!」
「ウチの女神のベラちゃんの妹を悲しませるなんて、あの狂血王子ーっ!」
「長さんや、あんまり興奮すると持病の癪がっ!」
「あの狂血王子に嫁がなくて良くなったとはいえ」
「ベラちゃんの妹が昔わしらのかわいい孫特性を持つセシナさまをバカにした人間の第2王子に嫁ぐなんて世も末じゃわい」
「えぇっ!?ウチのセシナたんをバカにしたって何の話ぃ~~~っ!?」
「なんじゃお前さん、忘れたとは言わさんぞ」
「ほら、昔お隣さんの人間の辺境伯家のパーティーで、セシナさまが愚鈍な人間の第2王子にバカにされたと言う話は有名じゃ。何たってだの狂血王子が一緒に目撃者になったのじゃからな」
「あぁ、あの事件か。確かそれが原因で、吸血鬼の王家から人間の王家が苦言を呈されたとか何とかいう事件ね。お兄ちゃんとしても是非是非仕返しをしてやりたかったけど、叔父上がどうしてもと言いうから、腹いせは全部叔父上にお任せしたんだっけな」
「セシナさまはそのバカ王子の婚約者になってしまったご令嬢を守っただけじゃというのにのぅ?」
「そうそう、わしもそう聞いたわい」
「あぁ、確かそんな話もあったけどねぇ」
「ちょっとぉっ!」
私はその話を後ろで聞いていて、おじいちゃんたちの前に立つ青年の肩を思いっきり掴んだ。
「そのご令嬢ってウチのフィアちゃんじゃないのぉ~~~っ!!!」
そしてその青年は私の顔を見てぎょっとした表情を浮かべた。
「べ、・・・ぁんな、ふじ・・・ん」
ドサッ
「あら、どうしたのかしら。あの、みなさん?」
突然肌にぶつぶつが現れ倒れてしまったプラチナブロンドに赤い瞳の青年に私はきょとんとしながらおじいちゃんたちを見上げた。
どうやら私のことを知っていらっしゃる方のようだけど。
「あぁ、辺境伯は女性アレルギーなんじゃ」
「ベラちゃん、向こうの辺境伯領で会ったことなかったかい?」
「え?辺境伯?ひょっとしてマティアス・ローゼンクロス辺境伯閣下かしら?」
「そうじゃぞ?」
「油断するとすぐこれじゃからなぁ」
「初対面ではないようじゃが、心の準備をしていないとたまにこうなるんじゃ」
「2次元妹成分足りとらんのじゃないかの?」
「そうかもしれんの」
「あら、どうしましょ。いつもは仮面だったから気が付かなかったわ。青年会の方じゃなかったのね」
「まぁまぁ、医者のゼンさまをお呼びしようかの。魔動通信機があるからの」
「ベラちゃんはここに座ってていいぞ」
「まぁ、ではお言葉に甘えて」
そこでぶっ倒れている辺境伯さまに何だか申し訳ない気がしながらも、私はおじいちゃんたちにもらったお茶とお煎餅をご馳走になることにしたのであった。




