突然の誘い
さて、先日のパーティーから暫くして辺境伯一家にとある手紙が届いた。そのためフィアを俺の書斎に招き、ふたりでソファーに腰掛けた。
「これを」
俺がその手紙をフィアに差し出すと、フィアは驚きつつも封を開けて、手紙の内容に目を通す。
真剣に読みふけっているフィアをまじまじと観察しつつ、やがて手紙から顔をあげたフィアはちょっと照れているようにはにかみながら俺を見る。
「あの、お父さまから、です。無事家族で領地に本格的に移転したそうで。私の私物が残っていたようなので確認に来てほしい、と」
「そうか、フローリア公爵からか」
「でも、あの部屋には私の私物はないはずなのに・・・」
フィアがそう言うのも無理はない。フローリア公爵の言うフィアの私物とは、あの残念妹がフィアから無理矢理くすねた代物だ。まさかそれのことだとは思っていないフィアは首を傾げている。
しかし、手紙の封蝋は明らかにフローリア公爵領に咲く領花を象った正式なものである。
筆跡的にもフィアが疑問を持たないと言うことは、フローリア公爵自身の筆跡で間違いないのだろう。
「会いに行くか?」
「良いのですか?」
フィアは驚いたように目を見開いた。
「もちろんだ。フィアの実家なんだから。それに吸血鬼の王である叔父も気にかけている領地であり、ウチの隣の領地でもある。今までは隣の辺境伯家との交流が多かったけれど、公爵が正式に領地に常駐するならば関係を持っておくに越したことはない。俺も一緒に行くから」
「セシナさま!う、嬉しぃです」
俺が一緒だと告げれば、彼女はどこかほっとしたように微笑んだ。
「で、ですが、」
「何か心配事が?」
「あの、セシナさまもご存じと思われますが、その、生家の三女のことで」
あぁ、あの残念令嬢だ。
「心配ない。俺はフィアの味方だし、今回はジル兄さんとエリンに一緒に来てもらおうと思う。それなら、万が一俺がフィアの側を離れることになったとしてもフィアに何かあってもすぐに対処できるだろうし。まぁ、滅多なことじゃ離れる気はないけど」
「えっ」
ん?何か変なことを言っただろうか。フィアが硬直しているように見える。
頬にそっと手を伸ばせば。
「あのっ!その・・・。一緒、ですよ・・・?」
「あぁ、もちろんだ」
そう俺が微笑めば、フィアも満面の笑みを返してくれる。そんな、時だった。
「セシナ。フィアちゃんの実家に行くんだって?ならお兄さんが是非!」
何処で聞きつけたのか、何故か書斎の両開きの扉をカッコつけてガバッと両手で開いて決めポーズをキメてくるルシウス兄さん。
「いや、ジル兄さんと行くから」
「いや、お兄さんが行く!例えシーズンを過ぎたとしても、そこにかわいいショタっ子いる限り、お兄さんは行く!いや、行かねばならない!この騎士の魂に賭けても!」
しょうもない変態性癖を騎士の魂に賭けんじゃねぇよ。この兄は。因みに今は秋の初めの季節。先日のパーティーでは第3王子のレオがハーパンタイツを決めていたし、そう言うコーデもありだがハーパンニーハイあるいはハイソのウキウキハーパンショタっ子最盛シーズンは既に終了しているのである。
いや、そんなシーズンは今どうでもいいんだけど。
「ルシウス兄さんは騎士団の遠征があるだろ。騎士団長が行かんでどうする」
この秋の初めのシーズンには毎年恒例の騎士団の遠征があるのだ。全く、こんな変態でもルシウス兄さんは我が辺境伯家の騎士団長を務めているのだ。・・・嘆かわしいことに。
「愛する弟の最愛の婚約者を護衛するのは当然だよ!」
キラッとカッコつけているルシウス兄さんだが。
「いや、ついさっき明らかにショタっ子目当てだってこと自分でぶっちゃけただろうが。素直に演習行け。副団長にチクるからな」
そう告げれば、ルシウス兄さんの笑みがピクリと引きつる。
「そ、それだけはっ」
「捕まえた」
ルシウス兄さんの首根っこを扉の影から伸びた逞しい腕が、イケてるバリトンボイスの主が捕えた。
「ひぇっ」
「つべこべ言っていないで来いっ!」
本当にどっちが団長なのか本当にわからないやり取りだが、あれで結構息があっているのだ。さぁ、ルシウス兄さんが副団長に連れていかれたところで一息ついた。
「あの、セシナさま。先ほどの方は?」
「あぁ、ウチの騎士団の副団長だよ。迫力はすごくて人見知りだけどいいひとだから安心してくれ」
「は、はいっ!もちろんです」
フィアは再び優しく微笑む。
「それではジルお兄さまもよろしくお願いします」
フィアがぱっと見何もないところに向かってお辞儀をしたのを見て、俺はハッとなる。実は何の変哲もないすぐそこの壁には、気配を消して周囲の景色と同化したジル兄さんが人知れず俺のストーキングをしていたのだが。何故、フィアがそれを見抜いたんだ!?そのことに滅多に表情を変えないジル兄さんも若干、3ミリくらい表情を動かして不思議そうにフィアを見やる。
そして。
「あぁ、任せろ!」
本格的に姿を現して力強く頷いたのである。
何だかカッコイイセリフにも聞こえなくもないジル兄さんだが、あくまでもただのストーキング癖のある変態である。
※続きは明日更新予定です(`・ω・´)ゞ※




