フローリア公爵領へ
※誤字修正しました<(_ _)>※
―――ローゼンクロス辺境伯領からフローリア公爵領までは山道を超えればあっという間である。人間側からアクセスする分には山道を避けて、隣のブリックウォール辺境伯領を迂回してくるのが一番だ。しかしながら吸血鬼側は空飛ぶ馬車を使えるので、今回もそれで向かうことになった。まぁ、空を飛んで行けなくても、吸血鬼の魔法と体力なら山越えは簡単だそうだけど。
あちらへは俺とフィア、そしてエリンとジル兄さんが同行している。報告によればあの問題のある三女は別邸にて隔離されているので大丈夫だと思うが。フィアの表情には若干不安の色も見える。
「大丈夫だ、フィア。何があっても俺が一緒だから」
「はい、セシナさま」
「また、印、つけていいか」
「・・・っ、は、はい」
少し照れたように顔を赤くするフィアの首筋に、それぞれ口づけをする。そして・・・
「セシナ、お兄ちゃんもセシナに印を。いや、むしろ吸血痕を付けるべきだと思う」
ジル兄さんめ。そうきたか。
「もうそんなに柔じゃないんだから大丈夫だよ」
「お兄ちゃん印付けたい」
いや、いらないけど。
「あの、お腹が空いているのですか?あ、でも吸血の目的と言うのは魔力などの補充でしたね」
と、フィア。
「あぁ、そうだ。しかしお兄ちゃんは今、弟エナジーが足りなくて空腹なのだ」
「どうしましょう、セシナさま!」
うごぁっ!ジル兄さんめ。それはわざとなのか?それとも天然なのか?フィアが本気にしたぁっ!
「取り敢えずお菓子でも食べるか」
「そうですよ、ジルさま。わがまま言ってないでお菓子食べてください、お菓子」
エリンも加勢してくれる。
「でも」
「いきなりお空で吸血シーンだなんて、フィアさまの教育に悪いです。そこら辺はセシナさまと二人っきりの時にいただいてもらいましょう」
「それも、そうか!!」
何だかしっくり来たらしいジル兄さんを尻目に、お菓子のマフィンをはむり。
しかし何だかフィアの様子がおかしい?
「フィア、どうした?」
「ふたりっきりの時に、やるの、ですね!」
「いや、すぐじゃないから。リラックスしていてくれ。せっかく久々に家族に会うのだろう?」
「はっ!そうでした。すぐじゃ、ないのですね。す~は~、す~は~」
「大丈夫か、妹よ」
「元々はジルさまのせいですよ」
「そうなのか」
「そうですよ」
「うん」
ジル兄さん、エリンにコテンパンじゃないか。まぁ、ジル兄さんの天然っぷりはいつも通りなようだ。
そしてフローリア公爵領に到着し馬車を着地させて暫く陸路を進めば、フローリア公爵領主邸が見えてくる。
「わぁっ!」
フィアも久々の領主邸に目を輝かせているようだ。領主邸前では公爵と夫人がお出迎えをしてくれた。
「お父さま、お母さま!」
フィアはいつもは大人しそうだが、しかし今回ばかりは馬車を降りるなり両親に駆け寄って3人で抱擁しあっていた。
「おふたりとも、ご無事で!お兄さまたちは?」
「大丈夫だ、フィア」
「フィアこそ、無事でよかったわ」
「私は、私はセシナさまとご一緒でしたもの」
そう言ってフィアがこちらを振り向けば。
「セシナ殿。此度はフィアのこと、ありがとうございました」
「私からも感謝申し上げます」
「いや、いいですよ。と言うか俺は単なる辺境伯の弟ですから、気軽に接していただいても」
「そんな。あなたも辺境伯家の方々も娘の恩人ですから。感謝してもしきれません」
公爵としては娘が人間の王家の第2王子に嫁がなくて良くなったことをとても感謝してくれているようだ。俺もその点については、フィアが辛い思いをしなくて良かったとほっとしている。公爵の判断には感謝してもしきれない。
例え長老たちが騒いで吸血鬼の王である叔父が話を持ち掛けても、肝心の公爵がフィアを大切に想い、助けたいと思ってくれなければ難しかった。恐らく俺たち辺境伯一家のところに話が来ることもなかっただろう。
「兄の辺境伯にも公爵からの言葉は伝えておきますよ」
「えぇ、ありがとうございます」
公爵がもう一度騎士の礼をとってくれる。そして同行したジル兄さんとエリンを紹介すれば、快く歓迎してくれた。
早速出はあるが、俺たちは公爵邸に招かれたのであった。
公爵邸では、三女を除くフィアの兄姉弟が揃っていた。真っ先に彼らに飛びついたフィアとの再会を喜びつつも、王都の屋敷で出会った長兄のトールさんが残りの妹弟を俺たちに紹介してくれた。
「まず、こちらは長女のベラドンナです」
淡い金色のストレートロングヘアーにエメラルドグリーンの儚げな瞳を持つ美女が、優雅にカテーシーを決めてくれる。
「ベラドンナはブリックウォール辺境伯家の長男に嫁いでおりますが、今回妹に会うために帰省してくれました。帰省と言っても隣なのですぐですが」
「よろしくお願いいたします。また、妹のことを受け入れてくださってありがとうございます」
とても柔和な雰囲気の優しそうな女性だ。フィアも敬愛する視線を送っているし。
「そしてこちらが次男のイオです」
次にぺこりと礼をしてくれたのは、左右のひと房ずつを少し長めに伸ばしたプラチナブロンドにブルーサファイアの瞳を持つかわいらしい顔立ちの少年だ。やば。完全にルシウス兄さんのストライクゾーンじゃねぇか。連れてこなくて良かった。因みに今日は長袖のシャツに長ズボンだ。残念だったなルシウス兄さん。
「イオは産まれつき体が弱く、普段からこちらの空気のキレイな領内で生活しております。王都ではご挨拶できず申し訳ない」
「いえ、お構いなく」
そして俺からも同行者のジル兄さんとエリンを紹介し、一旦は宿泊する客室へと案内してもらった。フィアは元々ある部屋を使うそうだ。フィアのことはエリンに任せ、俺とジル兄さんは客室に向かう。
「今日は添い寝だな」
「いや、ベッドふたつあるし、ふたり部屋だろ」
「添い寝はダメか?」
「いらない」
「お兄ちゃん寂しい」
「抱き枕で我慢して」
と、ダークブラウンの毛並みのわふたん抱き枕をジル兄さんに押し付ければ。
「うん、すやぁ」
ぼふんとベッドに横向きに寝転び、早速寝息をたてだした。
「いや、まだ午前中なんだけど」
※続きは明日更新予定です(`・ω・´)ゞ※




